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第二章 仲間
第五百七十五話 三十一領区 慌ただしい領内
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二十三領区を旅立った俺たちは、三十一領区への検問前に来ていた。
こちらは当然直ぐに通る事ができ、三十一領区へ入る。
ここは侯爵領区であり、二十三領区と比べると、造りは質素だが建物はどれも
頑丈そうな造りとなっている。
領区自体は広大であり、王城への道は遠い。
「なあ。何か騒がしくないか?」
「そうだな、何かあったんだろうか……」
馬車で走っていると、トループらしきものたちがあちこちで右往左往している
のが目に入る。
どうもただ事ではないようだ。しかし二十三領区側の検問では特に何も言われる事はなかった。
何か起こったばかりかもしれない。
「ジェイク。一度馬車を端に寄せて止めよう。どうも様子がおかしい」
「わかったじゃんよ。俺っちも情報を集めてくるじゃん」
「頼む。こっちの情報担当は気難しくてな」
「おい。俺は別に気難しくねーぞ! 行ってくりゃいいんだろ!」
馬車を飛び出したエプタは、荒々しくジェイクの後を追う。
人間嫌いのあいつがジェイクと一緒に行動するとは……。
エプタが飛び出したので、俺の馬車に乗っているのは現在エー、ビー、ブネ、シュイオン先生、スピアーだ。
ファニー、サニー、アネさん、レニー、イーニー、ドーニー、メナスは封印中。
手前の馬車にレッジとレッツェルと老師、馬車を引くのはジェイク。
後方の馬車にコーネリウス、イライザ、ゴードンが乗車している。
「ふむ。やはりエプタは変わったな。良い方向に」
「さっきのやつ、大分荒い態度だが、あれで密偵が務まるのか?」
「ああ。相当な実力者だ。俺も勝てるかどうかわからない」
「そんなに強いでありますか!? 見かけによらないものでありますね」
「貴様らは知らぬ方がよい。ツインよ、エーナを領域に置いてきたが、こちらへ呼んでも
構わないか?」
「それは構わないけど、どうするつもりなんだ?」
「他にも危険な薬物が持ち込まれている可能性がある。それらの出所を探らせる」
「わかった……そちらは任せるよ。……あれ? もう戻って来たな」
情報収集に向かったはずのエプタとジェイクは直ぐに引き返してきた。
そんなに直ぐわかるような事態だったのだろうか。
「大変じゃんよ! シッダルト侯爵が暗殺されたらしいじゃん!」
「凄い騒ぎになっている。さっさと奥に進まねえとやべえぞ」
「侯爵が暗殺……? ここでも何か起こっているのか」
コーネリウスが真っ青な顔をしてこちらの馬車へ乗り込んできた。
それもそうか。自分の上位階級にあたる貴族が暗殺されたと聞けば無理もないだろう。
「信じられない。無の太刀と呼ばれたシッダルト侯爵が暗殺なんて」
「そんなに凄い人物だったのか?」
「ああ。英雄の一人だ。オズワル伯爵と並ぶ、国を支えた重鎮。
イライザとゴードンを父の許へ走らせた。すまないが私もこちらの馬車を使うぞ」
「わかった。俺は上部の見張り台に移動する」
上部の見張り台に上ると、ジェイクにハンドサインで進むよう合図する。
道中幾度も通行を止められるが、コーネリウスの姿と赤いコインの両方を見せると
すんなり通してもらえた。
「これ以上ゴタゴタに巻き込まれるわけにはいかないが、こんな中、本当にサーカス団を
迎え入れて王女の祝いをやるつもりなのか……」
「隠し通すつもりだろう。私ならそうする」
「貴族なら、そうなるか……」
そう考えつつ、三十一領区の先、王城を目指す俺たち。
日をまたがないとつかない距離だ。結局マーサル隊長の任務には間に合わなかったな……。
こちらは当然直ぐに通る事ができ、三十一領区へ入る。
ここは侯爵領区であり、二十三領区と比べると、造りは質素だが建物はどれも
頑丈そうな造りとなっている。
領区自体は広大であり、王城への道は遠い。
「なあ。何か騒がしくないか?」
「そうだな、何かあったんだろうか……」
馬車で走っていると、トループらしきものたちがあちこちで右往左往している
のが目に入る。
どうもただ事ではないようだ。しかし二十三領区側の検問では特に何も言われる事はなかった。
何か起こったばかりかもしれない。
「ジェイク。一度馬車を端に寄せて止めよう。どうも様子がおかしい」
「わかったじゃんよ。俺っちも情報を集めてくるじゃん」
「頼む。こっちの情報担当は気難しくてな」
「おい。俺は別に気難しくねーぞ! 行ってくりゃいいんだろ!」
馬車を飛び出したエプタは、荒々しくジェイクの後を追う。
人間嫌いのあいつがジェイクと一緒に行動するとは……。
エプタが飛び出したので、俺の馬車に乗っているのは現在エー、ビー、ブネ、シュイオン先生、スピアーだ。
ファニー、サニー、アネさん、レニー、イーニー、ドーニー、メナスは封印中。
手前の馬車にレッジとレッツェルと老師、馬車を引くのはジェイク。
後方の馬車にコーネリウス、イライザ、ゴードンが乗車している。
「ふむ。やはりエプタは変わったな。良い方向に」
「さっきのやつ、大分荒い態度だが、あれで密偵が務まるのか?」
「ああ。相当な実力者だ。俺も勝てるかどうかわからない」
「そんなに強いでありますか!? 見かけによらないものでありますね」
「貴様らは知らぬ方がよい。ツインよ、エーナを領域に置いてきたが、こちらへ呼んでも
構わないか?」
「それは構わないけど、どうするつもりなんだ?」
「他にも危険な薬物が持ち込まれている可能性がある。それらの出所を探らせる」
「わかった……そちらは任せるよ。……あれ? もう戻って来たな」
情報収集に向かったはずのエプタとジェイクは直ぐに引き返してきた。
そんなに直ぐわかるような事態だったのだろうか。
「大変じゃんよ! シッダルト侯爵が暗殺されたらしいじゃん!」
「凄い騒ぎになっている。さっさと奥に進まねえとやべえぞ」
「侯爵が暗殺……? ここでも何か起こっているのか」
コーネリウスが真っ青な顔をしてこちらの馬車へ乗り込んできた。
それもそうか。自分の上位階級にあたる貴族が暗殺されたと聞けば無理もないだろう。
「信じられない。無の太刀と呼ばれたシッダルト侯爵が暗殺なんて」
「そんなに凄い人物だったのか?」
「ああ。英雄の一人だ。オズワル伯爵と並ぶ、国を支えた重鎮。
イライザとゴードンを父の許へ走らせた。すまないが私もこちらの馬車を使うぞ」
「わかった。俺は上部の見張り台に移動する」
上部の見張り台に上ると、ジェイクにハンドサインで進むよう合図する。
道中幾度も通行を止められるが、コーネリウスの姿と赤いコインの両方を見せると
すんなり通してもらえた。
「これ以上ゴタゴタに巻き込まれるわけにはいかないが、こんな中、本当にサーカス団を
迎え入れて王女の祝いをやるつもりなのか……」
「隠し通すつもりだろう。私ならそうする」
「貴族なら、そうなるか……」
そう考えつつ、三十一領区の先、王城を目指す俺たち。
日をまたがないとつかない距離だ。結局マーサル隊長の任務には間に合わなかったな……。
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