531 / 1,085
第四章 メルザの里帰り
第四百七十二話 思いすぎる者を、安心させる仲間たち
しおりを挟む
ルインを担いで戻って来たハクレイ。皆大分飲みすぎたのか、殆どの者が眠っていた。
起きていたのは眠そうにこくりこくりしているメルザと、ファナ、ベルディア。
ウォーラスやレウスさんたちは、温泉に入りに行ったらしい。
サラはルインがほかの女をひっかけてきたのが癪すぎて、やけ酒で寝ている。
そのやけ酒に付き合っていたのがそもそものひっかけてきたレミで、どちらも
酔いつぶれている。
「どっこいしょっと、疲れたわい」
「ハクレイの爺さん。あんた腰は平気なの?」
「このくらいの若さを背負うくらい、どうってことないわい。それとも
ファナちゃんが腰を揉んでくれるのかのう?」
「旦那の前でお爺さんの腰を揉む趣味はないわ。そう、旦那の前で、旦那……」
「でも本当にルインをそっとしておけっていうのは本当だったっしょ。思いつめてたのね」
ルインの髪をそっと撫でるベルディアに、若干嫉妬の目を向けているのはメルザだった。
「ふぁぁー。けどよぉ。何でファナたちはルインが落ち込んでるってわかったんだぁ? ふぁぁーー……」
「うふふ。メルザ、もう寝てていいのよ。長旅で疲れたでしょ? ……私たち、今回の旅に
行かなかったでしょ? 空気を読んだっていうのもあるけれど、なるべくメルザと二人にしてあげたかったのよ」
「でも結局デンジー三兄弟ってのを仲間にしちゃってるっしょ。他にも壁の身魔族やお医者さんや変な竜に
アイドル? お人よしにもほどがあるっしょ」
「こやつはのう、案外こう見えて寂しがり屋なんじゃろう。無口な方じゃしそうは言わんじゃろうけどな。
それに、恩を受けた相手への感謝する気持ちが人一倍大きいんじゃよ。それはお嬢さん方も感じておるじゃろうて」
「そうね……私はルインがいなかったらとっくに死んでたわ。そう、初めて会った時だって、盗みに入った
私たちを許してくれた。そればかりか私たちの心配をする始末。お人よしにもほどがあるわね」
「それを言うならこっちもっしょ。闘技大会で戦った相手を簡単に仲間にしちゃうなんて。
兄貴も私も嬉しかったけどね」
「俺様ー……ずっと……一緒にいてぇよぉ……すやぁ……」
ルインに寄りかかり眠りだすメルザ。くすりと笑ったファナが、メルザを持ち上げてルインの
横に寝かせる。
暫くして治療道具を持ってきたシュイオン先生が、スピアを連れて、ルーンの安息所へ入って来た。
「お待たせしました。ルインさんには困ったものですね。自分の町でこんな怪我をするなんて。
なぜ私に吐き出してくれなかったのでしょうか。私は、彼に吐き出してしまったというのに……」
「戦いでしか語れぬ事もある。それにこやつの事じゃ。そもそも苦しんでいるあんたを、苦しめたくは
ないんじゃろうなぁ」
「彼に頼られない。そっちの方が私には苦しいというのに……起きたら一つ、いたーい注射でもご用意しましょうかね」
「がっはっは。それがいいかもしれんのう。ところでそちらのべっぴんさんはどちらかなー?」
「ななな、なんだこの爺さんは! べべ、べっぴん?」
「助手のスピアといいます。これでも火竜種ですよ」
「ほう……しかしあのメルザという娘といい、おぬしといい、美しい赤色の髪の女性がおるもん
じゃのう」
妙なところに関心をされたが、べっぴんといわれてものすごく動揺するスピア。
シュイオンが包帯を要求していたが、包帯をなぜか自分の腕にぐるぐる巻きつけている。
「あのー……それをあなたの腕に巻いてどうするんですか?」
「う、うるさいうるさいうるさいー! ちょっと間違えただけだ!」
「ふう。まだまだですけど、スピアさんは一生懸命手伝ってくれますし、感謝してますよ」
ますます赤くなって、横をぷいっと向いてしまうスピアを見ながら、ハクレイは再び天を仰ぎ見た。
もう少し……もう数年早く彼らに出会えていれば……だが運命の歯車など、そううまくかみ合うはずもない。
全ては必然で起こり連なるものなのだから。
しばらくして、がばっと起き上がるメルザ。
「……あれぇ、俺様、寝てたのかぁ? ふぁぁ……」
「おや、起こしてしまいましたか。メルザさんは今日はルインさんに付き添って寝てあげてください。
私たちはこれで引きあげますから。おやすみなさい」
「ふぁぁ……先生、おやすみぃ」
起きていたのは眠そうにこくりこくりしているメルザと、ファナ、ベルディア。
ウォーラスやレウスさんたちは、温泉に入りに行ったらしい。
サラはルインがほかの女をひっかけてきたのが癪すぎて、やけ酒で寝ている。
そのやけ酒に付き合っていたのがそもそものひっかけてきたレミで、どちらも
酔いつぶれている。
「どっこいしょっと、疲れたわい」
「ハクレイの爺さん。あんた腰は平気なの?」
「このくらいの若さを背負うくらい、どうってことないわい。それとも
ファナちゃんが腰を揉んでくれるのかのう?」
「旦那の前でお爺さんの腰を揉む趣味はないわ。そう、旦那の前で、旦那……」
「でも本当にルインをそっとしておけっていうのは本当だったっしょ。思いつめてたのね」
ルインの髪をそっと撫でるベルディアに、若干嫉妬の目を向けているのはメルザだった。
「ふぁぁー。けどよぉ。何でファナたちはルインが落ち込んでるってわかったんだぁ? ふぁぁーー……」
「うふふ。メルザ、もう寝てていいのよ。長旅で疲れたでしょ? ……私たち、今回の旅に
行かなかったでしょ? 空気を読んだっていうのもあるけれど、なるべくメルザと二人にしてあげたかったのよ」
「でも結局デンジー三兄弟ってのを仲間にしちゃってるっしょ。他にも壁の身魔族やお医者さんや変な竜に
アイドル? お人よしにもほどがあるっしょ」
「こやつはのう、案外こう見えて寂しがり屋なんじゃろう。無口な方じゃしそうは言わんじゃろうけどな。
それに、恩を受けた相手への感謝する気持ちが人一倍大きいんじゃよ。それはお嬢さん方も感じておるじゃろうて」
「そうね……私はルインがいなかったらとっくに死んでたわ。そう、初めて会った時だって、盗みに入った
私たちを許してくれた。そればかりか私たちの心配をする始末。お人よしにもほどがあるわね」
「それを言うならこっちもっしょ。闘技大会で戦った相手を簡単に仲間にしちゃうなんて。
兄貴も私も嬉しかったけどね」
「俺様ー……ずっと……一緒にいてぇよぉ……すやぁ……」
ルインに寄りかかり眠りだすメルザ。くすりと笑ったファナが、メルザを持ち上げてルインの
横に寝かせる。
暫くして治療道具を持ってきたシュイオン先生が、スピアを連れて、ルーンの安息所へ入って来た。
「お待たせしました。ルインさんには困ったものですね。自分の町でこんな怪我をするなんて。
なぜ私に吐き出してくれなかったのでしょうか。私は、彼に吐き出してしまったというのに……」
「戦いでしか語れぬ事もある。それにこやつの事じゃ。そもそも苦しんでいるあんたを、苦しめたくは
ないんじゃろうなぁ」
「彼に頼られない。そっちの方が私には苦しいというのに……起きたら一つ、いたーい注射でもご用意しましょうかね」
「がっはっは。それがいいかもしれんのう。ところでそちらのべっぴんさんはどちらかなー?」
「ななな、なんだこの爺さんは! べべ、べっぴん?」
「助手のスピアといいます。これでも火竜種ですよ」
「ほう……しかしあのメルザという娘といい、おぬしといい、美しい赤色の髪の女性がおるもん
じゃのう」
妙なところに関心をされたが、べっぴんといわれてものすごく動揺するスピア。
シュイオンが包帯を要求していたが、包帯をなぜか自分の腕にぐるぐる巻きつけている。
「あのー……それをあなたの腕に巻いてどうするんですか?」
「う、うるさいうるさいうるさいー! ちょっと間違えただけだ!」
「ふう。まだまだですけど、スピアさんは一生懸命手伝ってくれますし、感謝してますよ」
ますます赤くなって、横をぷいっと向いてしまうスピアを見ながら、ハクレイは再び天を仰ぎ見た。
もう少し……もう数年早く彼らに出会えていれば……だが運命の歯車など、そううまくかみ合うはずもない。
全ては必然で起こり連なるものなのだから。
しばらくして、がばっと起き上がるメルザ。
「……あれぇ、俺様、寝てたのかぁ? ふぁぁ……」
「おや、起こしてしまいましたか。メルザさんは今日はルインさんに付き添って寝てあげてください。
私たちはこれで引きあげますから。おやすみなさい」
「ふぁぁ……先生、おやすみぃ」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
進化転生 転生したら召喚獣ウルフィでした ~召喚獣が召喚の力を執行する~
紫電のチュウニー
ファンタジー
【サブ連載、土曜日二本更新中】
シロと二人、パン屋を営みながらゆったりと過ごしていた白井 杏珠。
シロのふわふわを感じながら寝ていたら、謎の進化する白い生物
ウルフィに転生してしまう。
その世界でルビニーラという召喚術士に突如契約され、従魔となる。
彼は召喚獣なのに奇妙な召喚術を使える異能者だった。
ウルフィを手にした彼女の夢は、召喚士としての頂点である紫電の召喚士。
成長と冒険の旅が始まろうとしていた。
オリジナル世界観で描くローファンタジーなストーリー
をお楽しみ頂ければ幸いです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる