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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め
間話 強制送還
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「シーを解放して欲しい。どうか、この通りぞ」
「そうはいってもですね。また彼が暴れ出したら私たちじゃ抑えられないんです。
ところであなたも、姿をいつまでも隠していないで、仮面などを外してもらいますよ」
「よせ。私に触れるな!」
「メナス。もう無理だ。抵抗したら余計怪しまれるだけだ」
「くっ……私は自分の醜い顔をさらしたくないだけぞ……」
「女性の方ならこちらにも女性の護衛がいるので安心してください。おい! 奥の部屋へ連れていけ!」
メナスは奥へ連れて行かれると、仮面を外される。
ここに来る間に、かなりのメイクを施し、声色を少し変えていた。
長身だけはごまかせないが、すべてを解き放つと、美しい銀色の髪が揺れる。
「これは……九領区の当主、銀髪の女狐様では?」
「……」
「私、あなたを尊敬していて……アウグスト・ラトゥーリア・メナス様ですよね?
いいえ、見間違うはずがありません」
「そのような名、何の意味があろうぞ」
「ですが……」
「私はただのメナス。もう貴族ではない」
「なりません。九領区のよくない噂は聞いております。シルベン男爵もきっと今頃心配しております」
「ばかを申すな! あの男が私の心配なぞするものか! 醜い私を追いやったあの男が!」
「し、失礼しました……ですがあなたをこのままここへ留めさせれば、シルベン男爵に隙を突かれるのは必至。どうか、お戻りいただけないでしょうか?」
「くっ……ならば九領区へ戻せ」
「ご存知無いのですか!? 九領区が封鎖された事を」
「どういう事ぞ!? 封鎖とは」
「あの領区から伝染病がもたらされたと噂されております。そのためシルベン男爵の指示で……ひっ」
激しい剣幕となったメナスは、部屋を飛び出し、ビーの待機している部屋へと向かう。
置いていった剣を握りしめ、今にも討ち入りしそうな勢いだった。
「お、おいメナス。落ち着け。どうしたんだ!? 一体」
「我が九領区を解放しにいく」
「はぁ? だってお前、あっちは任せたから大丈夫だって」
「封鎖されたのであれば、大丈夫ではあるまい! 止めるな!」
「いいや、止める。ここで暴れればお前まで牢屋行きだろ?」
暴れるメナスを取り押さえるビー。凄い力だが、落ち着くまで待つしかない。
「放さぬか! 放せ! 放せ!」
「ぐっ……頼む。今は落ち着いてくれ。シーのためにも!」
「くっ……私はこのままだと……家に……どうすれば、どうすれば……」
「お前の家は九領区だろ? そこへ戻るなら都合がいいんじゃないのか?」
「違う! このままだとシルベンの許へ戻される! あそこには戻りとうない。もう、嫌ぞ……あんな目で
見られるのはもう嫌ぞ……」
「メナス様! おやめください!」
護衛が数人部屋へと押し入る。状況を見て動揺しているようだ。
まずいと悟ったビーは、とっさに一芝居討った。
「おっと。こいつの持ってる武器を奪って俺も逃げようとしたんだが、ばれちゃしょうがない。
降参だ」
「な、何を」
とっさにメナスの口を塞ぐビー。
突然の事でかなり動揺するメナス。
「別に暴れたりはしない。おとなしく捕まるよ。どうせここにいても俺一人になるだけだろ。だったら
いっそ、シーと同じ部屋に閉じ込めてくれよ。その方が気が楽だ」
「わかりました……あなたもメナスさんを心配して……」
「ビー! 貴様、勝手すぎようぞ! なぜ……」
そう告げようとしたメナスに耳打ちするビー。
「必ず迎えに行く。何領区だ」
「十八領区ぞ……」
すっとメナスから離れたビーは、護衛に一礼する。
「どうか、丁重に送ってやってほしい。もう、暴れたりしないはずだから」
「わかりました。メナス様はきちんと送り届けさせていただきます」
連れて行かれるメナスは、とても悲しそうな表情をして振り返る。
だが……ビーは親指をたて、元気よく笑って見せた。
それは彼から戦友メナスへ送られた、希望そのものだった。
「そうはいってもですね。また彼が暴れ出したら私たちじゃ抑えられないんです。
ところであなたも、姿をいつまでも隠していないで、仮面などを外してもらいますよ」
「よせ。私に触れるな!」
「メナス。もう無理だ。抵抗したら余計怪しまれるだけだ」
「くっ……私は自分の醜い顔をさらしたくないだけぞ……」
「女性の方ならこちらにも女性の護衛がいるので安心してください。おい! 奥の部屋へ連れていけ!」
メナスは奥へ連れて行かれると、仮面を外される。
ここに来る間に、かなりのメイクを施し、声色を少し変えていた。
長身だけはごまかせないが、すべてを解き放つと、美しい銀色の髪が揺れる。
「これは……九領区の当主、銀髪の女狐様では?」
「……」
「私、あなたを尊敬していて……アウグスト・ラトゥーリア・メナス様ですよね?
いいえ、見間違うはずがありません」
「そのような名、何の意味があろうぞ」
「ですが……」
「私はただのメナス。もう貴族ではない」
「なりません。九領区のよくない噂は聞いております。シルベン男爵もきっと今頃心配しております」
「ばかを申すな! あの男が私の心配なぞするものか! 醜い私を追いやったあの男が!」
「し、失礼しました……ですがあなたをこのままここへ留めさせれば、シルベン男爵に隙を突かれるのは必至。どうか、お戻りいただけないでしょうか?」
「くっ……ならば九領区へ戻せ」
「ご存知無いのですか!? 九領区が封鎖された事を」
「どういう事ぞ!? 封鎖とは」
「あの領区から伝染病がもたらされたと噂されております。そのためシルベン男爵の指示で……ひっ」
激しい剣幕となったメナスは、部屋を飛び出し、ビーの待機している部屋へと向かう。
置いていった剣を握りしめ、今にも討ち入りしそうな勢いだった。
「お、おいメナス。落ち着け。どうしたんだ!? 一体」
「我が九領区を解放しにいく」
「はぁ? だってお前、あっちは任せたから大丈夫だって」
「封鎖されたのであれば、大丈夫ではあるまい! 止めるな!」
「いいや、止める。ここで暴れればお前まで牢屋行きだろ?」
暴れるメナスを取り押さえるビー。凄い力だが、落ち着くまで待つしかない。
「放さぬか! 放せ! 放せ!」
「ぐっ……頼む。今は落ち着いてくれ。シーのためにも!」
「くっ……私はこのままだと……家に……どうすれば、どうすれば……」
「お前の家は九領区だろ? そこへ戻るなら都合がいいんじゃないのか?」
「違う! このままだとシルベンの許へ戻される! あそこには戻りとうない。もう、嫌ぞ……あんな目で
見られるのはもう嫌ぞ……」
「メナス様! おやめください!」
護衛が数人部屋へと押し入る。状況を見て動揺しているようだ。
まずいと悟ったビーは、とっさに一芝居討った。
「おっと。こいつの持ってる武器を奪って俺も逃げようとしたんだが、ばれちゃしょうがない。
降参だ」
「な、何を」
とっさにメナスの口を塞ぐビー。
突然の事でかなり動揺するメナス。
「別に暴れたりはしない。おとなしく捕まるよ。どうせここにいても俺一人になるだけだろ。だったら
いっそ、シーと同じ部屋に閉じ込めてくれよ。その方が気が楽だ」
「わかりました……あなたもメナスさんを心配して……」
「ビー! 貴様、勝手すぎようぞ! なぜ……」
そう告げようとしたメナスに耳打ちするビー。
「必ず迎えに行く。何領区だ」
「十八領区ぞ……」
すっとメナスから離れたビーは、護衛に一礼する。
「どうか、丁重に送ってやってほしい。もう、暴れたりしないはずだから」
「わかりました。メナス様はきちんと送り届けさせていただきます」
連れて行かれるメナスは、とても悲しそうな表情をして振り返る。
だが……ビーは親指をたて、元気よく笑って見せた。
それは彼から戦友メナスへ送られた、希望そのものだった。
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