上 下
654 / 1,085
第二章 仲間

第五百八十二話 揺らめく武人の魂

しおりを挟む
 リトラベイ、ターレキフが俺の前へ出てくる。圧倒的な威圧感に気おされつつも、ゆっくりと
様子を伺っていると……リトラベイとは違い、ターレキフは一気に距離を詰めてきた。

 横に大きく跳躍して距離を取るが、そのまましつこく追って来る。

「変幻ルーニー……直線的な動きだが、速度はそれほどでもない」
「……笑止」

 再び直線的にこちらへ迫るターレキフ。追い打ちの思い切りのよさはベニー並みかそれ以上だ。
 だが、カウンターを当てやすい! 

「赤閃!」
「……笑止と言った」

 短槍で赤閃を簡単に弾かれる。威力こそないが、速度は相当なはずだ。見切れるような距離でもない。
 しかも先ほどから後方のビーが射撃を繰り返し行っているのを、全て回避している。
 リトラベイにけん制されて、ファニーとサニー、レッジにレッツェルも動けないでいた。
 
「く……術詠唱する暇がない。仕方ない……封剣! 剣戒!」
「……貴様には過ぎたる刀よ」

 一気に近づいて、短槍の連撃を放ってくる。二刀で防ぎつつ、隙を伺うが、まるで見受けられない。
 さらに前進する形で押し込んでくる相手に、たまらずバックステップを踏んだ。

「槍術、破軍」

 バックステップ狩り! 一直線に貫く槍が俺に迫る! まずった。ここで使うべきなのか!? 

「弟子はそう簡単にやらせはせんぞ!」
「老師!?」
「ほう。少しは遊べそうな相手が出てきたな……」
「あれは、魔王種ですか。ターレキフ。私に譲りなさい」
「……俺の獲物だ」
「あなたはそちらの坊っちゃんと遊んでいるじゃありませんか」
「ちっ……」

 その会話の隙をつき、ファニーは赤竜へ再び変化。サニーは俺の背後から支援する形をとる。
 開幕は俺がやられたに等しい。
 ここからは、容赦しない! 

「ごめんねツイン。あいつ、とんでもない化け物だわ」
「サニー。イーニーとドーニーへ警戒に回ってもらうよう伝えてくれ。援軍が来ないとも限らない。
こっちは平気だ。もう遅れは取らない」
「尻を撫でろ? わかったわ!」
「やってる場合か! レッジとレッツェルはビーについてくれ。ここからの攻撃は範囲がでかい。
老師と俺だけの方がいい!」

 全員下がらせると、老師とリトラベイ、俺とターレキフが一対一で戦闘状態へ入る。
 
 二剣とルーニーを肩に乗せる俺に対し、相手は短槍と黒の軽装でこちらを睨んでいる。
 一体何者なんだ。ただの槍使いじゃない。相当に腕の立つ槍使いだ。

「主の命、なかなか骨が折れる。笹を手向けてやる事叶わぬが、見事屈服させてみせようぞ」
「……笹だと? この世界にそんなもの!」
「笹の才蔵、参る」
「っ!」

 再び直進してくるターレキフ。先ほどと違いこちらは万全な準備をしてある。

「そこ、滑るぜ」
「なにっ!? くっ……」

 一直線に突撃するターレキフは、足元のわずかな氷に気づかず踏みつける。バランスを崩したのも
極わずか。だが俺の仲間がそれを見逃すはずもない。
 ビーの射撃が肩に深々と命中した。
 俺はビーが外すはずもない事を信じて飛び出していた。

「今を切り裂く執行の剣 エヘクシオン!」

 左右の神話級アーティファクトが、クロスの二連撃を行い、その後横切りに
強烈な二本の斬撃を刻み込む。
 未完成の技だが、十分なダメージを与える事ができた。

「ぐう……油断……した」
「油断じゃない。あんたはビーの射撃を甘く見た。相手じゃないと思い俺に
集中しすぎた結果だ」
「……力を隠したまま、これほどやるとはな」
「そりゃどうも。上空のあいつが恐ろしくてね。まだあんたに使いたくないんだよ」

 ゆっくりと立ち上がったターレキフ。深いダメージを与えたが、まだまだ
繊維は残ったままだ。
 それどころか……。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...