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第二章 仲間
第五百九十三話 その姿、堕天使なりて
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「これは驚いた。青年。君はただ者ではなかったようだ。
英雄とは程遠い姿だがね。魔の深淵に辿りつきしものだったとは。このオズワルとも
まともに戦える力がありそうだ」
「……余暇に付き合う気は無い。手前を葬りその楔を断ち切ってやろう。
己の醜い姿をあるべき姿へ」
「この体は主に賜った物。醜いとは心外だ」
「もう、人としての形を成していないのに気づかぬか」
「それは……青年。君も同じであろう。君の場合は随分と美丈夫に見えるがね」
意識は刈り取られてはいない。
強烈な高揚感、嫌悪感と破壊衝動はある。そして……闇の中でもはっきりと見える。
先ほどまで見えない中で話していたオズワルの姿は魑魅魍魎と呼ぶにふさわしい
おぞましい形だった。
魂のみを封じ込めた悍ましい生物……足は無くいくつもの管がつき、魔を吸い取られている。
腕のようなものが全部で十本。
それぞれに多様な武器を握りしめ、四つある目でこちらを凝視していた。
視線にも何かしらの効果があるのだとは思う。
現在は攻撃態勢ではない。さすがに元英雄と言われる武人。
卑怯な真似などしないのだろう。
「その形態、反動が酷かろう。人寄りの魔は無理やり魔を行使すれば、人の部分へ
多大なダメージを負う。青年は根本が人と変わらぬ。全身に裂傷をきたし、下手をすれば
死ぬぞ」
「ああ。時間が無さそうでね。もう……いいか」
「その姿。まるで堕天使だが、真化をしたということは妖魔なのだろう。
一度見た事があるが、ただの真化ではないな……ふむ、覚悟して相手をしよう」
体を駆け巡る魔の力、今ならはっきりとわかる。
背中には、魔族らしい浅黒い翼まで生えていた。
「魔術招来、エビルフォアー、エビルフォクス、エビルフォルフ。ゆけ」
「ウォオオーーーン!」
巨大な黒色に燃える炎、狐、狼を瞬時に招来。
さらにそれらへ分厚い黒鎧を纏わせて突撃させる。
十本の腕を持つオズワルの腕三本が動き始め、三匹に対応を始めた。
それらは分厚い鎧を盾にしつつ、黒炎を腕へと浴びせると、勢い良いく燃え上がる。
燃えつつ再生を繰り返す攻防が展開され始めた。
「魔術招来、煉獄トウマ」
「グルォオオオオオオオオオオオオ!」
超巨大な目から黒炎を灯す漆黒竜が現れる。
その上へ乗り、両手に持つ剣をオズワルへ構える。
「それほどの招来術を行使すると、かなりの魔を消費するだろう。
いいのかな、そこまでいきなり使用してしまっても」
「何を言っている? 先のそいつらはともかく、俺は仲間を呼び出しただけだ。
こいつは単に俺の力を少しわけてやったにすぎん」
「……おかしいな。妖魔というのはモンスターを取り込み、その力を行使する
魔族と思っていたが……青年は特別なようだ。改めて君の評価を上方修正しよう」
「煉獄トウマよ。お前の力を行使せよ。俺は上空から攻撃する」
「グルォオオオオオオオ!」
煉獄トウマは目から螺旋を巻く黒炎を二つ放つと、オズワルの二本の腕を貫通する。
さらに前足のかぎ爪で、迫り来る無数の管を引きちぎっていった。
「妖赤海星の煉獄殺戮群」
辺りに無数の黒い星型が落ちていく。こちらも以前より遥かに強力となった
食らいつくすものたち。
オズワルの腕に薙ぎ払われながらも、食らいついていくその様は不気味と言えよう。
嚙みちぎった部分には黒炎が舞い上がり、そちらでも再生と消滅が繰り返される。
「今度はこちらからいくぞ、青年。覚悟してうけるがいい。大破滅!」
英雄とは程遠い姿だがね。魔の深淵に辿りつきしものだったとは。このオズワルとも
まともに戦える力がありそうだ」
「……余暇に付き合う気は無い。手前を葬りその楔を断ち切ってやろう。
己の醜い姿をあるべき姿へ」
「この体は主に賜った物。醜いとは心外だ」
「もう、人としての形を成していないのに気づかぬか」
「それは……青年。君も同じであろう。君の場合は随分と美丈夫に見えるがね」
意識は刈り取られてはいない。
強烈な高揚感、嫌悪感と破壊衝動はある。そして……闇の中でもはっきりと見える。
先ほどまで見えない中で話していたオズワルの姿は魑魅魍魎と呼ぶにふさわしい
おぞましい形だった。
魂のみを封じ込めた悍ましい生物……足は無くいくつもの管がつき、魔を吸い取られている。
腕のようなものが全部で十本。
それぞれに多様な武器を握りしめ、四つある目でこちらを凝視していた。
視線にも何かしらの効果があるのだとは思う。
現在は攻撃態勢ではない。さすがに元英雄と言われる武人。
卑怯な真似などしないのだろう。
「その形態、反動が酷かろう。人寄りの魔は無理やり魔を行使すれば、人の部分へ
多大なダメージを負う。青年は根本が人と変わらぬ。全身に裂傷をきたし、下手をすれば
死ぬぞ」
「ああ。時間が無さそうでね。もう……いいか」
「その姿。まるで堕天使だが、真化をしたということは妖魔なのだろう。
一度見た事があるが、ただの真化ではないな……ふむ、覚悟して相手をしよう」
体を駆け巡る魔の力、今ならはっきりとわかる。
背中には、魔族らしい浅黒い翼まで生えていた。
「魔術招来、エビルフォアー、エビルフォクス、エビルフォルフ。ゆけ」
「ウォオオーーーン!」
巨大な黒色に燃える炎、狐、狼を瞬時に招来。
さらにそれらへ分厚い黒鎧を纏わせて突撃させる。
十本の腕を持つオズワルの腕三本が動き始め、三匹に対応を始めた。
それらは分厚い鎧を盾にしつつ、黒炎を腕へと浴びせると、勢い良いく燃え上がる。
燃えつつ再生を繰り返す攻防が展開され始めた。
「魔術招来、煉獄トウマ」
「グルォオオオオオオオオオオオオ!」
超巨大な目から黒炎を灯す漆黒竜が現れる。
その上へ乗り、両手に持つ剣をオズワルへ構える。
「それほどの招来術を行使すると、かなりの魔を消費するだろう。
いいのかな、そこまでいきなり使用してしまっても」
「何を言っている? 先のそいつらはともかく、俺は仲間を呼び出しただけだ。
こいつは単に俺の力を少しわけてやったにすぎん」
「……おかしいな。妖魔というのはモンスターを取り込み、その力を行使する
魔族と思っていたが……青年は特別なようだ。改めて君の評価を上方修正しよう」
「煉獄トウマよ。お前の力を行使せよ。俺は上空から攻撃する」
「グルォオオオオオオオ!」
煉獄トウマは目から螺旋を巻く黒炎を二つ放つと、オズワルの二本の腕を貫通する。
さらに前足のかぎ爪で、迫り来る無数の管を引きちぎっていった。
「妖赤海星の煉獄殺戮群」
辺りに無数の黒い星型が落ちていく。こちらも以前より遥かに強力となった
食らいつくすものたち。
オズワルの腕に薙ぎ払われながらも、食らいついていくその様は不気味と言えよう。
嚙みちぎった部分には黒炎が舞い上がり、そちらでも再生と消滅が繰り返される。
「今度はこちらからいくぞ、青年。覚悟してうけるがいい。大破滅!」
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