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第四章 メルザの里帰り

第四百十三話 再会と旅の同行者

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 レンズへと向かった俺たち一行。なんだかんだで大所帯に。
 レンズ前あたりにきて、エレギーが立ち止まった。

「弟よ。この付近の宿にわての仲間がいるはず。少しあって来るからここで一度お別れだ。
だがすぐに戻って来る!」
「あ、ああ。ちゃんとレンズにいるから早く行ってこい。それと、何度も言ってるけど弟じゃないから! 
ルインって呼んでくれって!」
「ではな!弟ルインよ!」
「だめだこりゃ。しかし仲間か。またとんでもないのが来そうだな……」
「なぁなぁ。あいつも俺様の里まで一緒に来るのか?」
「どうかな。エレギーにはエレギーのやることがあるかもしれない。まずはレンズに行って……」

 と思っていたら、レンズの扉が開き、見知った人物がでてきた。

「あれ? ルシアさん? なんでこんな場所に」
「お、ルインじゃねえか。ちょうどいいとこにいやがった! 今依頼を出したとこだ。
おめぇが既に旅に出た後だったからよ。ガキ二人を預けれる場所がなくてな。
俺たちの根城に追いとくわけにもいかねえし、ルーンの町でならと相談したかったとこだ」
「ガキ? ルシアさんって子供がいたんですか?」

 ボコッと殴られる。え? えー? なんで殴られたの、俺。

「ばかやろう! 俺はセフィア一筋だぞ! ガキなんているわけねえだろ!」
「え? あの、はい。そうでしたか。それでそのガキってのは?」
「今は俺の団員が見てる。片方は……目が不自由だ」
「っ! そうですか……ひとまずルーンの町に入る許可だけでも出しましょうか。
信用は出来そうな子たちですか?」
「問題ねえだろう。なんかあったら俺が対処する。お前らは何でここに?」
「これからメルザの里帰りなんです。その前にレンズで近くの依頼を受けようかなって。
道中はセーレで行けば早いと思うんですけど」
「そうか。悪ぃな送ってやれなくてよ。こっちも大変なんだ。モンスターの大群が……おっとこれは
無しだ。危ねぇ危ねぇ。まぁ色々あってこれからあちこち飛び回らないといけねぇ。
ひとまずガキ共を連れて戻る。少しレンズで待っててくれるか」
「ええ。依頼を受けた後エレギーとも一度合流しますから。また後程」

 ツヴァイに乗り勢いよく飛翔して消えるルシアさん。ルクス傭兵団は本当に活発だ。
 ルシアさんが活発だから当然か。
 しかし目の不自由な子供……か。自分以外の視覚不自由者と会う機会は少ない。
 どう接してやればいいか……と考えている場合じゃなかった。

 レンズの中に入ると、受付のレミさんが飛んでくる。そんな勢いよく来なくても……。

「待ってました! 依頼がもうたまりにたまっていて! パンクしそうだったんです! 
これ……が、よいしょ。依頼です!」

 バァンと依頼の束を俺の両手に押し付けてくる。重っ! この子、腕力半端じゃないな。
 それに……「あの! 両手一杯の依頼書、渡されても俺見えないんですけど!?」

「あれ? ルインさんはご職業がソードアイということでしたから、何でも透かして見えるのかと。
だから私の服の中身も……キャー! エッチ!」
「ソードアイはそんな職業じゃありませんけど!? ……おいメルザ、ジェネストも! そんな目で
見るな!」

 何考えてるんだこの受付はまったく! 世の中全部透けて見えたら気持ち悪いわ! 
 都合よく服だけ透けるとかいうエロ能力なんて、あっても喜ぶやつは五万といるだろうが
そうじゃなくてだな。

「ジェネスト、悪いがちょっと持ってくれるか」
「わかりました変態さん」
「おい! 変態って言うな!」
「ルインは変態なのか? 変形とかしてたしな! 俺様も変形してみたいぞ!」
「メルザ……」

 俺の妻は比較的色々ねじ曲がっていて助かるようだ。相性は最高にいいらしい。

「やれやれ……えーとマステル草の採取、野盗の討伐、ジルコニア鉱石の採掘、ドラグア山脈調査……
不死者の討伐? どれもなかなか難易度が高そうだぞ」
「はい! 私もついていくので!」
「はい?」
「はい! 私もついていくので!」
「……はい?」
「ですから! レンズの一員として私もついていくので!」
「何でそうなるんだ! あんたただの受付の人だろ!」
「違いますよ? 私、幻妖団メルに憧れてたので、既に団員希望願いを出してるんです!」
「レンズってそんな機能まであるのか……そーいや仕組みを最初の頃にさらっと聞いた気がするけど……
あの時はフェドラートさんもいたからなぁ」
「ん? この姉ちゃん連れてくのか? またルインが女ひっかけてきたって言われるぞ?」
「それを妻であるメルザが言うのか……」
「えーー!? 奥様だったんですか! か、可愛い……ルインさんはこういう方が好み……と」
「おい! それより本気でついてくるつもりか? さすがに信用も信頼もできないからうちの団員に
加えてやることは出来ないと思うんだが」
「それを働きで証明するためについていくんじゃないですか! もうこんな町で仕事しているの、飽き飽き
してるんです! ルインさんたちの活動拠点でレンズの仕事をさせてください! 活動拠点はどこですか?」
「……トリノポート大陸だけど」
「亜人や獣人が多く住まう楽しい大陸! 行ってみたい……もふもふ……」
「もふもふ目当てか! はぁ……どうするメルザ」
「ん? いいんじゃねーか? 面白そうなねーちゃんだしよ。俺様はなんせ
ルインの妻だからな! にはは」
「あ、ああ。メルザがそういうなら……というよりそうとしか言わないよな。メルザなら……」

 懸念点はあるが、断っても追いかけてきそうだ。知の果てまでも。レンズ、ルーンの町支店か。
それも悪くはないかもな。
 だがレンズ自体が信用できるかどうかは別の話だろう。ある意味二重スパイ的な立ち位置の人物は
いてくれると助かるかもしれない。

「んじゃレミさんだっけ。ついてくるのは構わないが……嫌になったら……」
「やったー! 主任ーー! 主任ーー! 巨かもっちゃいました! ここ、退職しますー!」
「何ぃー! おいおい本当に許可貰ったのか? 冗談だろう? 普通連れてくか?」
「いやー、我が主は寛大というか考え無しというかなんというか」

 先日一緒に飲んだアビオラさんは、頭を抱えている。いや、俺が同じ立場でも頭を抱えるか。

「この子は思い込みが激しくてな。一度決めたらそうは曲げられん。よろしく頼む」
「え、ええ。とりあえずまずはこの依頼の同行を許可しただけなんですが……」
「そいつはあれだ。建前ってやつだろう。どこまでもついていくぞきっと」
「ですよね。俺もそんな気がします。何度か経験があるので……はぁ。この手の女性と遭遇する
確率、高すぎるわ……」

 依頼書を片っ端から受注済みにしていくレミさん。
 困った旅の同行者がまた一人、増えたのであった。
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