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第四章 メルザの里帰り

第四百十五話 ロブロードを教える

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「ロブ……ロード? それってなぁに? 遊びなの? 僕、目が見えないから何も出来ないよ」
「レェン。君の目が見えなくなったのはいつからだ? 生まれつきか?」
「ううん。五年前までは見えてたんだ。でも五年前に……」
「そうか。後天性……俺もいうなれば後天性のようなもんだったからな。
だがこの遊びは目が見えていなくてもできるようにするつもりだ。俺の世界じゃ当たり前に行われて
いた読みながら行う将棋など、ハンデをハンデとしない手法はある。特にこの世界には術という
とんでもない手法がな……」
「僕でもできるの? その遊び」
「ああ。しかもこの遊びは……収集欲をそそる遊びになる。色々なものを集めたくなるように作る。
つまりこの遊びが流行る前にレェンがこの遊びを極めていれば……」
「レェンでも生活をしていける?」
「そうだ。だから兄弟で協力して極めて欲しい。この場所、このメンツでなら見せていいだろう。
神魔解放! レピュトの手甲よ、我が主神イネービュの名において命ず。
天地創造の力、ディミオルゴポティリガラス創造

 物質を具現化して創造する。飛んでもない術。これをレピュトの手甲から創造できるようにしてもらった。
 しかもこの能力だけではない。まだまだ他に与えられた能力はあるが今は割愛しよう。

「な……何が。急に手が現れて、何かが……」
「このような力を与えられたのですか? まったく、あなたはどれほど気に入られたのですか」
「すげー! ルイン、神様みてーだ」
「驚きました。神の奇跡としか言い換えようがない。私はとんでもない方と一緒にいるのかもしれません」
「確かにとんでもない力だ。俺にもまだ、原理に関しては訳が分からないよ。今後解明していくつもりだ。
それよりレェン。これ、触ってみな」
「う、うん。わぁ。ツルツルしてて気持ちい……あれ? 何か掘られている? これは……うーん。剣? 曲がってる?」
「正解だ。俺の予想通りだ。レェン。それをアルンに渡して。アルンも同じように手で触って、何かわかるか?」
「えーと……ダメです。全然わからない。レェン、これ触っただけでわかるのか?」
「う、うん。それくらいしか楽しみがなかったから」
「五感ってのは損なわれると、他の感覚で補おうとする能力が強くなる。つまり視覚が失われれば、他の感覚……特に俺たちみたいな中途で失った者は触覚が跳ね上がる。先天性の失明者はもっと凄い。
空間把握能力が引き上げられ、音の反響などで空気の流れまで読む」
「それは本当ですか!? 確かに幾人かの視覚障がいの片を拝見しましたが、そこまでは気づきませんでした」
「実際目の当たりにしてきた。その方は開いている扉を何も使わず普通に曲がって入っていた。
見えていると錯覚するほどにだ」
「ぼ、僕も練習すれば色々出来るようになるの? 本当に?」
「なる。断言してやる。人間ってのは可能性の塊だ。レェンはこれからロブロードを兄と一緒に
楽しみ、そして兄と一緒に色々な景品を手にしていくといい。ルシアさん、頼みがあるんだが」
「聞いてやるよ。今はセフィアもいねぇしな。その代わり……」
「わかってますよ。この町でセフィアさんの土産でも買って、不要になったものをもらっておきますから」
「いやっふぅ!」
「レェンとアルン二人をルーンの町へ。町に着いたら三人娘あいつらにちゃんと面倒見るのと、ロブロードの現状ルールを教えるよう
伝えてもらっていいですか? レェンがこの人が一番といった人に一番の土産を買っていくと」
「任せておきな。元々こいつら拾ってきたのは俺だ。ちゃんと俺たちルクス傭兵団も手をかしてやる」
「頼みます。それとエーナに言伝を……」
「ん? ああ。そうか。確かに伝えておく。俺もロブロードの練習すっかな。ガキ共に負けてられねえし」

 一通りルシアさんにお願いし、レェンとアルンを見送る事にした。
 ずっとふさぎ込むように下を向いているレェンはもういない。
 今は上を向き、これから訪れる新しい町や、自分の出来る事に胸を膨らませている。
 そんな素晴らしい表情を見せてくれた。
 隣にいるアルンは嬉しくて泣いていた。いい兄弟だ。

「なぁなぁルイン。やっぱルインはさ。誰にでも優しいよな」
「何言ってんだ。誰にでもは優しくない。お前に降りかかるような火の粉は鬼の形相で振り払っているぞ」
「なっ! きゅ、急にそんなこと言うなんてずるいぜ」
「事実だからな。俺の中心はあくまでメルザ、お前だけだよ」

 真っ赤になってるメルザを見つつ、冷ややかな視線を感じたので全員に振り向く。

「さて! 出発は明日にしよう。今日は買い物と支度。明日からそれなりの冒険になるぞ!」
『おー!』

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