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第二章 仲間

第五百六十八話 グールパウダー

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 鐘のある周りを調べると、殺風景だが実に見晴らしのいい風景だ。
 美しい花が咲き、風通しもいい。
 しかし、この風の音は聞き方によって美しくも残酷にも聞こえる。
 風景が良しとするは記憶。その記憶が絶望であるならば、それはたちまち
 絶望の風景へと変わるだろう……。


「ルイン! 俺様、会いたかったよー!」

 メルザの声が突如聞こえる。
 やっぱりか。

「レニー。それは禁止したはずだぞ」
「だってー、寂しいかと思ったんだもーん! レニーちゃん優しい? ねぇ? 優しくない? 
キャハハハ!」
「それより報告を。先生は見つかったか? コーネリウスは酷い状態だった」
「そっれがさー。聞いてー? あれから二手に分かれたんだけどさー。
ちょー面白いのっ。あのエーさんっていうトループ? もうガチガチのコチコチでぇ。
アネさんと一緒だと役に立たないから先生救出組にしといたの。こっちはレニーちゃんと
アネさん。あっち側はスピアーちゃんにエーさん」
「その構成だとエーが心配だな……お前の事だ。コーネリウスの館内には潜入したんだろう?」
「とうぜーん! でもね、コーネリウスさん。相当よくないね。
あれ、グールパウダー使われてるよ。可哀そうに」
「なんだと!? それはゾンビ化するような薬か何かか?」
「もっと強力な存在になるかな。このまま放っておけばアンデッド化は免れないね。
もしかしたら先生なら診断と処方ができるかもって、急いでその場を離れて監視してるとこ。
アネさんにはエーさんに言伝を依頼しちゃったっ! えへへっ レニーちゃん
きっかけ作りうまくない?」

 くそ。思った以上に深刻な状況だ。俺たちを認識できていない上、襲って
来たのは既にモンスター化が進んでいるってことか? 
 このままじゃ手遅れになりかねない。
 コーネリウスを先生の許へ連れて行かないと。

「レニー。先生の居場所はわかってるか?」
「もっちろーん。でもでも、本当にツインがこっち側に来てくれると思わなかった。
キャーー! 私アイドルなのにお姫様? 姫役やっちゃう?」
「やってる場合か! こっちは失敗に終わったんだ。道中伯爵領区でとてつもないモンスター集団
に襲われた。その最中、上空に竜へ乗る王女を見た。
今はサーカス団として行動している最中だ。お前の力が必要なんだ」
「もっちろーん。お腹の子供のためにもレニーちゃん。がんばっちゃうもんねー! 
先生は伯爵の家へ連れて行かれたみたい。多分この領区もエビルイントシケートが
蔓延してるのね。無下には扱われていないと思うの」
「時間が惜しい。封印へ戻ってくれ」
「はいはーい。あら、新入りもいるの? やだ、綺麗なお姉さんまたひっかけたっ! 
ってファニーたちもいるじゃない。なぁんだ、修羅場なしかぁ」
「いいから早く入っておけ!」

 レニーを収納すると、再びコーネリウスの許へ戻る。
 これは、捕縛した状態のまま連れて行くしかなさそうだ。
 レニーの事は触れず、コーネリウスの状態の予測を説明すると、顔色がどんどん真っ青になっていく。
 
「まさか……でもこの症状。放っておいたら本当に危険かもしれません」
「我々も同行します。急ぎ伯爵様の許へ」
「だが問題は、その伯爵が自らそうした可能性があるということ……いや、あるいは誰かが
伯爵へ変装してという可能性もあるな」
「伯爵様が!? そんな、まさか……」
「詳しくはわからないが、どうにか伯爵に気づかれぬよう、俺たちの知合いの
医者に会いたいんだ。そのために仲間が動いていると思うんだが……」
「それでしたら、隠し通路を使いましょう。避難用通路ですが、我々一部の者しか
知らない道です。急ぎ参りましょう!」
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