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第四章 メルザの里帰り
第四百五十二話 速さの先にある速さ ~ルーイズからルインへ、託されるもの~
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「それじゃ改めてお義父さん、第二ラウンドといきましょう」
「お義父さんじゃねェ! ルーイズ様と呼べェ! 紫電脚一閃!」
またも消えたような動きで目の前に現れ、強烈……ではない蹴りを放ってくる。
左腕で受け止める……が威力はないものの、腕が痺れた。これは……体内の電極をいじられた
のか?
凄い技だ。そして生身だったら……これ一発で終わりかねない正確な一撃。
「ほう。よく止めたじゃねーカ。目を使わない感覚の動き、慣れてきたカ?」
「いや、全然……蹴りなら上中下段で基本的に防ぐ場所決まってるから」
「……おめー、師匠にだけは恵まれたみてーだナ」
「その自覚はある。間違いなく恵まれたと思うぞ。そうじゃなきゃとっくに死んでる!」
今度はこちらからうって出る。ピアニーインパルスは打ち込むと大変な事になるので
そこを赤星で代用する動き。格闘術を使うのはかなり久しぶりだが……できないことはない。
赤いキラキラをまとう威力ある蹴り……。
「赤星蹴破!」
「なんだそりゃ、ふざけてる……ごはっ」
「かべ」
「プラスウォーラスの壁だ。悪いな、俺の力は俺一人だけじゃないんでね」
蹴りは当然避けられる。反撃に出るお義父さんを予測し、ウォーラスが壁を作っていた。
不意を突かれたお義父さんにヒットすると、大したダメージではないがよろける。
「やるじゃねーカ。おめー自身は劣りってカ。いいねぇ、好きだぜそういう自己犠牲はヨ。
やっぱりおめーに託すので間違いねーナ。
大分いてーけどいいナ? 避けずに受け止めるんだゼ」
「……ああ。もう、終わりなんだな」
「わりーナ。もっとおめーと遊んでたかったんだけどヨ。最後に一つだけ……いや、言いたくね……」
「死んじまったらもう、告げる事叶わないだろ。あんたの気持ちは受け止めるから」
「……けっ。わーったよ……娘を、メルザを、幸せにしてやってくレ。俺様がやれなかった分まデ」
「誓うよ。必ずあいつが笑って暮らせるように。俺の生涯をかけて。たとえこの身が
朽ち果てようとも」
「……ありがとヨ。そんじゃいくゼ! 速さの先にある速さダ。忘れるんじゃねーゼ!
紫電清霜……メイア。今行くゾ。メルザーーーーーーア! 愛してるゼーーー!」
お義父さんの文字通り全身全霊の技。紫色に輝く雷光となり、俺を貫き、そして俺は
激痛と共に地上へと戻された。
お義父さんの思いとともに。お義父さんの叫びとともに――――。
そして俺は、引きずり込まれた場所に戻っていた。直ぐ近くに膝をさすっているメルザがいた。
よかった……無事だった。
「ぐ……つー-……暫く動けそうにない。メルザ、燃斗を上空に撃って合図してもらえるか?」
「ルイン、ルイン! 無事だった! よかった……いててて。ちょっと待ってくれねーか」
「メルザ、木から飛び降りたのか? すりむいてるぞ……いてて」
「へへへ、昔みてーにうまくおりられねーけど、どうにかなったぜ。一体どこにいってたんだ?」
「聞いたら驚くぞ、多分。そうだな……ルーイズ。この言葉だけでもメルザには伝わるか」
「……あれ? 俺様、ルインに父ちゃんの名前、話したっけ?」
「いいや。直接本人に会ってきた。メルザの言う通り、ちゃんと殴られてきたよ」
「へ? 父ちゃんに? ほんとか!? 父ちゃん、どこだ?」
「大切なものだけ渡して、それで――――メルザの事を頼むって」
「……そっか。俺様には会えないよーな状態だったんだな。なぁルイン。俺様の父ちゃん、どーだった?」
「性格がメルザにそっくりだった。話し方とかも。やっぱ親子だな」
「そりゃそーだ。なんせ俺様の父ちゃんだからな! にはは!」
「なぁメルザ。ルーイズからの伝言だ。泣いてしまうかもしれないが、笑いながら
聞いてほしい。メルザ……愛してるぜ……ってさ」
「……ああ……俺様もお父ちゃんの事、大好きだった……よ」
無理してでも精一杯の笑顔を見せるメルザ。目に大粒の涙を抱え、一つ、一つとまたこぼれ落ちる。
それでも笑顔を浮かべながら、父親の気持ちに応えたメルザだった。
「お義父さんじゃねェ! ルーイズ様と呼べェ! 紫電脚一閃!」
またも消えたような動きで目の前に現れ、強烈……ではない蹴りを放ってくる。
左腕で受け止める……が威力はないものの、腕が痺れた。これは……体内の電極をいじられた
のか?
凄い技だ。そして生身だったら……これ一発で終わりかねない正確な一撃。
「ほう。よく止めたじゃねーカ。目を使わない感覚の動き、慣れてきたカ?」
「いや、全然……蹴りなら上中下段で基本的に防ぐ場所決まってるから」
「……おめー、師匠にだけは恵まれたみてーだナ」
「その自覚はある。間違いなく恵まれたと思うぞ。そうじゃなきゃとっくに死んでる!」
今度はこちらからうって出る。ピアニーインパルスは打ち込むと大変な事になるので
そこを赤星で代用する動き。格闘術を使うのはかなり久しぶりだが……できないことはない。
赤いキラキラをまとう威力ある蹴り……。
「赤星蹴破!」
「なんだそりゃ、ふざけてる……ごはっ」
「かべ」
「プラスウォーラスの壁だ。悪いな、俺の力は俺一人だけじゃないんでね」
蹴りは当然避けられる。反撃に出るお義父さんを予測し、ウォーラスが壁を作っていた。
不意を突かれたお義父さんにヒットすると、大したダメージではないがよろける。
「やるじゃねーカ。おめー自身は劣りってカ。いいねぇ、好きだぜそういう自己犠牲はヨ。
やっぱりおめーに託すので間違いねーナ。
大分いてーけどいいナ? 避けずに受け止めるんだゼ」
「……ああ。もう、終わりなんだな」
「わりーナ。もっとおめーと遊んでたかったんだけどヨ。最後に一つだけ……いや、言いたくね……」
「死んじまったらもう、告げる事叶わないだろ。あんたの気持ちは受け止めるから」
「……けっ。わーったよ……娘を、メルザを、幸せにしてやってくレ。俺様がやれなかった分まデ」
「誓うよ。必ずあいつが笑って暮らせるように。俺の生涯をかけて。たとえこの身が
朽ち果てようとも」
「……ありがとヨ。そんじゃいくゼ! 速さの先にある速さダ。忘れるんじゃねーゼ!
紫電清霜……メイア。今行くゾ。メルザーーーーーーア! 愛してるゼーーー!」
お義父さんの文字通り全身全霊の技。紫色に輝く雷光となり、俺を貫き、そして俺は
激痛と共に地上へと戻された。
お義父さんの思いとともに。お義父さんの叫びとともに――――。
そして俺は、引きずり込まれた場所に戻っていた。直ぐ近くに膝をさすっているメルザがいた。
よかった……無事だった。
「ぐ……つー-……暫く動けそうにない。メルザ、燃斗を上空に撃って合図してもらえるか?」
「ルイン、ルイン! 無事だった! よかった……いててて。ちょっと待ってくれねーか」
「メルザ、木から飛び降りたのか? すりむいてるぞ……いてて」
「へへへ、昔みてーにうまくおりられねーけど、どうにかなったぜ。一体どこにいってたんだ?」
「聞いたら驚くぞ、多分。そうだな……ルーイズ。この言葉だけでもメルザには伝わるか」
「……あれ? 俺様、ルインに父ちゃんの名前、話したっけ?」
「いいや。直接本人に会ってきた。メルザの言う通り、ちゃんと殴られてきたよ」
「へ? 父ちゃんに? ほんとか!? 父ちゃん、どこだ?」
「大切なものだけ渡して、それで――――メルザの事を頼むって」
「……そっか。俺様には会えないよーな状態だったんだな。なぁルイン。俺様の父ちゃん、どーだった?」
「性格がメルザにそっくりだった。話し方とかも。やっぱ親子だな」
「そりゃそーだ。なんせ俺様の父ちゃんだからな! にはは!」
「なぁメルザ。ルーイズからの伝言だ。泣いてしまうかもしれないが、笑いながら
聞いてほしい。メルザ……愛してるぜ……ってさ」
「……ああ……俺様もお父ちゃんの事、大好きだった……よ」
無理してでも精一杯の笑顔を見せるメルザ。目に大粒の涙を抱え、一つ、一つとまたこぼれ落ちる。
それでも笑顔を浮かべながら、父親の気持ちに応えたメルザだった。
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