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第四章 メルザの里帰り
間話 リルとカノン、吸い寄せられる迷宮
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ルインたちと別れ行動し始めたリルとカノン。二人は晴れて結ばれ、妖魔国側でしばし親睦を
深めた後、フェルス皇国を出発した。
目的地はフェルス皇国よりずっと北上した場所にある奈落。
「リルさん……それなぁに?」
「これはフォモルさんが出かける前に持たせてくれた腕輪だよ。
昔ルインが使ってたのを、お祝いにくれたんだ。見ててね……剣展開」
リルがそういうと、六本の小さな剣が展開され、リルの指し示した岩へ攻撃を開始する。
「模倣、剣展開」
さらにもう六本の剣が岩へと飛翔した。飛んでいった短い剣は合計十二本にもなる。
「すごいなぁ。私にももう少し何か、特技があればいいんだけど」
「何言ってるんだい。君は僕が守る。強くなることより、守られることを覚えて欲しいな」
「う、うん。でも本当に私でいいのかな。私、遊魔だよ?」
「それを言うならカノン、僕は妖魔だよ。僕でいいのかい?」
そんな二人のやり取りを交わしている最中だった。
奈落方面へと向かう途中に、地底の上より奇妙な塔が落ちてきた。
突然の事に呆然とする二人。カノンはクインとニーナに別れ空を飛び、リルもフルフライトで
飛行が可能。
上空より目の前に起きた突然のことに驚き、声もない。
暫くぼーっとした二人だが、首を横に振りお互いに向き合う。
「リルさん! 何か突然降ってきたよ! 何、あれ?」
「わからない。何かが地底で起きているとしか。少し近づいて調べてみよう。
どうにも気になる」
「うん。そうだね……落ちてきたのに物音一つせず、地面に着いたよ。何かの能力なのかな」
リルとカノンが落ちてきた塔に少し近づいて見るが、まったく理解できないような模様が無数に
刻まれていた。
入口は遠くからでは見当たらず、もっと近づく必要がある。
「もう少し近くに寄らないとわからないね。カノン、君はここで少し……」
「ダメよリルさん。私の方が安全に調べられるわ。リルさんは少しここで待っていて。
透過して中を調べてくるから」
「中はやめておいた方がいい。ひとまず外を調べよう。どんな仕掛けがあるかもわからないし」
クインが塔に近づいて辺りを調べ始める。ニーナの方でその情報を伝えていくが……やはり
入口らしいものは見当たらないようだった。
モンスターの気配などは外からは感じられず、不思議な感覚だけが存在する。
「やっぱりよくわからないけど、悪いもの……じゃなさそうかな?」
「けれど地底にこんな塔が現れた以上、何かが起きてるとしか思えないね。
しかもここはフェルス皇国領。ほうっておくわけにはいかないかな」
そう言いながらリルが近づいた時だった。
「なっ!? 吸い込まれる? まずい、カノン、逃げ――――」
「ダメ! 手を離したくない! 行くなら私もよ!」
「くっ……何なんだこの塔は」
引き寄せられた二人は、壁の一部を透過し内部に吸い込まれていった。
すぐさま辺りを確認するリル。ところどころに外と同じような紋様が刻まれている部屋。
部屋の一角なのだろうか。外とはまったく異質の空間。にもかかわらず、リルにはなぜか
居心地がよいと感じるような空間だった。
「どうしようリルさん! ここ、透過出来ない……こんなの初めてだわ!」
「落ち着くんだカノン。中に入れたということは、出る方法もあるはず。慎重に調べていこう。
残念ながら直ぐには、フェルドナージュ様の許へ向かえなくなっちゃったけどね」
アルカーンにカノンの事を報告できず少し残念に思う。
だがあの兄の事だ。きっといつも通り無表情のまま、祝ってくれるに違いない。
「こんな時にアルカーンの事を考えるなんて、思いもしなかったなぁ。僕も変わったのかな」
深めた後、フェルス皇国を出発した。
目的地はフェルス皇国よりずっと北上した場所にある奈落。
「リルさん……それなぁに?」
「これはフォモルさんが出かける前に持たせてくれた腕輪だよ。
昔ルインが使ってたのを、お祝いにくれたんだ。見ててね……剣展開」
リルがそういうと、六本の小さな剣が展開され、リルの指し示した岩へ攻撃を開始する。
「模倣、剣展開」
さらにもう六本の剣が岩へと飛翔した。飛んでいった短い剣は合計十二本にもなる。
「すごいなぁ。私にももう少し何か、特技があればいいんだけど」
「何言ってるんだい。君は僕が守る。強くなることより、守られることを覚えて欲しいな」
「う、うん。でも本当に私でいいのかな。私、遊魔だよ?」
「それを言うならカノン、僕は妖魔だよ。僕でいいのかい?」
そんな二人のやり取りを交わしている最中だった。
奈落方面へと向かう途中に、地底の上より奇妙な塔が落ちてきた。
突然の事に呆然とする二人。カノンはクインとニーナに別れ空を飛び、リルもフルフライトで
飛行が可能。
上空より目の前に起きた突然のことに驚き、声もない。
暫くぼーっとした二人だが、首を横に振りお互いに向き合う。
「リルさん! 何か突然降ってきたよ! 何、あれ?」
「わからない。何かが地底で起きているとしか。少し近づいて調べてみよう。
どうにも気になる」
「うん。そうだね……落ちてきたのに物音一つせず、地面に着いたよ。何かの能力なのかな」
リルとカノンが落ちてきた塔に少し近づいて見るが、まったく理解できないような模様が無数に
刻まれていた。
入口は遠くからでは見当たらず、もっと近づく必要がある。
「もう少し近くに寄らないとわからないね。カノン、君はここで少し……」
「ダメよリルさん。私の方が安全に調べられるわ。リルさんは少しここで待っていて。
透過して中を調べてくるから」
「中はやめておいた方がいい。ひとまず外を調べよう。どんな仕掛けがあるかもわからないし」
クインが塔に近づいて辺りを調べ始める。ニーナの方でその情報を伝えていくが……やはり
入口らしいものは見当たらないようだった。
モンスターの気配などは外からは感じられず、不思議な感覚だけが存在する。
「やっぱりよくわからないけど、悪いもの……じゃなさそうかな?」
「けれど地底にこんな塔が現れた以上、何かが起きてるとしか思えないね。
しかもここはフェルス皇国領。ほうっておくわけにはいかないかな」
そう言いながらリルが近づいた時だった。
「なっ!? 吸い込まれる? まずい、カノン、逃げ――――」
「ダメ! 手を離したくない! 行くなら私もよ!」
「くっ……何なんだこの塔は」
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すぐさま辺りを確認するリル。ところどころに外と同じような紋様が刻まれている部屋。
部屋の一角なのだろうか。外とはまったく異質の空間。にもかかわらず、リルにはなぜか
居心地がよいと感じるような空間だった。
「どうしようリルさん! ここ、透過出来ない……こんなの初めてだわ!」
「落ち着くんだカノン。中に入れたということは、出る方法もあるはず。慎重に調べていこう。
残念ながら直ぐには、フェルドナージュ様の許へ向かえなくなっちゃったけどね」
アルカーンにカノンの事を報告できず少し残念に思う。
だがあの兄の事だ。きっといつも通り無表情のまま、祝ってくれるに違いない。
「こんな時にアルカーンの事を考えるなんて、思いもしなかったなぁ。僕も変わったのかな」
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