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第三章 舞踏会と武闘会

第三百四十三話 リル・サラ対ペンデ 新たな変身

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 封印が解けると同時にサラは勢いよく飛び跳ねて、リルの許へ向かう。

「まったく……サラは兄の言う事を聞かないね」
「ちょ、ちょっと腹が立ったから変身を解いてやろうと思っただけよ! 誤解よ!」

 武闘会会場側から見たサラは、吸い込まれるようにカノンの封印内に入っていくように見えた。

「あの女……絶対わざと入っていったわよね」
「そう見えたっしょ。私らなら近づいてボディブローっしょあんなの」
「けれど見てくださいな。変身がとけていますわよ」

 久しぶりに再会したミリルとぴったり肩を寄せて話している三人。というよりミリルが寄せているように
見える。相変わらず置いていかれてさみしかったのだろう。
 それにしてもミリルのあの形態はなんだ? ルーのような色の鎧のようなものを
身にまとっているな。新しい装備だろうか? 物凄くごつくみえるんだが……。
『なんかちょっとだけ、ドラゴン臭いわね』
「え?」

 あまり試合には集中できていないようだ。というのも両者動けていない。
 リルはまだ立ち上がれず、ペンデもまた精神的ダメージを受けたのか、膝をついている。

「なんという破廉恥な女だ……とても耐えられなかった」
「なな、何のことかしらね……うふふ。二の腕の感覚まで同じだったわぁ」
「妹よ。一体中で何をしていたんだい……」

 なぜかサラ以外でかいため息をついている。神の遣いに封印中攻撃をしていたのか? 
 サラも随分と実力をつけているようだ。

 両者共に立ち上がり、まだ戦闘意欲を見せる。

「どうやらテーセラとエークシ、ともにやられちゃったみたいだね。遊び好きの
テーセラはともかくとして、エークシが負けるとは。君たち仲間の力を合わせての勝利だったのかな」
「……全てカノンのおかげだね。本当は三対二に持ち込むはずだったけど。
カノンを守る役目が入っちゃったからなぁ」
「ごめんなさーーい!」
「案外賢明な判断だったかもよ。同じ人物に二度切り替わるには日を要するから。それに人へは変われても
神などには変われない。君たち二人、神殿に入ろうとしたときによく見させてもらったからね。
そうだね、やはり彼がいいかな」
「……一体何に変化するつもり……まさか!」
「ふふふ、いいだろう? ここに彼がいないのが残念で仕方がないから……さ」

 ペンデはとんでもないやつに変身した。能力はその時見たまでと同じ……
 つまり、あの人物は俺より強い! 

「こ、これは! ベルローゼ! ベルローゼに変わったわよ! あいつ!」
「ちみ、少し落ち着き給え。この中にいない者にも変わったのは驚きであるな。だが同じ能力とまでは
きっといくまい。もし同じ能力が使えるなら、リルたちに勝ち目はない」

 冷静なドーグルの司会で進行していく。彼は何をやらせてもそつなくこなす。変な言葉遣いのままだが。

「さぁリルカーンよ。俺を倒してみろ。どの程度出来るようになったか久しぶりに見てやる」
「ベルローゼ……冗談きついよ。ここにいない者にも変身できるっていうのかい? 
反則だろう、そんなの」
「お兄ちゃん、私勝てる気まったくしないわ。さっきのルインだって変身を解けなければ
きっと勝てなかったわよね」
「けれど簡単にあきらめるわけにはいかない。相手があの黒星のベルローゼだとしても」

 ペンデが変身すると黄色い喚声が上がる。見てみるとフォニーが両手を頬にあててうっとりしていた。
 ……間違いなく大ファンである。
 
 妖魔側から来ている客はまだ多くないが、少人数でも驚きの声があがっている。
 無理もない。あちら側でも滅多に顔を出す人物ではない上に、超絶クールなイケメン。
 それに……もし術までコピー出来るなら……。

「フン、身体能力、素質、術の適応力。どれをとっても悪くない体だ。人にしておくのは惜しい」
「サラ、合わせて。先制をしかけるよ!」

 ふわりと浮かび上がる両者。フルフライトとローフライト。
 一段と高く飛翔したリルは、ムクバードのフェザーシュートをけん制で放つ。
 サラは低空から、守護者ストラスのバーストウィングを放った。

「黒星の盾」

 黒いキラキラした漆黒の盾に攻撃は全て防がれる。間違いない! あれは先生の盾そのものだ! 
 間近で何度も見たからわかる。いやそもそも、星の力はイネービュから授けられた力か。
 こいつらが使用できてもおかしくはない。

 一瞬も見放せない攻防、果たして決着はどうつくのか。
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