上 下
516 / 1,085
第四章 メルザの里帰り

第四百五十七話 安らかに眠れ

しおりを挟む
「ルイン、コロス、コロス!」

 大きく剣を振り上げたキャットマイルドは、地上へ叩きつけるように剣を振り下ろす。
 暗黒の霧が周囲にたちこめるようにほとばしり、振り下ろした地面一帯を暗黒に染め上げていく。
 
「全員後退だ! 紫電、バネジャンプ! ……なんだ、これは?」

 広がった暗黒が地面の上にあるものをどんどん飲み込んでいく。
 攻撃を反射するだけではないのか? 

「殿方殿。暗黒に飲まれぬよう! 近距離ではなく中、遠距離での戦闘を!」
「おいおい、まだ慣れてない……こりゃモードを切り替えて戦う必要があるな。妖赤海星……いや、術は
無効か?」
「そうとは限らないでしょう。幻術に強くとも妖術に強いとは限りません。
どうにかあの闇の衣をはがせませんか?」
「やってみる! ブラックイーグル、ウォーターガン!」

 中距離からブラックイーグルを撃ち放つ。ターゲットに弱点反応はない。
 何発かお見舞いするが反応は一切起きない。

「まぁそうなるよな……もう一丁! 妖氷造形術……パルスシューター!」

 電撃を放てる銃を創作。こいつは前世での見様見真似試作第一号。
 あえて奴の眼前付近に移動し挑発する。目の前の虫をつかもうと、手を伸ばしてくるが、冷静に
回避を続ける。
 
「ルインーーー! コロスーー!」

 激高したヤツは俺に向けて暗黒の斬撃を無数に放つ。しかし……今の形態の回避速度は半端じゃない。
 奴が攻撃する時には、はるか上空、明後日の方角に移動していた。
 方角を確かめ、先ほどブラックイーグルで狙撃した箇所に逆さま向きで狙いを定める。

氷冷電撃アイシクルブリッツ!」

 氷塊の中に電撃を充満させ、雷撃を帯びた一撃を奴へ向けて放出する。
 あたりはするが効果があるようにはみえない。

「殿方殿! 何か違う方法で!」
「何をやっているのです! もっと高威力の攻撃があなたにはあるでしょう!」
「いや、これでいいんだ! 二人とも、もっと下がれ! かなり遠くへ避難しろ! モード……獣炎戦車……爆炎、カタストロフィ! いけえーーーー!」

 豪炎をもたらすカタストロフィの一撃。それは奴にヒットする前だった。

 ドゴオオオオオン! と強い衝撃の後、超大爆発が起こり、奴の闇の衣もろとも大きく吹き飛ぶ。
 
 海水に電撃を当てると何が起こるか……あの程度の海水であれば水素イオンが発生する。それに着火した。
 つまり俺のモードに雷を合わせると、とんでもない火力が産出される。以前メルザが洞窟で放った規模の比ではない。
 そしてさらに……今銃は手元にニ丁。そして戦車形態のままだ。

一斉射撃フルブレイク!」


 小規模水素爆発が何度も何度もキャットマイルドへ起こる。やつが倒れるまで、攻撃の手を緩めるつもりはない。ラーヴァティンからの解放を。
 かかえているしがらみからの……解放を。

「ルイーン! コロ……ル……勝てな……俺は……勝てな……かっ……」
「そんなになるほど俺に挑み、勝った先に何があるっていうんだ。お前にやられたおかげで俺は強くなった。だから最後は俺の手で……眠れ、キャットマイルド……バースト・カタストロフィ!」

 超爆発とともに暗鬼サイクロプスは内側から飛散して、ラーヴァティンに食い尽くされた。
 最高の防御剣に食い尽くされたその場には、禍々しい剣が一本、残るだけだった。

「本当にさよならだ。キャットマイルド。安らかに眠れ。俺は前に進まなきゃいけない。
あいつが心安らかに生きられるよう。そして俺を救ってくれたもう一人の恩人を助けるためにも」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

【R18完結】愛された執事

石塚環
BL
伝統に縛られていた青年執事が、初めて愛され自分の道を歩き出す短編小説。 西川朔哉(にしかわさくや)は、執事の家に生まれた。西川家には、当主に抱かれるという伝統があった。しかし儀式当日に、朔哉は当主の緒方暁宏(おがたあきひろ)に拒まれる。 この館で、普通の執事として一生を過ごす。 そう思っていたある日。館に暁宏の友人である佐伯秀一郎(さえきしゅういちろう)が訪れた。秀一郎は朔哉に、夜中に部屋に来るよう伝える。 秀一郎は知っていた。 西川家のもうひとつの仕事……夜、館に宿泊する男たちに躯でもてなしていることを。朔哉は亡き父、雪弥の言葉を守り、秀一郎に抱かれることを決意する。 「わたくしの躯には、主の癖が刻み込まれておりません。通じ合うことを教えるように抱いても、ひと夜の相手だと乱暴に抱いても、どちらでも良いのです。わたくしは、男がどれだけ優しいかも荒々しいかも知りません。思うままに、わたくしの躯を扱いください」 『愛されることを恐れないで』がテーマの小説です。 ※作品説明のセリフは、掲載のセリフを省略、若干変更しています。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

邪悪な魔術師の成れの果て

きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。 すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。 それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

【R18】超女尊男卑社会〜性欲逆転した未来で俺だけ前世の記憶を取り戻す〜

広東封建
ファンタジー
男子高校生の比留川 游助(ひるかわ ゆうすけ)は、ある日の学校帰りに交通事故に遭って童貞のまま死亡してしまう。 そして21XX年、游助は再び人間として生まれ変わるが、未来の男達は数が極端に減り性欲も失っていた。対する女達は性欲が異常に高まり、女達が支配する超・女尊男卑社会となっていた。 性欲の減退した男達はもれなく女の性奴隷として扱われ、幼い頃から性の調教を受けさせられる。 そんな社会に生まれ落ちた游助は、精通の日を境に前世の記憶を取り戻す。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます!

遥 かずら
ファンタジー
 ガチャスキルを持つアック・イスティは、倉庫番として生活をしていた。  しかし突如クビにされたうえ、町に訪れていたSランクパーティーたちによって、無理やり荷物持ちにされダンジョンへと連れて行かれてしまう。  勇者たちはガチャに必要な魔石を手に入れるため、ダンジョン最奥のワイバーンを倒し、ドロップした魔石でアックにガチャを引かせる。  しかしゴミアイテムばかりを出してしまったアックは、役立たずと罵倒され、勇者たちによって状態異常魔法をかけられた。  さらにはワイバーンを蘇生させ、アックを置き去りにしてしまう。  窮地に追い込まれたアックだったが、覚醒し、新たなガチャスキル【レア確定】を手に入れる。  ガチャで約束されたレアアイテム、武器、仲間を手に入れ、アックは富と力を得たことで好き勝手に生きて行くのだった。 【本編完結】【後日譚公開中】 ※ドリコムメディア大賞中間通過作品※

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

処理中です...