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第三章 舞踏会と武闘会

第三百五十二話 第二試合 決着は

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「くっくっく。はーっはっはっは! あんたらでもそんなに驚くんだな。しかしあの女、まさか
この俺を利用するとは。面白かったぜ」
「エプタ! わざとか、先ほどのは!」
「まさか人の子に協力するとは……」
「うるせえ! 人間なんざ嫌いだ。だがな、俺を見下してるお前らだって、気に入らないんだよ!」

 激しい感情を見せるエプタ。あいつはもしかしたら、ずっと環境に苦しんでいるのかもしれない。
 あいつとは手合わせしてみたかったが……シュウたちがこれでかなり有利……か? 


「シュウ。君も限界だろう。場外へうつすがよいか?」
「……すまん二人共。後は頼む……」

 ドサリと倒れたシュウ。地面に同化し偽物の本体を残し……更に術を行使していたが
どうやらブレスをくらっていないわけじゃないようだ。
 何という精神力。忍び耐える者か。
 
「一体どうなったわけ? 説明してよドーグル」
「ちみも司会だろう。仕方がないな。先ほどのはシュウがくらったふり……実際にはくらっていたわけだが
そのうえで実体しない自分を残し、自分は風景同化を行った。そのうえでなりを潜め機を伺い
ベルドたちに合わせた。恐らくオクト、エンネアはエプタにも何かされたのだろうが……見えなかったな」
「ということだそうよ! やるじゃない三人共! シュウは限界ね……あちらのルービックとかいう赤竜と
エプタだけよ! やってしまうのよ!」

 司会の一方的な応援により状況はみな把握できたようだが、あの幻影竜は消えないのか? 
 いや本体と無意識で動くのか。俺が対峙している時も、本体は何もしていなかったな。
 
「さて、お前ら。余興はここまでだ。心に見えぬ矢プシュケーベイロス
「ぐあああ! と、突然見えぬ矢が」
「ベルド! 対象一人ではなく同時にできるなんて!」
「ほう。こっちもそうか。お前ら二人共相当な怒りを抱えてるな。少しだけ……見させてもらおうか」

 そういうと二人の居る方向に手をかざす。二人は肩を貫かれ、腕を貫かれ、足を貫かれた。
 俺もくらったからわかる。急いで対処しないとあれはやばい。

「……お前らどっちも同じ奴に、親をやられたな」
「なん……だと? まさか」
「どちらも父親だな。漆黒の中。こいつは悪そうだ」
「なんですって! 生きてるっていうのですか? ライデンが!」
「嘘をつくな! 父上が……父上が死ぬはずがない! 負けるはずが無い!」
「お前の父親はバルドス・アールバル。バリアントオーガだろう。異種として極めて人に近い。
母親は人魚族か。父親の血が濃く人に見えるが、お前は人間とはかけ離れているな。
そっちの娘は竜人同士の子か」
「……嘘だあああああああああーーーーーー!」

 シュウが怒りのあまり、痛みを忘れ突撃する。武器はミリルに託したままだ。
 そのまま燃臥斗を放ちつつエプタへと向かうがまったく当たらない。

「いけませんわ! ドラゴニックブレス!」

 ルービックが狙いを定めたベルドへブレスを放つのを、ミリルが防ぐためブレスを放つ。

「まず一人」
「ぐ……あ」

 その隙を見逃さず、一気に距離をつめてミリルに手刀を入れ、気絶させる。
 ベルドは一瞬で追い抜かれ、相手を見失った。
 ……ベルドらしくない。完全に自分を見失った。

「ミリル! 貴様よくもミリルを!」
「くっくっく。いいぞ、そうだ。それが人の子らしい。どうやら貴様の父親には何か最初から埋め込まれて
いたようだな。肉体そのものを手に入れるのが目的だったようだ。バリアントオーガの肉体は屈強。
片手でも巨大な岩を持ちあげ動かしたりもできる。だからこそ槍を巧みに操り、強大な攻撃もいなせる。
違うか?」
「だまれ、黙れ黙れ黙れ! 父上は死んでなどいない!」
「まぁオーガ種は嫌いじゃないぜ。その矢は外してやろう。ついでにお前の武器も返してやる。
かかってこい」

 だめだ。黙ってみてはいられない。完全に冷静さを失っている。

「ベルドーーーー! 冷静になれ! お前の一番の強さは冷静さと分析だろう! 俺とやり合うまで
負けるな!」
「っ! ……ルイン。ああ! 必ず、倒す!」
「ちっ。あいつめ余計な事を。だが貴様がそう思うように俺もあいつとやりてぇからな。悪く思うなよ」

 エプタは武器をベルドの方へ放り投げて突き刺さった矢を外した。
 なぜだ? あのまま戦えば有利だったのに。

「おいおい、そんな不思議そうな顔をするなよ。別にそんな事しなくても勝てる。
他のやつらはイネービュ様の前で遠慮しがちだが、俺はそんなことしねぇ。絶心剣……来い」

 一本の真っ白な長剣がエプタの許へと現れる。今回の戦闘で初めて見せる、神の遣い側の武器だ。
 冷静さを取り戻したベルドは分析している。
 だが……ソードアイの俺の目にも見えなかった。

「絶・心の崩壊プシュケーカタレプシ
「う、うああああーーー!」

 その剣はやはり、矢のときと同じように、ベルドへと突き刺さっていた。

「フン!」

 エプタの手から爆風が巻き上がり、そのまま場外へと押し出されるベルド。
 司会も会場内の人もみな、唖然としてしまう。

「勝者はエプタ、オクト、エンネアだ」
「まだ……戦え……ますわ」
「無理だ娘よ。エプタが襲わない以上、もう戦えはしない」
「そん……な」
「悪いな。お前らの敗因は心の怒り。あの忍者野郎が敗北した段階でお前らの負けだったんだよ」
「シュ……ウ」

「えーっと。第二試合……くやしいけどエプタ、オクト、エンネアの勝利……よ」
「よく戦った。だが相手が悪かったようだ。わらでも勝利するのは難しい。人間に恨みを持っている
からな」
「……私でも難しいかも。なんなのよあの技。勝手に刺さるとか反則じゃない」
「ただ刺さったわけではなさそうだ。相手の心の弱さを突く。そんな技なのだろうな」

 ……オクト、エンネアも強いのだろうが、あのエプタだって相当やばい相手だ。
 俺は下唇を噛み締め、エプタを睨んでいた。
 それに気づき、あいつも俺を睨んでいた。

「早くやりあいてぇな……負けんなよ」

 エプタは何かつぶやいているようだった。
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