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第四章 メルザの里帰り

第四百三十九話 墓に眠るは意味ではなく意思

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「どうやらここは安全のようだ。といってもレミには手の内をそれなりにみせている。
神の空間に対する細かな話はしていないけど、あいつなら予測はつくだろう」
「おい! そのレミという女は本当にいいのか? やっぱり薄情な奴だったのか」
「落ち着いてくださいスピアさん。あの方は……少々危険な香りのする女性です」
「あいつは敵……かもしれない。それにスピア。お前もまだ信用したわけではないから話せない事も多い。
すまないとは思う。けどそれに関しては、お互い様か」
「なぁなぁルイン。俺様にはあいつ、そんなに悪そーなやつには見えなかったぞ? なんか寂しそうっていうかさ」
「……わからない。だが……あの時の闘技大会にいたやつとなると警戒は必要。それにだ……今の俺たちは
戦力がバラバラ。常闇のカイナに目をつけられるわけにはいかない。思ったより時間を食っちまったし
早めにメルザの故郷へ行こうと思っている」
「なぁなぁ、その前に……こいつ喰っていいか?」
「ここで食べるかべ!?」
「いやーちゃんと調理しないと食べられないと……」
「ん? 竜人ならこれくらい普通に食うぞ」
「うまそーだよな! スピアにはわかるか」
「……おかしいな。ここにいるのはどちらも女性だよな。なんで男の俺たちのほうが躊躇しているんだ」
「女性は強いですからね……私は少々、遠慮しましょうか。それとルインさん。言われていた通り
レミさんを観察していましたが、何者かと連絡を取っていたのは間違いありません」
「そうか……そうするとバルバロッサへ戻るのは危険か。帰り道のルートは考えないとな。
セーレはこれだけの人数を乗せて飛ぶには向かないし。弱ったな」
「……」
「そんなの……言ってから考えりゃいいじゃねーか。それよりほら、肉焼いたぞ? 食ーか? 思ったより
かてー肉だった!」
「あぢ、あぢぢぢ……肉を押し付けるな、メルザ!」
「メルザさんは無邪気というよりその……色々と考えず試してみる方……ですね」
「我が主ながら、大した食欲だ、まったく」
「……回復したら、乗せてやってもいい」
「ん? 何か言ったかスピア」
「なんでもない! うるさい! 気安く話しかけるな!」
「あ、ああ。悪かった。ジェネスト、すまないが村についたらスピアと先生を頼めるか?
レウスさんとウォーラスにもお願いしたいんだが」
「墓でも立てるつもりですか。人の考える事はあまりよくわかりませんね」
「墓ってのは亡くなった人のために立てるものじゃない。生きてる人のために立てるものだ。
この地にて、その者が眠る誓いの場。思いを、感謝を、願いを込めて立てる。そこにあるのは意味ではなく
意思だ。覚えておくといい」
「……私には関係の無い事です。ディーン様は死んだわけじゃない。墓なんて、必要ないですから」
「ディーンだけじゃないだろ。お前にひっかかっている何かは」
「っ! なぜあなたがそんなことを!」
「さぁな。お前に最初対峙した時に感じたものは、怒り、憎しみ……それに悲しみだったからかな。
ウォーラス、やはり今日はここで一泊しようと思うが……どうだ? 隠れられそうか? 俺たち」
「できるカベ。ちょっと大変だから、ルインの氷術を借りたいカベ」
「借りる? そんなこともできるのか?」
「氷の壁をうまく操ってみるカベ」

 ウォーラスに言われた通り氷の壁を展開すると……形を変えつつ地面の材質と混ぜ合わせて、局所的に
透き通るカベを構築した。外から見える部分にうまくカモフラージュを乗せ、こちらからは見えるが外からは見えない空間を作った。神の空間も展開済みだ。

「すげー! 隠れ家みたくなったぞ。ウォーラスって本当にすげーな! さすが俺様の子分の子分だ! 
にはは!」
「劣等種の魔族だと思っていた。これは確かに便利だな……」
「そういう差別用語はやめてくれ、スピア。大切な仲間なんだ」
「……悪かったよ」

 案外素直だな。たまに切れてちょっと怖いけど、セフィアさんに比べたら可愛いものだ。
 セフィアさん、今頃どうしてるかなぁ。まさか口の悪さが治ってたりして……ははは、あるわけないか。
 
 ……神兵との修行に向かった一行を、ルインは上を向いて思い老けっていた。
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