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第二章 仲間

第五百九十二話 慣れすぎた闇の視界の中で

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 暗闇の中に溶け込むように身を預けると、先からはわずかな物音が聞こえる。
 一応炎を出してみたりもしたが、なんら効果は無かった。
 そんな闇の中でも、ひどく冷静な自分がいる。

 転生した直後の事を思い出していた。
 絶望に染まっていた日々。
 一日がとても長かった。
 ここより静寂ではない場所だったかな。
 そして、自分以外の誰かがいた。
 会いたいと思う感情があるわけじゃない。
 酷い扱いをされた事を恨んでもいない。

 ただ思う事は……そんな俺でもその場で殺さず、捨てていってくれた事。

 その行為に――――感謝している。

 ティソーナとコラーダを頼りに進んでいくことにした。
 剣で空を切ると空間の広さがなんとなくわかる。


 そして……切り裂いた空間の奥に、何かがいるのは間違いない。

「誰か……いるよな。俺の予想が正しければ、オズワル伯爵……だろう」
「……正確に言えばその魂。オズワルであるわしは死んだ」
「魂だけ……器は人じゃないんだな」
「そうだ。ロキ様に召し抱えられし器。神兵となり、ここでの
魔力供給を任じられた」
「城の動きを止めるには、あんたを倒すしかないんだよな」
「倒す? 息の根を止めるの間違いではないか。闇の中でも平然としている青年よ。
少し話す余裕くらいはありそうだ」
「……あんた、この国の英雄だったんだろう?」
「英雄か……その記憶は残されている。青年よ。もし君が英雄と言われたら、どう思うかな?」
「俺自身を英雄なんて思わないし、そう言われてもそうではないとはっきり否定するかな」
「なれならば君は英雄としての器がある。英雄と呼ばれ、それを甘んじて受ける者を
英雄とは呼ばぬ。それに私の場合、英雄とは違う。行き過ぎた愛国主義者であり
他国から見れば悪魔のような存在だろう。英雄オズワル。そんな響きはむなしいだけだよ」
「この国にとってはあんたは英雄。それだけでいいんじゃないか」
「どうかな。私が死んでほっとしている者も多かっただろう。今となっては、あまり関係ないがね。
さて、門答はもういいだろう青年。せめて名を名乗って欲しいものだな。私はこれから君を殺すかも
しれない。名もなき英雄の素質がある者を葬っても、むなしいだけだろう?」
「英雄……いや、ただのオズワルさん。俺の名前はベルアーリ。またの名をツイン、シー。
あんたを倒して俺はあんたの愛するこの国を守る。だがそれは英雄になりたいからじゃない。
みんなを救いたい。ただそれだけだ。一つだけ俺からも質問をしていいかな。答えられたらでいい。
闇のオーブはあんたが持っているのか?」
「ふむ。難しい質問だな。この部屋そのもの……と言えば正しいかな。
さて……左塔ではためらっていたようだが、ここでの戦闘において君は力を制御する必要はないぞ。
しかし皮肉なものだ。愛国主義者の私自身が、我が愛する国を滅ぼそうとしている。
しかし、すべては我が主のために……」
「いいや、あんたの主のためにじゃない。俺の主のためにだ! 封剣! 剣戒!」

 力を貸せ! お前の力が必要だ! 魔なんていくらでも覗いてやるよ! だから力を貸せ! 

 ……いやだね。俺は眠いんだ。さっき力を少し使ったからな。それよりそこの奴が言ってる通り
【お前の力】を試してみろよ。ここは通常の領域とは異なる。お前の力を行使しても平気だろ、きっとよ。

「考えてる余裕はない! 神魔解放! ……一番深いところまで覗いてやる! 妖真化!」

 全ては我が主のために……老師に禁じられた、一番深い魔を覗き込んだ。
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