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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め

第五百五十話 辿りつきし一筋の光明

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「これ、本当にひどいっしょ……」
「ぱーみゅ……」

 シーたちから離れたベニーは、持ち前の俊敏さを活かして一気に山道へ入る。
 幸いモンスターはおらず、二十領区へはすんなり入る事ができた。
 しかし辺り一面ボロボロで、人の気配は皆無。
 
「三十領区へ抜けるにはここからどうしたらいいっしょ……うーん。あれ、使っちゃうか」
「ぱみゅ?」
「こういうの、非常事態っていうっしょ? 来てくれるかな、ライラロさん」
「ぱーみゅ!」
「ええっと、ここをこうして……できた! ライラロさんにだけ見える色? らしいっしょ。
これで上に打ち上げて……」
「ぱーみゅぱーみゅ!」

 ベニーは困った事があったときに知らせられるよう、魔道具を渡されていた。
 そんなライラロさんは、破壊した数々の責任を負うべく、別行動で仕事をしている。
 さすがに参加できないのを申し訳なく感じたのか、ピンチの時だけ駆けつける手筈になっていた。

「でもここまでばれずに来れるっしょ? ブネっぴならともかく」
「ぱーみゅぅ?」
「大丈夫っしょ。ぱもちゃんいるし寂しくない! それにしてもツイン。格好よかったなー」
「ぱみゅ!?」
「元のが一番? そりゃそうっしょ。でも強い男はやっぱ好きっしょ。結局私たちに手なんて
あげれてないしね」
「ぱーみゅー……」

 パモと一緒に瓦礫を避けながら進んでいくベニー。
 だが、そこでまだ息がある人物を見つけ、急ぎ駆けつける。
「ぐ……う……オー……を……し……」
「人いたっしょ! まだ息がある! しっかりして。どうしよう、水は出せるけど……ぱもちゃん!」
「ぱみゅ!」
 
 あっという間に傷薬セットを取り出すパモ。こちらはシュイオン先生特製のセットで、何か
あった時用にパモへ預けていた。
 パモを軽く撫で、すぐさま傷の処置に入る。かなり深い傷だが致命傷へは至っていない。
 しかしこのまま放置すれば確実に死ぬ。

「ギリギリってとこっしょ。ここへ行く決断をしてよかった。絶対手がかりになるはず」
「ぱーみゅ!」



 ――――一方そのころ男爵邸に戻ったビーたちは、昏睡したままのシーを、最も頑丈な鍵の
かかる部屋へ入れられる。
 男爵と一度話をしようと試みたが、誰にも会わないと護衛に告げると、部屋へ引きこもってしまう。
 ビーたちは客間へと通されるが、部屋の前には見張りが立っている。

「くそ、一体どうすればいいんだ。このままじゃ伝染病も止められない。王女だって……」
「貴様はあれを偽物だと思うか?」
「ああ。恐らくは偽物だろう。遠すぎてよくはわからなかった。だがあの場に王女が
いる事自体おかしすぎる」
「だったらなんであの場にずっといたじゃん? 偽物が一人で姿を現す事自体おかしいじゃん?」
「狙いは一体なんだ? 何を狙っているんだ……わからない」
「ブシアノフ男爵はオズワル伯爵と旧知の仲であろう。そのオズワル伯爵が亡くなったとあれば……
或いは。いや、それは最悪の事態ぞ……」
「何かわかったのか? メナス」
「ブシアノフ男爵は、はめられたのかもしれぬ」
「どういうことだ?」
「伯爵邸に向かっていたのはブシアノフ男爵だけだろう? それならば、オズワル伯爵を
殺害したのは……」
「そうか! 罪をなすりつけるために……つまり伯爵を殺したのは偽物の王女……?」
「わからぬ。これでは憶測にすぎぬが……可能性はあるということぞ」
「そして、偽物の王女が動かなかったのは……」
「あの場で男爵が死ねばよし。そうでないなら、罪をなすりつけるため、どの程度
の力量、武装かを確かめていた……じゃん」
「だとしたら、ここはまずい。どうにかシーを連れて脱出しないと! コーネリウスや
シーの奥さんも心配だ……味方が……少なすぎる」
「いいや。あの男には多くの仲間がいるであろう。あのように人を惹きつける者、そうはおるまい」
「そういえば下町に三名、残していたな。連絡がどうとか……」
「なぁ、俺っちは抜けていいじゃん? これ以上は付き合いきれねーじゃんよ……」
「ジェイク……ああ、無理はさせられない。ここを出たら好きにして構わない」
「邪魔するつもりはないじゃんよ。でも俺っちは王女様を攻撃したあいつを、もう信用
できそうにねーじゃんよ……」
「また、信用できるようになったらその時は……」
「ああ、わかってるじゃんよ……色々な事が起こりすぎて、どうかしちまいそうじゃんよ……」

 うなだれるジェイク。だが……事はそう単純にはいかなかった。
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