上 下
527 / 1,085
第四章 メルザの里帰り

第四百六十八話 暴走しているもの

しおりを挟む
 ルクス傭兵団のおかげで、スムーズにかつ見つからずに移動する俺たち一行。
 ステルス機能付き空中移動手段……ある意味反則的だが、万能とまではいかない。
 まず戦う機能は持ち合わせていないし、風抵抗があまり無いため、暴風には弱い。
 そのため突風地域などでは使用できず、また雨が降れば姿は隠せなくなる。

 ドラディニア、キゾナ、トリノポート大陸は比較的気候が安定しているが、他地域は
そうでもないらしい。場所によっては常時雷が降り注いでいた李、猛吹雪の場所も
あるんだとか。行ってみたいような行ってみたくないような……そんな場所だ。

「なぁなぁ。なんでキゾナ大陸から戻らなかったんだ? あっちの方がちけーだろ?」
「トリノポートを魔物の大群が襲撃したって話だ。上空からどんな状態なのか確認したかったんだ」
「そーいやハクレイって爺さんがやっつけたって話してたな。そんなにつえーのか?」
「どうだろう。一見するとただの鎧を着た爺さんだったが……本当に魔王なのか? あれは」

 思案しつつ海を渡っていくルクシール。
 まもなくしてトリノポート大陸が見えてきた。

 久しぶりに遠くから見た自大陸は、緑豊かな土地が広がっていた。

「この大陸がやっぱり一番落ち着くな」
「ああ! へへへ……俺様とルインが出会えた大事な場所だぜ」
「そうだな……ここ一帯の風も心地いい」
「旦那ぁ! あんまり乗り出さないでくだせぇ。モンスターに気付かれやすぜ!」
「すまない! 自重するよ……ん? あれはもしかしてライラロさんじゃないか? 何やってるんだ、こんなところで」

 元ベッツェンあたりに差し掛かった所だった。どうにも見覚えのある姿の人物に注視していたら、なんと
ライラロさんが風斗車……のような違う何かに乗って暴走していた。

「悪い、俺はここまででいい。メルザ! ライラロさんがいるから挨拶してくる! メルザをルーンの町まで頼めるか?」
「えー、俺様も行っちゃだめか?」
「ちょっと様子がおかしいし危ないからやめておいた方がいいぞ。確実に巻き込まれる」
「わかりやした旦那。無事に送り届けやす。一度着陸しますんでお待ちを……」
「ここで構わないよ。広いから久しぶりにあれをやりたくて」


 ルクシールから飛び降りると、俺はドラゴントウマのトウマを出現させ、その上に乗る。
 相変わらずのでかさだ。久しぶりだな、トウマ! 

「うへえ。噂には聞いてやしたが、本当に竜を出されるとは。おっかねえ」
「いいなぁー--、俺様も乗りたかったぁー!」
「悪いなー-! メルザー--! 今度ゆっくり乗せてやるからー--!」:

 フッと消えるルクシールに向けて大きな声を放つ。ライラロさんもトウマにはもちろん気付いて
こっちに来ようとはしているのだが……「ちょっとー---、止めてぇー---!」

「神魔解放! 何やってんだライラロさん!」

 物凄い勢いでトウマに突っ込んで来ようとしてたので、慌てて着地し、乗り物を止めようとするのだが……
とんでもない力だった! 

「嘘だろ!? 真化! ……獣化! ぐおお……紫電清霜!」

 後ろ脚にバリバリと紫色の電気を発しながら、獣の足でどうにか突撃する風斗車の
ようなものを抑え込む。暴れ馬のように動こうとするのでどうにか無理やり方向を地面へと向け
て止めた。

「はぁ……はぁ……なんて力だ。一体何やってるんだ! こんなところで」
「じ、実験よ! シフティス大陸は広いから、移動手段としてちょーっと手を加えたの! 
あの大陸は足の速い魔物が多いのよ。別にあんたたちが追われて困ると思ってやったとかじゃないわよ」
「……俺たちの事を考えてやってくれたってのはいいけど。これ、使い物にならんだろ。
またあの峠で起きた事故を起こすつもりか?」

 しゅん……と小さくなるライラロさん。この人は放っておくとすぐこれだ……気持ちだけは
ありがたいが、シーザー師匠にしっかりブレーキをかけてもらわないと。
 ……ああ、今不在だったんだ。師匠……あなただけが頼りです。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

処理中です...