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第三章 舞踏会と武闘会

第三百五十五話 第三試合 サンドラ国とムンドラ国

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 俺がティソーナと押し問答していると……声が降り注ぐように聞こえてきた。

「ここはムンドラ国。サンドラ国とムンドラ国は隣国同士で非常に親密な関係だった。
ムンドラ国の王子ルインは、サンドラ国より訪れている姫と恋仲となり、永遠の愛を誓いあう。
世界最高の駿女ファーフナーにまたがり、りりしい姿で国民を安堵させるルイン。
一見何もかもうまくいっているように見えた。物語はルインたちが、メルザ姫をサンドラ国へ送る所より
開始される」
「何もかもおかしいわよ! 駿女ってなによ! 駿女ってなによーーー!」

 確かに。ファナのお怒りもごもっともです。

「俺様、もうルインの嫁だぞ?」
「それは私もよ!」
「いや、これはあくまで物語の登場人物としての話なんだろう。二人共冷静にな」
「冷静でいられるわけないじゃない。私、馬扱いよ! 頭にくるわ!」
「ファナ、姫役変わるか? 俺様も馬はやだけどよ……かわいそーだよ」
「メルザ……ううん。これも術なら耐えてやるわ。かけた奴を全力でぶん殴るわ!」
「その息だ。二人共、用心しながら行くぞ」

 大臣たちが歩きだしたので、それに付き従い俺たちも移動を開始した。

「機嫌の悪いファーフナーをいたわり歩いていくとは。王子は相変わらず優しいですな」
「……頼むから少し黙っててくれ。ファナがこれ以上不機嫌になったらたまらん。これある意味
攻撃だろ……」

 ファナがいつ牛鬼になって暴れ出してもおかしくないので、お爺ちゃんを少し黙らせる。
 歩いていると情景が変わってくる。何倍もの速さで進んでいる感じだ。

「なぁ。凄いいい匂いするぞ。俺様、腹減ったよー……」
「メルザ姫! はしたないですよ。我慢なさい!」
「けどよー。なんだこの匂い……すげーうまそうだ……」
「ルイン、どう思う? 罠よね、きっと」
「……いや、質問がある。大臣」
「何でしょう、王子?」

 やはりか。エーナの問題は質問が認められていた。だがそれをファナたちに伝えられないのがネックだ。

「ここはどこだ? 姫がお腹を空かしているようなのだが、美味しい食事などはあるか?」
「こちらはサンドラ国道中の町、ドラドラ。姫の食事は当然用意してあります故、もう少々お待ちください」
「あそこに売っている物は買えないのか?」
「買う事はできますが姫のお口にあうかどうか……」
「なら俺が毒見をする。その後姫に食べてもらえばいいだろう?」
「なんと……それではまず侍女めに毒見をさせましょう。その後に……」
「それは駄目だ。俺が確かめなければならないんだ。それが主への務めだ」
「……承知しました。それではまずこの大臣が食し、その後に王子、そして姫ということで」
「……それで構わない」
「あの爺ちゃん、そんなに腹減ってんのか?」
「いや、そういう事じゃないと思うぞ……」

 無邪気なメルザに癒されながら、謎の屋台へと赴く大臣。確かにいい匂いがするが、見えたのは白い箱だ。
 これは……選択……か? 

「ふうむどれも奇怪な料理ですな。王子は姫がどれを好むと思われますかな?」
「どれって俺様には何も見えねーぞ?」
「私にもよ。どうなってるの?」
「……この選択権は俺だけか……」

 一つずつ箱を開けて中を見る。一つ目は高級そうな更に盛られたスープ。二つ目は肉の丸焼き。三つ目は
米料理だった。米……米だと!? くそ、こんなところで出てくるとは。
 食いたい。きっとこれだ! 俺の食いたいものは! 

 ……だがそれは俺が食いたいだけでメルザが食いたいわけじゃない。これを出しても喜ばないだろう。
 俺は肉の丸焼きが入っていたものを選びメルザの前に持っていく……すると
先ほどまで二人には見えなかったものが見えるようになった。

「おー! すげーうまそうなものの正体はこれか! 食っていいか?」
「いや、まず大臣が毒見をする。その後は俺。そうしたら好きなだけ食べてくれ」
「では……ほうほう、これはうまいですな! 実にいい。しかしこちらの方へ毒があるやも。
いやいや、はたまたこっちの……いやはやこちらか?」

 どんどん食う大臣。肉食爺ちゃんだなおい! 
 あっという間に一皿平らげてしまい、腹をさする大臣。

「いやーこれは、実に目に毒でしたな。全て取り払った故もう大丈夫です」
「やっぱこいつ、ぶん殴るだけじゃ足りないわね」
「俺様、燃斗唱えていいか?」
「俺の毒見の役は? 毒見するものは?」

 謎の大臣に振り回され、どっと疲れがたまった。
 他のを選んでいたらどうなっていたんだろうな。
 気になるところだ。

「食事にありつけなかった姫は、おなかが減ったままドラドラの町の休息所へと赴こうとする。
その道中……あなたたち一行を何者かが襲い掛かった!」

 ついに……敵襲か。
 場面が変わり、俺たちは数十人の何者かに取り囲まれていた。
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