647 / 1,085
第二章 仲間
第五百七十五話 三十一領区 慌ただしい領内
しおりを挟む
二十三領区を旅立った俺たちは、三十一領区への検問前に来ていた。
こちらは当然直ぐに通る事ができ、三十一領区へ入る。
ここは侯爵領区であり、二十三領区と比べると、造りは質素だが建物はどれも
頑丈そうな造りとなっている。
領区自体は広大であり、王城への道は遠い。
「なあ。何か騒がしくないか?」
「そうだな、何かあったんだろうか……」
馬車で走っていると、トループらしきものたちがあちこちで右往左往している
のが目に入る。
どうもただ事ではないようだ。しかし二十三領区側の検問では特に何も言われる事はなかった。
何か起こったばかりかもしれない。
「ジェイク。一度馬車を端に寄せて止めよう。どうも様子がおかしい」
「わかったじゃんよ。俺っちも情報を集めてくるじゃん」
「頼む。こっちの情報担当は気難しくてな」
「おい。俺は別に気難しくねーぞ! 行ってくりゃいいんだろ!」
馬車を飛び出したエプタは、荒々しくジェイクの後を追う。
人間嫌いのあいつがジェイクと一緒に行動するとは……。
エプタが飛び出したので、俺の馬車に乗っているのは現在エー、ビー、ブネ、シュイオン先生、スピアーだ。
ファニー、サニー、アネさん、レニー、イーニー、ドーニー、メナスは封印中。
手前の馬車にレッジとレッツェルと老師、馬車を引くのはジェイク。
後方の馬車にコーネリウス、イライザ、ゴードンが乗車している。
「ふむ。やはりエプタは変わったな。良い方向に」
「さっきのやつ、大分荒い態度だが、あれで密偵が務まるのか?」
「ああ。相当な実力者だ。俺も勝てるかどうかわからない」
「そんなに強いでありますか!? 見かけによらないものでありますね」
「貴様らは知らぬ方がよい。ツインよ、エーナを領域に置いてきたが、こちらへ呼んでも
構わないか?」
「それは構わないけど、どうするつもりなんだ?」
「他にも危険な薬物が持ち込まれている可能性がある。それらの出所を探らせる」
「わかった……そちらは任せるよ。……あれ? もう戻って来たな」
情報収集に向かったはずのエプタとジェイクは直ぐに引き返してきた。
そんなに直ぐわかるような事態だったのだろうか。
「大変じゃんよ! シッダルト侯爵が暗殺されたらしいじゃん!」
「凄い騒ぎになっている。さっさと奥に進まねえとやべえぞ」
「侯爵が暗殺……? ここでも何か起こっているのか」
コーネリウスが真っ青な顔をしてこちらの馬車へ乗り込んできた。
それもそうか。自分の上位階級にあたる貴族が暗殺されたと聞けば無理もないだろう。
「信じられない。無の太刀と呼ばれたシッダルト侯爵が暗殺なんて」
「そんなに凄い人物だったのか?」
「ああ。英雄の一人だ。オズワル伯爵と並ぶ、国を支えた重鎮。
イライザとゴードンを父の許へ走らせた。すまないが私もこちらの馬車を使うぞ」
「わかった。俺は上部の見張り台に移動する」
上部の見張り台に上ると、ジェイクにハンドサインで進むよう合図する。
道中幾度も通行を止められるが、コーネリウスの姿と赤いコインの両方を見せると
すんなり通してもらえた。
「これ以上ゴタゴタに巻き込まれるわけにはいかないが、こんな中、本当にサーカス団を
迎え入れて王女の祝いをやるつもりなのか……」
「隠し通すつもりだろう。私ならそうする」
「貴族なら、そうなるか……」
そう考えつつ、三十一領区の先、王城を目指す俺たち。
日をまたがないとつかない距離だ。結局マーサル隊長の任務には間に合わなかったな……。
こちらは当然直ぐに通る事ができ、三十一領区へ入る。
ここは侯爵領区であり、二十三領区と比べると、造りは質素だが建物はどれも
頑丈そうな造りとなっている。
領区自体は広大であり、王城への道は遠い。
「なあ。何か騒がしくないか?」
「そうだな、何かあったんだろうか……」
馬車で走っていると、トループらしきものたちがあちこちで右往左往している
のが目に入る。
どうもただ事ではないようだ。しかし二十三領区側の検問では特に何も言われる事はなかった。
何か起こったばかりかもしれない。
「ジェイク。一度馬車を端に寄せて止めよう。どうも様子がおかしい」
「わかったじゃんよ。俺っちも情報を集めてくるじゃん」
「頼む。こっちの情報担当は気難しくてな」
「おい。俺は別に気難しくねーぞ! 行ってくりゃいいんだろ!」
馬車を飛び出したエプタは、荒々しくジェイクの後を追う。
人間嫌いのあいつがジェイクと一緒に行動するとは……。
エプタが飛び出したので、俺の馬車に乗っているのは現在エー、ビー、ブネ、シュイオン先生、スピアーだ。
ファニー、サニー、アネさん、レニー、イーニー、ドーニー、メナスは封印中。
手前の馬車にレッジとレッツェルと老師、馬車を引くのはジェイク。
後方の馬車にコーネリウス、イライザ、ゴードンが乗車している。
「ふむ。やはりエプタは変わったな。良い方向に」
「さっきのやつ、大分荒い態度だが、あれで密偵が務まるのか?」
「ああ。相当な実力者だ。俺も勝てるかどうかわからない」
「そんなに強いでありますか!? 見かけによらないものでありますね」
「貴様らは知らぬ方がよい。ツインよ、エーナを領域に置いてきたが、こちらへ呼んでも
構わないか?」
「それは構わないけど、どうするつもりなんだ?」
「他にも危険な薬物が持ち込まれている可能性がある。それらの出所を探らせる」
「わかった……そちらは任せるよ。……あれ? もう戻って来たな」
情報収集に向かったはずのエプタとジェイクは直ぐに引き返してきた。
そんなに直ぐわかるような事態だったのだろうか。
「大変じゃんよ! シッダルト侯爵が暗殺されたらしいじゃん!」
「凄い騒ぎになっている。さっさと奥に進まねえとやべえぞ」
「侯爵が暗殺……? ここでも何か起こっているのか」
コーネリウスが真っ青な顔をしてこちらの馬車へ乗り込んできた。
それもそうか。自分の上位階級にあたる貴族が暗殺されたと聞けば無理もないだろう。
「信じられない。無の太刀と呼ばれたシッダルト侯爵が暗殺なんて」
「そんなに凄い人物だったのか?」
「ああ。英雄の一人だ。オズワル伯爵と並ぶ、国を支えた重鎮。
イライザとゴードンを父の許へ走らせた。すまないが私もこちらの馬車を使うぞ」
「わかった。俺は上部の見張り台に移動する」
上部の見張り台に上ると、ジェイクにハンドサインで進むよう合図する。
道中幾度も通行を止められるが、コーネリウスの姿と赤いコインの両方を見せると
すんなり通してもらえた。
「これ以上ゴタゴタに巻き込まれるわけにはいかないが、こんな中、本当にサーカス団を
迎え入れて王女の祝いをやるつもりなのか……」
「隠し通すつもりだろう。私ならそうする」
「貴族なら、そうなるか……」
そう考えつつ、三十一領区の先、王城を目指す俺たち。
日をまたがないとつかない距離だ。結局マーサル隊長の任務には間に合わなかったな……。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
転生ババァは見過ごせない! 元悪徳女帝の二周目ライフ
ナカノムラアヤスケ
ファンタジー
かつて世界を征服しようとした女皇帝がいた。
名をラウラリス・エルダヌス。
長きに渡り恐怖と暴力によって帝国を支配していた彼女は、その果てに勇者との戦いによって息絶える。
それから三百年の月日が流れた。
実はラウラリスは世界の為に悪役を演じていただけであり、その功績を神に認められた彼女は報酬として新たなる(若返った)肉体としがらみをもたない第二の人生を与えられることとなる。
これは悪役を演じきったババァの、第二の人生譚である。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
魔術師見習い、ニッポンの侍の末裔を召喚する(?)
三毛猫 ポチ
ファンタジー
侍の時代が終わって100年以上が経った・・・800年に渡って続く侍の家系の37代目を継ぐはずの男がいた・・・
そんな37代目を聖騎士(パラディン)として召喚した女たちがいた!
アツモリ (男)
本名 阿佐敦盛(あさ・あつもり)
37代目 阿佐揚羽流の継承者
経典に書かれた『終末の聖騎士』・・・と思われる(?)
エミーナ (女)
職業 魔術師見習い(卒業試験を受けてないから見習いのまま)
経歴 ヒューゴボス帝国魔術師学校中退
(学校が閉鎖されたから)
エウレパ大陸冒険者ギルド・ファウナ支部所属
アツモリをこの世界に召喚?した張本人
ルシーダ(女)
職業 神官見習い(卒業試験を受けてないから見習いのまま)
経歴 バレンティノ教団クロト修道院・神官課程中退
(修道院が閉鎖されたから)
エウレパ大陸冒険者ギルド・ファウナ支部所属
エミーナの仲間
☆この作品はノベルアップ+で同タイトルで公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる