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第四章 メルザの里帰り

第三百九十六話 キンキドゥ洞窟入口

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 モンスターを退けながら北へ突き進んでいたルイン一行――――。

 ようやく洞窟入口付近に辿り着く。一体どれほどのモンスターを倒しながら着いたのか。

「ぜぇ、ぜぇ。着いたぞ! わてが通って来た道はここだ!」
「大丈夫かエレギー。少し休んでからいこう。お前、イビンより体力ないぞ、きっと」
「ベルディスししょーかベルローゼ先生に鍛えてもらったらいいんじゃねーか? あ……俺様、フェド
先生に会えないのかな……」
「どうかな。そうするとフェドラートさんも相当悲しむしフェルドナージュ様も悲しむだろう。
戻ったら一度妖魔側へ顔を出そう」
「何の話だ? 妖魔だと?」
「ああ。まだ教えて無かったな。俺は妖魔だ」
「何ぃ! 妖魔と言えば地上で殆ど見る事がない凶悪な魔族と聞くぞ! 弟よ! お前が
魔族なら兄であるこのわても魔族!」
「どんな理論だよそれ……けど、思った通り。お前は多分誰かを守って生きたい。そんな奴なんだな。
初めてお前と戦った時、弟を守ろうと飛び出しただろ。自分を犠牲にして他人を守ろうとする。
その手の類のやつは、いい奴って相場が決まってるのさ」

 医者などもそうだ。他人を救うのに必死だ。当然性格はあるだろう。自らの都合で動く者も
いるかもしれない。
 それでも、他人のために行動できる人がどれほどいるのか。
 決して多くはないだろう。だからこいつを信用できる。そう思った。
 そして、そんな兄を全面的に信頼している弟たち。いい関係だと思う。

「……いい奴ってのは寿命が短くなりやすい。図太く、汚く、他人に無関心で
他人を傷つけてでも生きようとする。そういう奴の方が長生きする。
でもな。生にしがみつくより死を恐れず、他者を思い楽しく生きようとする。
自分がこうありたい! そう思った風に生きる。それが大切なんじゃないかな」
「弟よ。お前を傷つけるような奴がいればこのわてが守ろう! それが兄者としての務めだ!」

 それを聞いてメルザはにかっと笑う。こいつも真っすぐな奴だ。

「お前、変わってるけどいーやつだな! なんかちょっとルインみたいだぞ。俺様気に入ったぜ!」

 休憩してエレギー、メルザと話していると、それを聞いていたのかジェネスト、レウスさんもでてきた。

「休憩は終わりましたか? ……ディーン様も昔、似たような事を言っておりました。
ディーン様はそこまで多くの事を語らない。ですが、三夜の町を長きに渡り維持してきた。
それはあの町に住まう多くの者のためであったのだと」
「俺はよ。昔王だったんだよ。な? わかるだろ? だからな。国民のためを思い動いてたんだ。
随分前の話だから覚えてないけどな! だっはっはっは!」
「みんなそれぞれ、思い思いのまま生きてはいる。でも俺の仲間はさ。思いやりの深いやつばかり
だよ。そーいやレウスさん、地上に戻るとき、ついてきてくれたんだよな。懐かしい」
「……弟よ。弟の仲間も含めて、このエレギーがどこまでも守ってやろう!」
「だから違うって。守るばかりじゃない。守られることだって必要だろ、エレギー」

 はっ! っと顔を上げるエレギー。やっと気づいたのか。他人を守る事ばかりじゃない。
 一人で出来る事なんて少ないんだ。だからこそ、周りの皆も巻き込んで守り合えばそれでいい。
 そんな風に考えられる奴は少ないだろう。その少数を集めれば、きっとルーンの町はいい町になる。
 俺はそう思っている。

「さて、そろそろ行こうか。案内頼むぞ、エレギー」
「任せておけぃ! ところでわてはドラディニア大陸に着いたら一度、ある町に向かい、仲間と
レンズに顔をださねばならん。弟たちはどうするのだ?」
「そうだな、ドラディニア大陸の町には行った事が無いが……見たいか? メルザ」
「見てぇ! うまいものあるかな? ファナたちにお土産勝っていきてーしよ」
「うっ……お金足りるかなぁ。レンズ……ちょいと顔出してみるか。いざってときはエレギーの
傭兵団だとでも名乗っておこう」
「わての傭兵団は解散した! 今は三人で元傭兵団としての簡単な仕事だけこなしている!」
「そ、そうか。まぁ探りくらいはいれられるかな。よし、とにかくここを抜けよう。中は安全だよな?」
「安全ではない! しかし弟たちの戦いを見る限り何の問題もなかろう!」

 ちょっと不安だが……先に進むとしよう。今更引き返せない。
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