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第四章 メルザの里帰り

第三百八十三話 ここは天国じゃ

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 久しぶりにいい湯だった。さっぱりした俺は同じくさっぱりしたハクレイと共に、ルーンの安息所へと
向かっていた。後でカカシの所に行って、栽培状況を確認しよう。メルザは直ぐに幻初の手を付与する
わけではない。まだ時間はあるしやらないといけない事は多い。

「あーらそうは言ってもうちの旦那は強いわよー。あんたたちの旦那は所詮弟子でしょう?」
「それは聞き捨てならないわねぇ。こないだの戦い、ライラロさんは気絶してたから見てないけど、こっちの
ダーリンが勝ったのよ? もう超えてるわよ絶対」
「はぁ? そんな見てない試合の事なんて知らないわね。それにうちの……私だけのダーリンは立った一人この私を受け入れたのよ?」
「それだけ器量が小さいってことね。うちのダーリンは人でも魔物でもなんでも来いってなものよ。器が違う
のよ器が!」
「へーぇ。じゃあどっちの妻が優秀か、勝負しようじゃないの」
「いいわ。望むところよ。負けたりするもんですか!」

 おいおいおいおいー--! 何かものすっごく不安な怒鳴り声がきこえる! これはまずい! 
 行きたくないけど逝かなければ! 

「ちょ、待てって。何で安息所で安息じゃない会話してんだ! 争いは止め……あれ?」

 二人はテーブルの上でおはじきを炸裂させていた。それぞれの駒にダーリンだの夫だの愛だの書かれている。その駒……エーナに何か渡して作らせたな! 
 こいつらはどうやら既にロブロードの虜だったようだ……まだルールもしっかりと確立させてないというのに。

「あら遅かったわね。メルザとファナは少し寝るっていってたわよ。二人で色々話したい事が
あるみたい。部屋を覗いちゃだめよ?」
「その間にルインをつまみ食いしちゃおうかなーって言ったらナイフが飛んで来たわ……
あれは本気だったわ」
「怖かったっしょ。目つきが。イーちゃん、私たちもロブロードの練習やろー」
「そうだね。これを王国ではやらせていれば……惜しい事をした」
「わらもこういった知識を使う物は好みだ。ルインが早くイネービュとルールを確立させてくれるのを願う」
「ああ……とりあえずみんなくつろいでいるなら何よりだ……なんか疲れたけど」
「ななな、何と。ここは天国じゃったか。あのような女神が沢山……わしゃ幸せじゃあー!」
「何よこの真っ白な爺さん。どこからわいたの? 私たちが美しい女神なのは当然だけど」
「美しいは、言ってなかったと思う……この爺さんはハクレイ。ハーヴァルへの客人だよ。
ブネを探しに来たんだけど、ここに来てないか?」
「あの冷酷顔の美女なら温泉でぴくりとも顔を動かさずにずっと浸かってたわよ。全裸で」
「やっぱ神の遣いにはここの常識を植え付けないとだめか……エプタも同じか?」
「あいつは町中を一通り見てくるって言ってた。誰にも危害など加えないように念を押しといたけど」
「それは大丈夫だろう。そもそもイネービュの分体。悪い奴じゃないとは思う。性格はちょっとあれだけど。
ルーはいたけどミリルもいないな。マァヤのところか?」
「ニーメのところよ。武器の調整でしょうね。ブネに会いにいくなら私も一緒に行こうかしら。
ダーリンを待ってる間はあんたと行動するから、ちゃんと守りなさいよね」
「俺に守られなくても既にこの大陸にライラロさんへ挑もうなんて奴、いないだろうに……あーいやサラが
いたか……」

 ライラロさんとは対峙した事がないが、俺と互角かそれ以上に強い気がするんだよな。
 レヴィアタンなんて出された日には、この町が水没する。
 ライラロさんはユニカ族と言っていたが、故郷はどの辺なんだろうな……。

 ハクレイの件を済ませたら聞いてみるか。メルザの故郷にも帰らないといけない。

「そーいやライラロさん、シフティス大陸ってどんなところだ?」
「あんた、知らずに行こうとしてたの? はぁ……いいわ。温泉に向かいながら話してあげるわよ」

 俺とライラロさんは、ブネの許へ向かいつつ、シフティス大陸について話す事となった。
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