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第二章 仲間

第五百七十六話 王都の移動準備

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 騒がしい三十一領区を抜けるのに、丸一日以上を要した。
 現在は検問を抜ける手前。こちらは相当数のトループが見張りをしている。
 犯人を逃がさないためだろうが、英雄の一人を暗殺した人物を、ただのトループたちが
どうにか出来るとは思えない。
 それも理解しているのか、全員顔色が悪い。

「確かにコーネリウス様、そしてバンドール伯爵の赤いコインに相違ない。
それに連絡を受けていた通りのサーカス団であることも確認できた。
積み荷を確認したら通っていい。ただし王宮までは必ず案内人の指示に従ってもらう。
馬車は必要な積み荷を積んだもののみにしてもらう。いいな」
「それで問題ない」

 積み荷の確認が済むと、後がつかえているのか直ぐに進むように言われる。
 無理もない。一つ一つ積み荷を確認しての移動なら、時間がかかりすぎる。
 身分証というものが発行されていればそれらを頼っての移動許可になるのだろうが、ここでは
それがコインなのだろうか。

 王都部分に入ると、雰囲気ががらっと変わる。
 今までが人の住まう領区と考えるなら、ここは人ならざるものが住んでいるのかと
思わせるほど、そこら中の建物が異常な雰囲気だ。
 
 それは一目見てわかる。どれも輝きが違うからだ。
 建物全てが輝いており、金属か何かで出来ていると思われる。

「凄いな。王都まで来るのは俺も初めてだ」
「自分もであります! 凄いであります!」
「……ブネ。どう思う?」
「間違いなく地上のものではない。それと強い魔力が施されているのだろう。
建造物自体は相当昔のものだ」
「ここは領域が張られてやがるな。絶対神にも見えない領域だぜ」
「領域が張られている? 俺たちの領域のようなものか?」
「そのようなものだ。そういった領域は無数にある。神々もそれは容認しているところだ。
神々同士はあまり干渉しあわない」
「あんたら、本当に神の遣いってやつなんだな……シーから聞いたけど
実際に見るのは初めてだ。魔王は見たことがあるんだが……」
「魔王!? まさかこの国にもいるのか? ビー」
「いいや。俺が見たのは任務中の話だ。化け物……なんて生易しい言葉じゃ
語れないほどの強さだったな」

 シフティス大陸に来る前、老師から魔王については聞いた。
 魔の力を極限にまで高め、他の魔族に認められた上、更に他の魔族より力を与えられし者。
 それ即ち魔王であると。
 十分な資質と鍛錬が必要で、誰しもが魔王になれるというわけではないらしい。

「シッダルト侯爵が亡くなったのは魔王、あるいは神の仕業だと?」
「それはわからない。王女がそもそもそのどちらかに成り代わられているという可能性だってあるだろう?」
「そうだな。十分に警戒しなければ」
「おーい、停泊所に着いたじゃんよ。これからどうするんだ?」

 ジェイクが俺に向かって大きく手を振るう。ついつい下にいるみなと話し込んでいた。
 あたりはチリ一つない煌びやかな馬車停泊所で、いくつかの馬車が停泊している。
 どの馬車も貴族ご用達のものであり、御者がいる。

 ついに王都まで来た。サーカス団として招集されているが、間違いなく穏便には
いかないだろう。
 案内人が来るまで、急ぎやらなければいけない事がある。

「さて、ここで二手に別れる。コーネリウスは王女を奪還しに三十領区へ。俺の仲間も数名つける。
サーカスの段取りはエーもわからないだろうから、エーもそちらに行ってもらおう。
何が起こるかわからない。密偵も必要だろう。エプタ、頼めるか?」
「けっ。誰がてめぇの頼みなんか聞くかよ。俺は薬の出どころを調べにいく。そっちに興味はねえな」
「……そうか。それならジェイク、お願いできるか?」
「俺っちはそもそも王女を助けたくてここまできたんだ。コーネリウス様の方へ行かせてもらうじゃんよ」
「我々はブシアノフ男爵が気がかりだ。既に王城へつれてこられているはず。すまないが、サーカス団活動後、レッツェルと二人で行動していいか?」
「ああ。もちろんだ。レッジ」
「なぁ、シー。誰がどこへ行くか整理を頼む。人数が多いだろう?」
「それじゃ……」


 サーカス団として王城へ向かう者は、ビー、シー、イーニー、ドーニー、ファニー、サニー、ブネ、老師、レッジ、レッツェル、シュイオン先生、スピアー。
 三十領区を目指し、幽閉されている王女を探すのは、コーネリウス、エー、アネさん、レニー、ジェイク。
 薬物の創作などを行うのはエプタ。
 先生とスピアー、ブネには、サーカス団活動中馬車の中にいてもらう予定だ。
 何かあれば治療もできるし、そのまま逃げてもらう事も出来るだろう。
 これで下町のサーカス活動時と、メンバーはジェイク以外変わっていない。
 うまくやれることを祈ろう。
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