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第四章 メルザの里帰り

第四百四話 許可証を得て

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 少し待っていると、俺とジェネストは衣類を交換するよう指示を受ける。
 ごもっともだ。毒がしみ込んでいる可能性は十分考えられる。
 さすがにしっかりしているようだ。
 しばらく診断をしていた後、少々疲れたような顔で診察を終える。
 急いで着替えないと。

「すみませんね。後でお金を頂くことにはなってしまうけど」
「いいんだ。人の生き死にに関わる事。その前でお金なんて紙切れも同然だろうに」
「……そう言ってもらえると少し報われますね。我々の仕事は理解されないことが多いので」
「ジェネストはあっちで。俺はこっちで着替えてくる。着替え終わった布類はどうすればいい? 
それとアーティファクト関連の武具の洗浄は?」
「っ! それはアーティファクトなのですか? ……これは失礼しました。貴重な物でしょう。
水洗いなど行えれば助かりますが、水が……」
「海水でいいなら用意しなくてもいい。俺が出せる。外を使用したほうがいいだろう。
ジェネスト、着替え終わったら……おい、そのままこっちへくるな!」
「何を言っているのですか。私は人形。裸など」
「女形だろうが! 先生、すまないが柔らかい布があればジェネストに貸してやってくれ」
「ええ、ご用意しておいたのですが……しかし美しいですね。あれで本当に人形なのですか?」
「ああ。先生が驚くのはそこなんだな……よし、これでいいか。ジェネスト、こっちにきて
武器をだせ。洗浄する」
「むぅ。暗器ですか。これはまた……」
「悪い。説明は省かせてくれるか」
「いえ、いいのです。悪い方たちには見えませんし、それに彼は見たことがあります。
必死に仕事をする人物だったと認識していますから。ご紹介が遅れましたね。
私はシュイールウェニオン。皆にはシュニオンと呼ばれています。この町で医者を務めております」
「俺はルイン・ラインバウト。こっちがジェネスト。でかいのがエレギー。紅色の髪が
メルザ・ラインバウトだ。俺の……嫁なんだ」
「メル……」
「先生?」
「はっ! 失礼しました……奥さんでしたか。お綺麗な方ですね。お二人とも私の見立てで
十分解毒されていると判断しました。ただ、かなり強い……命に関わる毒だったようです。
解毒が遅ければ今頃はもう……」
「やっぱり……肝が冷えた。解毒薬とかそういった薬って、この町でも売ってたりするか? 
自分の準備のなさにほとほと呆れた所だよ」
「一応こちらの治癒院で作ってはいます。ですが……材料が全然足りないのです。この大陸に
素材となる物は多く自生しています。ですが……」
「ドラゴンか」
「はい。この大陸は文字通りドラゴンが多く住まうドラディニア大陸。材料の調達がなかなかままならない
のです。以前はルクス傭兵団という者たちが多く材料を集める仕事を引き受けてくれていたのですが……
現在は活動をこの辺りで殆ど行っていないのです」
「なんだって? それじゃ俺たちのせいじゃないか」
「む? どういう事か詳しくお聞かせ願えますか? ……いや、それより前に許可証を発行
してきてもらいましょう」
「わかった。兵士を待たすのも悪い。行ってくるよ」

 治癒院を出ると、兵士は煉瓦にもたれかかり待っていた。彼も少々疲れているように見える。
 人手不足なんだろう。この町の領主などは知らないが、あまりいい状態ではないようだ。
 うちのところもムーラさんやカカシが少々働き過ぎだ。無理させないようにしないとな。

「済まない待たせた。シュイールウェニオン先生から、許可をもらってきた。全部で幾らになる?」
「銀貨四枚だ。もし必要なら町の地図を渡すが」
「地図はいくらだ?」
「うん? 無料でいいぞ。手書きのもので悪いんだが。何か困ったことが合ったらいつでも門衛まで
来てくれ。それじゃな」
「あ、ああ。色々ありがとう……本当にいい町だな、ここは」

 円陣の都でうんざりしていた後に、すがすがしいこの町の雰囲気。ミリルが生まれた場所もこういう
場所なのだろうか。人々は平穏に見える。そしてそれを維持しているのが彼らのような兵士……か。

「やっぱり玄関ってのは大事なんだよな。さて、戻ろう」
「ヒヒン! ルイン、面白い奴を仲間にしたね! 僕が彼に言葉を教えていい? 片言だからさ。
聞きづらいでしょ?」
「俺も話したいぞ。教えていいか? いいよな? いいだろ? な?」
「ああ。二人共仲良くしてやってくれ。特にセーレは休んでいたから元気だろ? 色々教えて
やってほしい。ただし! ウォーラスが起きてから……な?」
『はーい』

 新しい仲間ウォーラス。まだよく知らないが、メルザの命を救ってくれた。
 どれだけ感謝しても、したりないくらいだ。俺にもっと、感知できるような能力さえあれば――――。
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