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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め

第五百三十四話 貴族らしく

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 俺たちと行動をする予定のジェイク。さすがにこのままメナスの姿を隠し通せないので、密かに
姿を見せると、腰を抜かす。

「その銀髪……銀髪の女狐じゃん!? ひえー、魂、抜かないでくれ」
「貴様の魂なぞ抜く必要はない。何か悪だくみをすればその時は抜き去ろうぞ」
「あれは一体どうやってる技なんだ? 術には見えないようだが」
「我が一族のみが扱える天羽々斬アマノハバギリ。三種の魔術招来を行使できる名刀ぞ」
「アーティファクトだな。しかも、特異能力……」

 神話級かどうかは判別が難しいところだ。戦っていた時、使用に制限があったように思える。
 だがティソーナやコラーダのように、封じられた力という可能性もあるな。

「一体あんたら何者じゃん? って言うのは情報屋としての悪い癖だった。トループらしくない」
「そういうこと。余計な詮索は無用。本気でついてくるなら、道中頼むよ」
「任せて欲しいじゃん。まず十二領区へ入るだけなら容易いじゃん。それにそこから先、いい情報があるじゃん」
「どんな情報だ?」
「ブシアノフ男爵の許で護衛兵の募集があるじゃん。そこで腕っぷしを見せればオズワル伯爵領区での
会談後英訳に回されるはずじゃん」
「つまり、無難に二十領区までいけるかもしれないってことか」
「しかも、護衛はチームで行うじゃん。つまり、五人一組のチームで応募するじゃん」
「トループだとばれていてもいいのか?」
「問題ないじゃん。トループって言ってもノーブルトループ以外は管理されてないじゃん。
傭兵でもただのトループでも、一時的に仕事を貰うのは普通じゃん」
「そんなもんなのか?」
「この国はルイ・アルドハル・メイズオルガ様の魔力があまりにも強大だからな。
多くのトループを抱えているが、遠征なんかは最近、とても少なく暇を持て余すトループも多いんだよ」
「だから部隊編成も容易ってわけか。強大な魔力……持て余すトループ。繋がりそうで
まだ繋がらないか」
「さ、そろそろ行くじゃん。馬車は手配しておくじゃん。一時間後に十二領区門前で
落ち合おうじゃん。金貨だけ用意しておくじゃん。足りる?」
「何枚必要だ?」
「二枚じゃん」
「……高ぇ」
「大丈夫だ。俺が払うよ」
「護衛に任命されれば多額の報酬は出るじゃん。俺っちも分け前は貰うぜ」
「それは当然の報酬だろう。手配、頼むぜ」
「腕がなるっしょ! しゅっしゅっ」
「お嬢さんも戦えるのかい?」
「余裕っしょ」
「こりゃ頼もしいじゃん。それじゃまた」

 すーっといなくなるジェイク。いかにも情報屋らしい動きだ。人の死角へ回り込むのが
うまい。
 

 一時間後――――指定された場所へ向かうと、立派な馬車を手配してくれていた。
 ただ、御者はおらず誰かが運転をするしかない。
 そこもジェイクが引き受けてくれた。
 さらに上部へ見張りを置くスペースがある馬車だ。
 これは野盗などを警戒するためのものだろう。
 ビーが名乗りでたが、俺が適任だと説得して上部へと上がる。

「それじゃ行くじゃん。見張りは必要ないと思うけど。何せ十二領区は一番安全と言われてるから」

 門の取り調べ付近まで移動する馬車。入口でいくつか質問を受けたが、内容は簡単なものだった。
 護衛の任務を引き受けに、男爵の許まで向かうという内容。
 乗っている人物などに凶悪犯がいなそうかを確かめ、魔術で光を灯し安全を確認する。
 
「いっていいぞジェイク。頑張ってこいよ」
「当然じゃん。ゴンザレスが伸びてるから見てやってほしいじゃん」
「本当か? あいつが伸びるなんて珍しいな」
「へへっ。それじゃ行ってくるじゃん」

 コトコトと音を立てて再び移動を開始する。十二領区へ入ると、美しく整備された木々が
あちこちに見え始める景色へと一変する。
 さすがは貴族街。入口を見る限りでも綺麗好きなのがよくわかる。
 統治者により町が大きく変わるのは、どの地域でも同じだ。
 これは前世であっても同じだった。

「ここの統治者は有能な人物そうだな」
「何でそう思うじゃん?」
「目の届きにくそうな部分まで手入れが行き届いている。
無能な人物には到底出来ない行動だ。自分の領地を綺麗にするというのは、自身が綺麗好き
というだけでなく他人への配慮が強い証拠だ。他者へ思いやる気持ちが無ければ到底出来ない」

 そう。現実でも自分の身の回りより、会社の社員が利用する所を自ら率先して掃除する社長。
 全て超有能な社長ばかりだった。そしてそれは、売上が立ち成功しても変わらない。
 成功者たる所以はそこからも見て取れる。松下幸之助、本田宗一郎。
 口だけで、他人任せではこうはいかない。日本が誇った屈指の名社長だ。

「その通りじゃん。でも厳格な人じゃん。護衛に任命されるかは、抜かりなく調べられるじゃん」
「……恐らく、平気だろう。この場所をみてブシアノフ男爵に会ってみたくなった。少し不安が
あるとするなら……」
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