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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め
第五百二十話 エビルイントシケート
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「……これは、エビルイントシケートを強制的に引き起こす伝染病ですね。
幸いなことに命に強く関わる程重症になるのは、強い魔力を保有するもののみです。
あなたの部下に強力な魔術師はいますか?」
「おらぬ。私以上の魔術使用者は。狙いは私か?」
先生は下あごに親指をあて、目を閉じて少し思案している。
事はそんな単純な話なのだろうか。それとも……。
「このエビルイントシケートというのは状態を表すことからその名がついた病です。
実際に酔うわけではないのですが、強力な魔術を使用すると強い頭痛や嘔吐を伴う症状が
徐々に出始めます。最初は調子が悪いだけかと思うのですが、何れは激しい頭痛とともに
正気が失われるのです」
「そうすると、シーや俺にとっては好ましくない状態だな」
「強力な魔術使用者が震え上がる程恐ろしい伝染病。ですが魔術の使用を
一か月控えれば、影響を受けた毒素は消えます。しかし魔術に頼る戦闘の方にとって
一か月はあまりに長い。そしてこの国は魔術使用者が多いでしょう?
蔓延すれば大変な事になりますが、材料があれば特効薬は作れますよ」
「既に蔓延している可能性は?」
「……あります。下町を調べたのですが……良くない結果でした」
先生は紙に書かれたカルテを示す。内容までは見せていないが、恐らく相当な
数が該当したのだろう。
「対処法はあるのか?」
「権力者に頼るほかありません。国に流行る病を対処できるのは、国だけです」
「同感だ。俺たちはちょうど夜、酒場で伯爵の息子と落ち合う予定なんだ」
「なんですって? ……失礼。それでは医師として私が同行しても?」
「……ああ。頼む」
「先生が行くならスピアもついていくぞ! 助手だからな」
「わし、またおいてけぼり?」
「爺さんには姉さんがいるだろ。文句言うな!」
「わし、出番ないのう……」
そう言いながら悲しそうにしょげる老人を見て、スピアが優しく……なくばしばしと叩いて励ます。
「いたた! スピアちゃん! もっと優しくしておくれ」
「何言ってんだ。もうくっついたから大丈夫だろ。な? 先生」
「いえ、患者さんには優しくしてあげてください。いくら彼が頑丈とはいえ……おっと失礼。
それで皆さんにはこちらの錠剤をそれぞれ服用していただきます。
一時的にかなり魔力が下がります。ですが三日もあれば元に戻るでしょう。
特にツインさん! あなたは二倍飲んでもらいます。それでも完全に効果があるかわかりません。
しばらくは私が見張ってますからね!」
「う……それ以外にもまだやることが……」
「いけません! 医者の言う事はちゃんと守ってもらいます!」
「そうだぞ。先生の言いつけは守らないとだめだからな」
「はい。わかりました……」
「あ、ああ。わかったよ」
「承知ぞ……」
ビー、シー、メナスはそれぞれ下をうつむいて応えた。
一人薬を必要としないエーに、少し町の様子を探ってもらうことに。
薬は服用後、著しく眠気を引き起こすため、こちらで少々休む事になった。
メナスはスピアに女部屋へと案内され、ビーとシーはそれぞれベッドへと向かう。
先生もまた別の部屋へ向かい、老人と合わせて三人だけとなった。
「なぁシー。詮索はあまりしたくないんだけどさ。そっちの老人。ただものじゃないよな」
「わしか? わしはただの老人じゃよ」
「老師だ。隠し通せませんよ。彼は相当な観察眼を持ってます。実力もかなり高い」
「ふぅむ。そうか。お主……」
「ん? どうかしたか?」
「まつ毛パッチン眼差しキング!」
「はぁ?」
「すまん。聞き流してくれ……」
幸いなことに命に強く関わる程重症になるのは、強い魔力を保有するもののみです。
あなたの部下に強力な魔術師はいますか?」
「おらぬ。私以上の魔術使用者は。狙いは私か?」
先生は下あごに親指をあて、目を閉じて少し思案している。
事はそんな単純な話なのだろうか。それとも……。
「このエビルイントシケートというのは状態を表すことからその名がついた病です。
実際に酔うわけではないのですが、強力な魔術を使用すると強い頭痛や嘔吐を伴う症状が
徐々に出始めます。最初は調子が悪いだけかと思うのですが、何れは激しい頭痛とともに
正気が失われるのです」
「そうすると、シーや俺にとっては好ましくない状態だな」
「強力な魔術使用者が震え上がる程恐ろしい伝染病。ですが魔術の使用を
一か月控えれば、影響を受けた毒素は消えます。しかし魔術に頼る戦闘の方にとって
一か月はあまりに長い。そしてこの国は魔術使用者が多いでしょう?
蔓延すれば大変な事になりますが、材料があれば特効薬は作れますよ」
「既に蔓延している可能性は?」
「……あります。下町を調べたのですが……良くない結果でした」
先生は紙に書かれたカルテを示す。内容までは見せていないが、恐らく相当な
数が該当したのだろう。
「対処法はあるのか?」
「権力者に頼るほかありません。国に流行る病を対処できるのは、国だけです」
「同感だ。俺たちはちょうど夜、酒場で伯爵の息子と落ち合う予定なんだ」
「なんですって? ……失礼。それでは医師として私が同行しても?」
「……ああ。頼む」
「先生が行くならスピアもついていくぞ! 助手だからな」
「わし、またおいてけぼり?」
「爺さんには姉さんがいるだろ。文句言うな!」
「わし、出番ないのう……」
そう言いながら悲しそうにしょげる老人を見て、スピアが優しく……なくばしばしと叩いて励ます。
「いたた! スピアちゃん! もっと優しくしておくれ」
「何言ってんだ。もうくっついたから大丈夫だろ。な? 先生」
「いえ、患者さんには優しくしてあげてください。いくら彼が頑丈とはいえ……おっと失礼。
それで皆さんにはこちらの錠剤をそれぞれ服用していただきます。
一時的にかなり魔力が下がります。ですが三日もあれば元に戻るでしょう。
特にツインさん! あなたは二倍飲んでもらいます。それでも完全に効果があるかわかりません。
しばらくは私が見張ってますからね!」
「う……それ以外にもまだやることが……」
「いけません! 医者の言う事はちゃんと守ってもらいます!」
「そうだぞ。先生の言いつけは守らないとだめだからな」
「はい。わかりました……」
「あ、ああ。わかったよ」
「承知ぞ……」
ビー、シー、メナスはそれぞれ下をうつむいて応えた。
一人薬を必要としないエーに、少し町の様子を探ってもらうことに。
薬は服用後、著しく眠気を引き起こすため、こちらで少々休む事になった。
メナスはスピアに女部屋へと案内され、ビーとシーはそれぞれベッドへと向かう。
先生もまた別の部屋へ向かい、老人と合わせて三人だけとなった。
「なぁシー。詮索はあまりしたくないんだけどさ。そっちの老人。ただものじゃないよな」
「わしか? わしはただの老人じゃよ」
「老師だ。隠し通せませんよ。彼は相当な観察眼を持ってます。実力もかなり高い」
「ふぅむ。そうか。お主……」
「ん? どうかしたか?」
「まつ毛パッチン眼差しキング!」
「はぁ?」
「すまん。聞き流してくれ……」
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