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第四章 メルザの里帰り
第四百十一話 早い目覚め
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――――きろ。
―――――起きろ。
―――――――起きろ!
「はっ! メルザ……か?」
「すーっ……すぴーっ」
「……寝てる。すぴーって寝てるわ……」
まだ朝早い時間だったのか、周りは静かだ。
何かの声で起こされた気がしたんだが……あれ、レピュトの手甲から反応?
「おかしいな。そんな機能ついてるのか? 神魔解放!」
「む? どうしました? まだ寝ていた方がよいのではないですか」
「なんか声が……あれ、もしかしてハーヴァルさんか? 少し外に出る」
「わかりました」
取り急ぎジェネストにメルザを任せて外に出た。
日がまだ昇ったばかり。朝焼けと赤い煉瓦で素晴らしい色合いだ。
「ハーヴァルさん、聞こえます? 何でレピュトの手甲から声が」
「お、聞こえたか。もしかして寝てたか?」
「はい、少し大変なことがありまして……そちらはどうですか?」
「こっちには何というか、イビンも来ててな。それなりに過激な日々が始まりそうだ。
セフィアが静かになっててくれるから助かってるが」
「へぇ。そうなんですか。それでようけ……」
「おい! お前のところにハクレイって名乗った爺さん来ただろう! とんでもないのを向かわせちまった。わりぃ! まさかよりによってハークレインシフォンが動くとは。いいか良くきけ。
お前さんがまだ行った事のない大陸、シフティス大陸は、貴族と魔族と奴隷が入り乱れる構成だ。
その中でも三大英雄と三大絶魔王。これらが勢力を争う大陸。その中において絶魔王の家臣にあたる
一人。魔王ハークレインシフォンが……」
「ちょ、ちょっと待ってくださいハーヴァルさん。あの爺さんが……魔王?さらに上に絶魔王がいると?」
「そうだ。今はそこよりも……あの爺さん、どんな様子だった?」
「ホイホイとかふざけた名前を馬につけて、全身白甲冑でハーヴァルさんの親御さんの不幸を伝えに……
あと気に入ったから余生をルーンの町で過ごすと……」
「なんだと? 俺の親の不幸は聞いた。だが町に住むなんて話は聞いてないぞ! 参ったな。こりゃ
お前さんと一度合流しないとならん。シフティス大陸に向かうのはもう少し時間がかかるよな。
ここでの修行、一段落したらシフティス大陸で合流しよう。この連絡手段があれば合流は容易だと思う」
「わ、わかりました。しかしあの爺さんが魔王ねぇ……強いんですか?」
「……強いなんてもんじゃない。俺やベルディスでも手が出ない程だ」
「師匠でも!? 人は見かけによらないもんだ……いや、人じゃなくて魔王か」
「三大英雄……つまり勇者以外にも覚者、選定者、秀者など実力者が揃っている。その辺はまぁまた合流
したらでいい。ひとまず伝えたぞ! まぁ害はない爺さんだ。戦いとかは、挑むんじゃないぞ」
「え、ええ。私からは挑みませんよ。そんな暇ないですし。それじゃハーヴァルさんも気を付けて!」
「ああ、お互いに気苦労が絶えない身だが、頑張ろう」
ハーヴァルさんとの連絡を終え、考え込む。うーむあの爺さんが魔王か……確かに似合うといえば
似合う。しかし実力はそこまで感じられなかった……ということは変身タイプだろう。
「魔王……魔王か。そういえば魔族的な形態になったはみたものの、利用方法などがさっぱりわからない。
炎を操ったり一撃が強力なカタストロフィなんて使えはしているが、もっと専門的に行使する方法、聞いて
みるか」
「ルイン。メルザが起きましたよ」
「あ、すぐ行く。ありがとうジェネスト」
「……少し話が聞こえました。魔王……ですか」
「何か知っているのか? ライデ……じゃなかったジェネスト」
「それよりも今は主の許へ向かうべきでは?」
「ごもっともだ」
急ぎ起きたメルザの許へと向かった。あー、これは……あかんやつだ。
「ふあぁ……うーん」
「メルザさんの一番好きなものはなーーんだ」
「……すっぱむぅ……」
「ではメルザさんの二番目に好きなものはなーーーんだ」
「……肉ぅ……」
「それでは、メルザさんの三番目に好きなものはなーーんだ」
「……すぴー……」
「座ったまま寝るな! おーい! 残念ながら好きなものランクにランクインしなかったルインですよ!」
「……すぴー……」
周りから少し笑い声が聞こえる。泊って行ったのは俺たちだけ。他の治療していたものはいないし
ここは俺たちの貸し切り状態だ。この町ではほぼ治療を受けにくるものもいない。そして先生はおくて寝てる。
「……この笑い声は、ウォーラスか。調子は? 元気になったか?」
「ああ。ルインおはようカベ。元気になったカベ。言葉もかなり覚えたカベ」
「……おい、その語尾。どうした……」
「これはセーレに言われたカベ。仲間同士みんな特長があるから、君の場合はその外見ぽさをより強調
すると慕われると言われたカベ」
「だからってなんでカベだよ! 妖怪ぬりかべもびっくりだよ!」
「ウォーは妖怪じゃない。魔族だカベ」
「うぐっ。しまった……そもそもレウスさんとセーレが真っ先に話すとヤバイって事、想定してなかった」
「どちらもとても面白くて素敵な方だったカベ。お友達なんてできると思わなかったカベ」
「舌を噛みそうな喋り方だが……はぁ、まぁいいか。ウォーラスはうちのメンバーとしてはかなり真面目
で真っすぐなタイプかな。ぶっ飛んでる奴らが多いけど、楽しくやっていってくれると助かる」
「嬉しいカベ。他のみんなにはあの綺麗な仮面の人も含まれるカベ?」
「ジェネストの事か。そうだな。あいつは唯一、俺が無意識で取り込んでしまった相手だ」
「きっと気にしてないカベ。この中より居心地のいい場所、そうそうないカベ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。さて、レンズに向かうにはまだ早いが、明日からは忙しくなる。
これからはあちこち点々として、かなり遠い大陸にも向かう事になる。一緒に来てくれるか?」
「もちろんカベ。ずっとカベの中だけでしか生活できなかったカベ。楽しみカベ」
こうしてウォーラスが正式に仲間になり、個性的なメンバーが増えた。
毒の治療や壁と一体化……なんて能力、そうそうお目にはかかれないだろうな。
―――――起きろ。
―――――――起きろ!
「はっ! メルザ……か?」
「すーっ……すぴーっ」
「……寝てる。すぴーって寝てるわ……」
まだ朝早い時間だったのか、周りは静かだ。
何かの声で起こされた気がしたんだが……あれ、レピュトの手甲から反応?
「おかしいな。そんな機能ついてるのか? 神魔解放!」
「む? どうしました? まだ寝ていた方がよいのではないですか」
「なんか声が……あれ、もしかしてハーヴァルさんか? 少し外に出る」
「わかりました」
取り急ぎジェネストにメルザを任せて外に出た。
日がまだ昇ったばかり。朝焼けと赤い煉瓦で素晴らしい色合いだ。
「ハーヴァルさん、聞こえます? 何でレピュトの手甲から声が」
「お、聞こえたか。もしかして寝てたか?」
「はい、少し大変なことがありまして……そちらはどうですか?」
「こっちには何というか、イビンも来ててな。それなりに過激な日々が始まりそうだ。
セフィアが静かになっててくれるから助かってるが」
「へぇ。そうなんですか。それでようけ……」
「おい! お前のところにハクレイって名乗った爺さん来ただろう! とんでもないのを向かわせちまった。わりぃ! まさかよりによってハークレインシフォンが動くとは。いいか良くきけ。
お前さんがまだ行った事のない大陸、シフティス大陸は、貴族と魔族と奴隷が入り乱れる構成だ。
その中でも三大英雄と三大絶魔王。これらが勢力を争う大陸。その中において絶魔王の家臣にあたる
一人。魔王ハークレインシフォンが……」
「ちょ、ちょっと待ってくださいハーヴァルさん。あの爺さんが……魔王?さらに上に絶魔王がいると?」
「そうだ。今はそこよりも……あの爺さん、どんな様子だった?」
「ホイホイとかふざけた名前を馬につけて、全身白甲冑でハーヴァルさんの親御さんの不幸を伝えに……
あと気に入ったから余生をルーンの町で過ごすと……」
「なんだと? 俺の親の不幸は聞いた。だが町に住むなんて話は聞いてないぞ! 参ったな。こりゃ
お前さんと一度合流しないとならん。シフティス大陸に向かうのはもう少し時間がかかるよな。
ここでの修行、一段落したらシフティス大陸で合流しよう。この連絡手段があれば合流は容易だと思う」
「わ、わかりました。しかしあの爺さんが魔王ねぇ……強いんですか?」
「……強いなんてもんじゃない。俺やベルディスでも手が出ない程だ」
「師匠でも!? 人は見かけによらないもんだ……いや、人じゃなくて魔王か」
「三大英雄……つまり勇者以外にも覚者、選定者、秀者など実力者が揃っている。その辺はまぁまた合流
したらでいい。ひとまず伝えたぞ! まぁ害はない爺さんだ。戦いとかは、挑むんじゃないぞ」
「え、ええ。私からは挑みませんよ。そんな暇ないですし。それじゃハーヴァルさんも気を付けて!」
「ああ、お互いに気苦労が絶えない身だが、頑張ろう」
ハーヴァルさんとの連絡を終え、考え込む。うーむあの爺さんが魔王か……確かに似合うといえば
似合う。しかし実力はそこまで感じられなかった……ということは変身タイプだろう。
「魔王……魔王か。そういえば魔族的な形態になったはみたものの、利用方法などがさっぱりわからない。
炎を操ったり一撃が強力なカタストロフィなんて使えはしているが、もっと専門的に行使する方法、聞いて
みるか」
「ルイン。メルザが起きましたよ」
「あ、すぐ行く。ありがとうジェネスト」
「……少し話が聞こえました。魔王……ですか」
「何か知っているのか? ライデ……じゃなかったジェネスト」
「それよりも今は主の許へ向かうべきでは?」
「ごもっともだ」
急ぎ起きたメルザの許へと向かった。あー、これは……あかんやつだ。
「ふあぁ……うーん」
「メルザさんの一番好きなものはなーーんだ」
「……すっぱむぅ……」
「ではメルザさんの二番目に好きなものはなーーーんだ」
「……肉ぅ……」
「それでは、メルザさんの三番目に好きなものはなーーんだ」
「……すぴー……」
「座ったまま寝るな! おーい! 残念ながら好きなものランクにランクインしなかったルインですよ!」
「……すぴー……」
周りから少し笑い声が聞こえる。泊って行ったのは俺たちだけ。他の治療していたものはいないし
ここは俺たちの貸し切り状態だ。この町ではほぼ治療を受けにくるものもいない。そして先生はおくて寝てる。
「……この笑い声は、ウォーラスか。調子は? 元気になったか?」
「ああ。ルインおはようカベ。元気になったカベ。言葉もかなり覚えたカベ」
「……おい、その語尾。どうした……」
「これはセーレに言われたカベ。仲間同士みんな特長があるから、君の場合はその外見ぽさをより強調
すると慕われると言われたカベ」
「だからってなんでカベだよ! 妖怪ぬりかべもびっくりだよ!」
「ウォーは妖怪じゃない。魔族だカベ」
「うぐっ。しまった……そもそもレウスさんとセーレが真っ先に話すとヤバイって事、想定してなかった」
「どちらもとても面白くて素敵な方だったカベ。お友達なんてできると思わなかったカベ」
「舌を噛みそうな喋り方だが……はぁ、まぁいいか。ウォーラスはうちのメンバーとしてはかなり真面目
で真っすぐなタイプかな。ぶっ飛んでる奴らが多いけど、楽しくやっていってくれると助かる」
「嬉しいカベ。他のみんなにはあの綺麗な仮面の人も含まれるカベ?」
「ジェネストの事か。そうだな。あいつは唯一、俺が無意識で取り込んでしまった相手だ」
「きっと気にしてないカベ。この中より居心地のいい場所、そうそうないカベ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。さて、レンズに向かうにはまだ早いが、明日からは忙しくなる。
これからはあちこち点々として、かなり遠い大陸にも向かう事になる。一緒に来てくれるか?」
「もちろんカベ。ずっとカベの中だけでしか生活できなかったカベ。楽しみカベ」
こうしてウォーラスが正式に仲間になり、個性的なメンバーが増えた。
毒の治療や壁と一体化……なんて能力、そうそうお目にはかかれないだろうな。
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