479 / 1,085
第四章 メルザの里帰り
第四百二十一話 謎の傭兵団【ハルクマーセナリーズ】
しおりを挟む
「にしても魔物の数が多いな。ジェネスト、平気か?」
「誰にいってるつもりですか? 私は人形ですよ。疲れなどしません」
「スタミナ無尽蔵は違う意味でメルザ級の化け物だな……」
「化け物ですか。そうですね……そうかもしれません」
「ああ悪い意味で言ったんじゃない。強いという意味で言ったんだ」
「別に落ち込んでいるわけではありません。むしろこの体だからこそ
ディーン様に信頼して頂いて、ティソーナを守っていたのですから」
俺が出会った中でも三本の指に入る強敵だったジェネスト。
未だに上手くコミュニケーションが取れている気がしないが……こいつに本当の意味で
報いてやるには、絶対にブレディーが必要だな。
「ストップだジェネスト! 前方の気配がおかしい。それにコウテイとアデリーが
そろそろ限界だ」
「わかりました。一度休憩できる場所を探しましょう」
「コウテイ、アデリー。お疲れ様。かなり深いところまで来れたよ」
「ウェーイ!」
「ウェィ!」
二匹とも手を振りながら帰るのではなく、やはりクリムゾンのようなポーズをとって
返っていく。あれにすっかりはまってしまったようだ。手を振るの、可愛かったんだけどな。
「ルイン。休めるところなら造るかべ。ちょっと待ってて欲しいかべ」
「ええ? 造るってどうやって?」
「ここの壁を動かすかべ。よいしょっかべ」
片方の悪魔のような腕を、土の壁に突き刺すウォーラス。すると柔らかくなった
粘土のように壁が押し広げられていき、どんどん広がっていく。
凄いけど凄い語尾が変だ。どうやって軌道修正しよう。
……人が二十人程入れるゆとりあるスペースがあっという間に構築されてしまった。
さらに入口を狭くして見つけにくくする。
「できたかべ。レウスさんに頼んで隠せそうな草を取ってきてもらったかべ」
「ここなら襲われてもすぐに対処できそうですね」
「いや、襲われないようにできる。だが外から認識されてしまうから
どうするか迷っていたんだ。ウォーラス。もう少しここを広げられるか? ……そう、それくらいでいい。
メルザ、神の空間を」
「ああ。久しぶりだな、これ使うの」
神の空間を使用すると、小スペースの部屋が展開される。
当然レミもシュイオン先生も呆れ顔だ。無理もない。
「便利な道具ですね……これは急患にも使えそうだ……」
「こんなのずるいですよー! 一度でも味わったらもうルインさんたち以外と行動できないです!」
「そう言われてもな……確かに便利だが、使用に制限がないわけじゃない。
幻想級のアーティファクトから先は制限がない。特に……俺たちの仲間のアルカーンさんにかかれば……」
「何か、凄い方がまだいらっしゃるんですね……お会いしたいような、したくないような……」
「うーん。リルの兄ちゃんは変わってるからなー。俺様もちょっと苦手かも」
「時計さえ渡しておけば平気な人だから。ここで小休憩して……む、足音が聞こえる。
静かに」
ザッザッと複数の足音が聞こえる。魔物の足音じゃない。人が歩く音だ。
違いは明白。魔物は靴を履いていないが、人は基本靴を履いている。
しかも歩く音からしてそれなりの重量がある。
こちらに気付いていない事だけは確かだ。
「にしてもよぉハルク。何かすげー依頼少なかったよな。普段はもっとちょろい依頼も
あるってのに、全部受注されてたし」
「文句言うなレシェ。依頼が増えすぎてたんだ。減ってよかったじゃないか。
どっかの傭兵団が大量に受けたって話だ。少しは魔物の数も減って、活動しやすくなるだろ」
「でもおかしいのよね。どこの団が受けたか非公開になってたじゃない。あんなのおかしいわよ」
「お前もそう思うかノーコ。聞いた話じゃ死流七支のいる団が復活したって話だぜ」
「まじ? 超アツイ情報じゃない、それ。ライデンの懸賞金手に入れたら一生遊んで暮らせるわよ?」
「そいつらが本当に死流七支を抱えてるかってのも怪しい情報だろ。だいたいなんで自分らより
名前が知られていないやつの下につくんだ? そんな傭兵いるわけないだろ」
「確かにー。でも本当にいたら捕まえて、尋問すればいいんじゃない?」
「傭兵団同士のいざこざはご法度だろう。どんな能力者かもわからない。危険だ」
「だからー。私の術でね。それにさぁ。外に連れ出しちゃえばわからないわよ」
「一攫千金を得る可能性がある団か。確かにあの金額は魅力だが……」
「おいおい、お前まで何言ってんだレシェ。俺たちは泣く子も黙る【ハルクマーセナリーズ】だぜ。
そんな汚い真似できるわけないだろ」
「だがよぉ……実入りが悪いんだよ、実入りが……ちっ。あんなところにラプトーンがいやがる。少し離れるぞ!」
……それから暫くして、声が聞こえなくなった。
「……言ったか。随分とよろしくない話をしていたな」
「あいつら何だったんだ? 傭兵団なのか?」
「ハルクマーセナリーズです。この辺りで活動する小規模の傭兵団ですね。今のは団長と
副団長たちです。私も見た事は無いですけど、受付で団名などは覚えてますから!」
「俺たちを狙ってる……って認識でいいのかな」
「……殺りますか?」
「いや殺らないって! 物騒だから構えるな。しかしウォーラスのお陰で本当に
助かったよ。感謝する」
「少しでも役に立ててうれしいかべ。よかったかべ」
しばらく休んだ俺は、ゴマキチを造り付近を探らせた。一番見つかりにくいのがゴマキチだからだ。
ルーニーがいれば上空から気付かれずにあいつらの位置を特定できるんだが。
しばらくして戻って来たゴマキチの様子からみて、平気そうだったのでメルザたちを
ここに残し、単独で偵察に向かう事にした。
「誰にいってるつもりですか? 私は人形ですよ。疲れなどしません」
「スタミナ無尽蔵は違う意味でメルザ級の化け物だな……」
「化け物ですか。そうですね……そうかもしれません」
「ああ悪い意味で言ったんじゃない。強いという意味で言ったんだ」
「別に落ち込んでいるわけではありません。むしろこの体だからこそ
ディーン様に信頼して頂いて、ティソーナを守っていたのですから」
俺が出会った中でも三本の指に入る強敵だったジェネスト。
未だに上手くコミュニケーションが取れている気がしないが……こいつに本当の意味で
報いてやるには、絶対にブレディーが必要だな。
「ストップだジェネスト! 前方の気配がおかしい。それにコウテイとアデリーが
そろそろ限界だ」
「わかりました。一度休憩できる場所を探しましょう」
「コウテイ、アデリー。お疲れ様。かなり深いところまで来れたよ」
「ウェーイ!」
「ウェィ!」
二匹とも手を振りながら帰るのではなく、やはりクリムゾンのようなポーズをとって
返っていく。あれにすっかりはまってしまったようだ。手を振るの、可愛かったんだけどな。
「ルイン。休めるところなら造るかべ。ちょっと待ってて欲しいかべ」
「ええ? 造るってどうやって?」
「ここの壁を動かすかべ。よいしょっかべ」
片方の悪魔のような腕を、土の壁に突き刺すウォーラス。すると柔らかくなった
粘土のように壁が押し広げられていき、どんどん広がっていく。
凄いけど凄い語尾が変だ。どうやって軌道修正しよう。
……人が二十人程入れるゆとりあるスペースがあっという間に構築されてしまった。
さらに入口を狭くして見つけにくくする。
「できたかべ。レウスさんに頼んで隠せそうな草を取ってきてもらったかべ」
「ここなら襲われてもすぐに対処できそうですね」
「いや、襲われないようにできる。だが外から認識されてしまうから
どうするか迷っていたんだ。ウォーラス。もう少しここを広げられるか? ……そう、それくらいでいい。
メルザ、神の空間を」
「ああ。久しぶりだな、これ使うの」
神の空間を使用すると、小スペースの部屋が展開される。
当然レミもシュイオン先生も呆れ顔だ。無理もない。
「便利な道具ですね……これは急患にも使えそうだ……」
「こんなのずるいですよー! 一度でも味わったらもうルインさんたち以外と行動できないです!」
「そう言われてもな……確かに便利だが、使用に制限がないわけじゃない。
幻想級のアーティファクトから先は制限がない。特に……俺たちの仲間のアルカーンさんにかかれば……」
「何か、凄い方がまだいらっしゃるんですね……お会いしたいような、したくないような……」
「うーん。リルの兄ちゃんは変わってるからなー。俺様もちょっと苦手かも」
「時計さえ渡しておけば平気な人だから。ここで小休憩して……む、足音が聞こえる。
静かに」
ザッザッと複数の足音が聞こえる。魔物の足音じゃない。人が歩く音だ。
違いは明白。魔物は靴を履いていないが、人は基本靴を履いている。
しかも歩く音からしてそれなりの重量がある。
こちらに気付いていない事だけは確かだ。
「にしてもよぉハルク。何かすげー依頼少なかったよな。普段はもっとちょろい依頼も
あるってのに、全部受注されてたし」
「文句言うなレシェ。依頼が増えすぎてたんだ。減ってよかったじゃないか。
どっかの傭兵団が大量に受けたって話だ。少しは魔物の数も減って、活動しやすくなるだろ」
「でもおかしいのよね。どこの団が受けたか非公開になってたじゃない。あんなのおかしいわよ」
「お前もそう思うかノーコ。聞いた話じゃ死流七支のいる団が復活したって話だぜ」
「まじ? 超アツイ情報じゃない、それ。ライデンの懸賞金手に入れたら一生遊んで暮らせるわよ?」
「そいつらが本当に死流七支を抱えてるかってのも怪しい情報だろ。だいたいなんで自分らより
名前が知られていないやつの下につくんだ? そんな傭兵いるわけないだろ」
「確かにー。でも本当にいたら捕まえて、尋問すればいいんじゃない?」
「傭兵団同士のいざこざはご法度だろう。どんな能力者かもわからない。危険だ」
「だからー。私の術でね。それにさぁ。外に連れ出しちゃえばわからないわよ」
「一攫千金を得る可能性がある団か。確かにあの金額は魅力だが……」
「おいおい、お前まで何言ってんだレシェ。俺たちは泣く子も黙る【ハルクマーセナリーズ】だぜ。
そんな汚い真似できるわけないだろ」
「だがよぉ……実入りが悪いんだよ、実入りが……ちっ。あんなところにラプトーンがいやがる。少し離れるぞ!」
……それから暫くして、声が聞こえなくなった。
「……言ったか。随分とよろしくない話をしていたな」
「あいつら何だったんだ? 傭兵団なのか?」
「ハルクマーセナリーズです。この辺りで活動する小規模の傭兵団ですね。今のは団長と
副団長たちです。私も見た事は無いですけど、受付で団名などは覚えてますから!」
「俺たちを狙ってる……って認識でいいのかな」
「……殺りますか?」
「いや殺らないって! 物騒だから構えるな。しかしウォーラスのお陰で本当に
助かったよ。感謝する」
「少しでも役に立ててうれしいかべ。よかったかべ」
しばらく休んだ俺は、ゴマキチを造り付近を探らせた。一番見つかりにくいのがゴマキチだからだ。
ルーニーがいれば上空から気付かれずにあいつらの位置を特定できるんだが。
しばらくして戻って来たゴマキチの様子からみて、平気そうだったのでメルザたちを
ここに残し、単独で偵察に向かう事にした。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる