上 下
627 / 1,085
第二章 仲間

第五百五十六話 サーカス団イーグル

しおりを挟む
 酒場にて、全員に一連の話をすると、酒場の女将の表情がとてつもなく険しくなる。
 英雄オズワルの死を聞けば当然の反応だろう。なるべく口外しないようにだけ伝えておいた。
 そして、ビーは床の傷跡を一つずつ数えている素振りを見せる。相変わらずまだ、レナを直視できていない。
 思いは告げられたのだろうか? 聞くのは野暮なので聞かないが……。
 
「このままだと、この国はまずいね。いよいよ店じまいかもしれない」
「そんなにか? たった一人の伯爵が亡くなっただけでか?」
「伯爵がいたからこそ、他国はこの国へ侵略していなかったのさ。
何せこの国は資源が豊富な上、他国から嫌われていてね。幾度も戦争をしてるのさ。
今は大分落ち着いてるけどね」
「それほどの実力者が……一応そちらへはベニーが調査に向かってる。パモと、恐らくター君もだ」
「ター君ってのは何なんだ?」
「俺の仲間モンスター。ターフスキアーって種族の」
「シャドウモンスターのか? あれは相当厄介なモンスターだろう。そんなのも仲間にできるのか」
「妖魔ならではってところだけど、それは説明したろ?」
「あ、ああ。未だに信じられないけど。いいなぁ……俺もそういう仲間が欲しいぜ」
「確かにいい能力だが、死ねば消滅してしまう。人と変わらないんだ。だから心配でさ……それより
今後の話だ。サーカス団がここへ来てるって話だけど、知らないか?」
「噂にはなってるようだけど、詳しくは知らないね」
「そうか。俺たちの仲間が調べてる最中なんだ。もう結構な時間だな……そろそろ来るか?」
「あっ! 看板返してない! 返してくるね!」
「もしかして俺たち、閉まってるときに堂々と入ってきちゃった?」
「何言ってんだい。この子たちの旦那なら、関係者のようなもんだ。気にしなくていいよ」
「それは助かる。エーたちが戻っていない以上、ここを連絡口にするしかないからな」

 そう話していると、サニーが二人の客を連れてくる。レッジとレッツェルだった。

「この人たちでしょ? 入り口で待ってたわ」
「二人とも! すまない。先に来ていた」
「いや、こちらも少々早く調べがついたんだ。それで――――」
「それにしてもまーーーた可愛い子ひっかけてきたわ! 今度はどんな助け方をしたわけ?」
「はい?」
「随分と細い子ね。肉付きは確かに主ちゃんに似てるけど……ふふん。これなら私の勝ちだわ!」
「なんか、大変そうだな……シーは」
「ああ……話を進めていいかな。俺たちの調べでは、宿屋じゃなく、サーカス小屋を建てて寝泊まりしている
ようだ。小道具が多いみたいで宿屋に入れないらしい」
「その小屋はどこに?」
「下町の入り口付近だ。人の出入りが多いところのほうが、サーカス団が来てるってわかるからだろうな」
「イーグルサーカス団。とても面白そうな芸が見れそうよ」
「しかし、少しおかしな張り紙も見たな。団員募集中ってのはわかるんだが……ゆく先々で
探しているのだろうか」
「どんな内容だったんだ?」
「直接見てみるといい。俺たちでは該当しないかもしれないが、頼み込んでみるしかないだろう」
「うまく潜り込めればいいんだけどね……」
「サーカスなら、ファニーやサニーがいるから、募集があるなら採用は容易いと思ったんだけどな。
それに俺もモンスターを出せるし」

 そう話すと、二人の目が丸くなる。まだ説明していなかったようだ。
 ファニーやサニーの能力については誰にも話してないから無理もない。

 レッジたちも来たので、再び今の状況を説明する。この二人にはまだ、王女が別人であるかもしれない
事は伝えていなかった。それらも含めて話をすると、顔色は真っ青。そして、近年のおかしな出来事も
話してくれた。
 やはり何者かが暗躍しているのは間違いないようだ。
 
「それにしてもあんたたち四人。全員指名手配は免れないね。いいだろ。ここまでよく働いてくれた
ファニーたちに免じて、私はここで連絡役をおってやるよ。仲間の特徴、全部話していきな」
「女将さん……ありがとうございます。それじゃ……」

 女将さんに感謝しつつ、仲間の特徴それぞれを伝えていく。全員に伝わるか、そしてここへ
来るかもまだわからない。だが……俺たちの仲間ならきっと、たどり着く。そう信じている。

 明日はイーグルサーカス団の許を訪れることになり、食事を済ませた。
 レッジとレッツェルもファニーの食事にほおづえが落ちると表現するほど、喜んでもらえたようだ。
 

 そして翌朝――――ファニー、サニーを封印し、ブネとビーを連れ、イオナを肩に乗せた俺は
イーグルサーカス団がいるという下町の入り口へ赴いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

【R18完結】愛された執事

石塚環
BL
伝統に縛られていた青年執事が、初めて愛され自分の道を歩き出す短編小説。 西川朔哉(にしかわさくや)は、執事の家に生まれた。西川家には、当主に抱かれるという伝統があった。しかし儀式当日に、朔哉は当主の緒方暁宏(おがたあきひろ)に拒まれる。 この館で、普通の執事として一生を過ごす。 そう思っていたある日。館に暁宏の友人である佐伯秀一郎(さえきしゅういちろう)が訪れた。秀一郎は朔哉に、夜中に部屋に来るよう伝える。 秀一郎は知っていた。 西川家のもうひとつの仕事……夜、館に宿泊する男たちに躯でもてなしていることを。朔哉は亡き父、雪弥の言葉を守り、秀一郎に抱かれることを決意する。 「わたくしの躯には、主の癖が刻み込まれておりません。通じ合うことを教えるように抱いても、ひと夜の相手だと乱暴に抱いても、どちらでも良いのです。わたくしは、男がどれだけ優しいかも荒々しいかも知りません。思うままに、わたくしの躯を扱いください」 『愛されることを恐れないで』がテーマの小説です。 ※作品説明のセリフは、掲載のセリフを省略、若干変更しています。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

邪悪な魔術師の成れの果て

きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。 すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。 それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

【R18】超女尊男卑社会〜性欲逆転した未来で俺だけ前世の記憶を取り戻す〜

広東封建
ファンタジー
男子高校生の比留川 游助(ひるかわ ゆうすけ)は、ある日の学校帰りに交通事故に遭って童貞のまま死亡してしまう。 そして21XX年、游助は再び人間として生まれ変わるが、未来の男達は数が極端に減り性欲も失っていた。対する女達は性欲が異常に高まり、女達が支配する超・女尊男卑社会となっていた。 性欲の減退した男達はもれなく女の性奴隷として扱われ、幼い頃から性の調教を受けさせられる。 そんな社会に生まれ落ちた游助は、精通の日を境に前世の記憶を取り戻す。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます!

遥 かずら
ファンタジー
 ガチャスキルを持つアック・イスティは、倉庫番として生活をしていた。  しかし突如クビにされたうえ、町に訪れていたSランクパーティーたちによって、無理やり荷物持ちにされダンジョンへと連れて行かれてしまう。  勇者たちはガチャに必要な魔石を手に入れるため、ダンジョン最奥のワイバーンを倒し、ドロップした魔石でアックにガチャを引かせる。  しかしゴミアイテムばかりを出してしまったアックは、役立たずと罵倒され、勇者たちによって状態異常魔法をかけられた。  さらにはワイバーンを蘇生させ、アックを置き去りにしてしまう。  窮地に追い込まれたアックだったが、覚醒し、新たなガチャスキル【レア確定】を手に入れる。  ガチャで約束されたレアアイテム、武器、仲間を手に入れ、アックは富と力を得たことで好き勝手に生きて行くのだった。 【本編完結】【後日譚公開中】 ※ドリコムメディア大賞中間通過作品※

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

処理中です...