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第三章 舞踏会と武闘会
第三百二十七話 タキシード戦士ルイン
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「よし、ルイン。バッチリだね! かっこいいよ!」
「本当か? 俺は俺自身かっこいいなんて思った事一度もないぞ」
「それ、自分で思ってたら痛い人だよ! はい、鏡見て」
さすが神の居場所。立派な鏡が置いてある。そもそもガラス自体が海にあるもので造れるから容易か。
薄蒼色の、この海底によくあうタキシードっぽい服だ。一体だれのチョイスだろう。
しかも俺の体系を完璧に理解している。恐ろしい、誰にも伝えたことなんてないのに!
最近満遍なく触ったのは……もしかしてブネか!?
あの短期間で全身把握……恐ろしい。ウエストまでぴったりだ。
「しかし神ってのは本当にとんでもない」
「そりゃそうだよ。だって神様なんだし」
「なぁ、イビン。俺ってこの世界について詳しくないからよくわからないんだけど、結婚てなんだ?
前世でも結婚なんてしたことないんだ」
「え? 結婚? 僕もよくわからないよ。僕だってしたことないし……」
「しきたりとか、いろいろあるだろ? イビンの家族とかはどうだったんだ?」
首を横に振るイビン。ちょっと聞いたらまずかったかな。
「ルインはルインのやりたいようにやればいいんじゃないかなぁ。
あれだけ勢いのある奥さんたちをまとめあげるのって大変だろうけど、頑張ってね」
「まぁ今更だよな。成り行きでどんどん封印してった俺も俺か。いやいやベルディアとかは成り行きってか
自分からだったような……いや待て待て、そもそもレウスさんとも結婚するんだぞ、おれ」
「え? そうだったの? だからヘンテコな形の花嫁衣裳もあったんだね」
「なんかすげーー嫌な予感しかしないんだよ」
「でもさ、僕は少し羨ましいな。ルインの本物の家族になれるんでしょ?」
「何言ってんだ。結婚なんかしなくても、お前らみんな家族みたいなもんだろ。
少なくとも俺はそう思ってるぞ」
「ありがと。でもいいんだ。僕は僕に出来る事を越えられないって。ベルディスさんの特訓を受けて
そう感じたんだよ」
「シーザー師匠、そういえば来てるんだよな。ということはライラロさんも……」
「うん、来てるよ。巻き込まれてるね」
「やっぱりか! はぁ……」
ライラロさんの事だ。チャンスを狙っていたに違いない。これはもうあとには引けないし逃げられない。
何せここは海底四層。逃げる場所などありはしない。
俺の結婚をだしにして、うまく引っ張って来たのだろう。或いは知らされずに着替えさせられてる
かもしれない。
式は今すぐってわけじゃないよな。お酒とか、あるのかな。今日は師匠と酒を飲もう……。
イビンに尋ねると、着付けや用意に随分と時間がかかるらしい。
ほどほどであればお酒も飲んでいいらしい。しかも神酒。
既にシーザー師匠は別の場所で飲んでいるらしい。
着替え終わった俺もその場所へと向かった。
無数のテーブルが並ぶ上に色んな色をした飲み物が注がれて置いてある。
「おう、色男。いい恰好じゃねえか。がははっ」
「師匠こそ、よくお似合いですよ。といってもどんな格好でも強そうに見えますね」
「ふふ、おめぇ随分と強くなりやがって。俺と肩を並べるくらいにはなったか?」
「どうでしょう。ただの妖魔形態じゃまだまだでしょうね」
「……例の剣、手に入れたか」
「はい、例によって厄介そのものです」
「見せてみろ」
「封剣!」
にゅーっと出てくる先端が紅色の細い剣。
「ほう。そのまま構えてみな」
タキシードの姿のままティソーナを身構える俺。どうなんだろう、
これじゃ完全にタキシード戦士だよ。
「形態はレイピアに近いが、使い物になんのか?」
「どうでしょう。本人に聞いてみてください」
「失礼でごじゃろ! 世界に二本とない名剣でごじゃろ!」
「うお、喋りやがった。こいつが本当にティソーナか? コラーダと合わせて二本で一本なんだろ?
同時にだしてみたか?」
「いや、まだなんです。とりあえず急いで戻らないといけなくて。お披露目も出来ず……こいつ寝てたし」
「面白そうな剣じゃねえか。こいつぁ恐らく力の殆どを引き出せてねぇな。
まぁしばらくは色々ぶった切って鍛える事だ」
「はぁ……やっぱりそうなりますか」
「麿はまた寝るでごじゃろ。騒がしいのは苦手でごじゃろ」
「あぁ悪かったよ。また今度な」
すーっと手のひらにしまう。自分の手にぶっ刺してるようで嫌なんだけどな。
「ところで師匠。結婚て何ですか?」
「ぶーっ、げほっげほっ。おめぇ急に変な事聞くんじゃねぇ。俺が知るかよ!」
「おめぇの女たちはまだ話がわかるからいいがよ。ライラロに追われてみろ。結婚なんてできねぇぞ」
「それは確かにそうですね……」
はぁ……と二人ででかいため息をつく。
「まぁともかくよ。弟子が結婚して成長するってのは嬉しいこった。今度は先輩として、イビンを
ちょっともんでやりな。あいつ、頑張ってるんだぜ」
「使い方や意味が少し違う気がしますが……わかりました。どのみち武闘会があるんですよ」
「何? おれぁ聞いてねーぞ? ベルローゼのやつぁいるのか?」
「残念ながら先生は用事があって。しかし恐らく、神の遣いとは戦えるかも」
「そいつぁ楽しみだ。さっさと結婚式、終わらせちまえ!」
師匠と酒を酌み交わし、そのまましばらく談笑していた。
「本当か? 俺は俺自身かっこいいなんて思った事一度もないぞ」
「それ、自分で思ってたら痛い人だよ! はい、鏡見て」
さすが神の居場所。立派な鏡が置いてある。そもそもガラス自体が海にあるもので造れるから容易か。
薄蒼色の、この海底によくあうタキシードっぽい服だ。一体だれのチョイスだろう。
しかも俺の体系を完璧に理解している。恐ろしい、誰にも伝えたことなんてないのに!
最近満遍なく触ったのは……もしかしてブネか!?
あの短期間で全身把握……恐ろしい。ウエストまでぴったりだ。
「しかし神ってのは本当にとんでもない」
「そりゃそうだよ。だって神様なんだし」
「なぁ、イビン。俺ってこの世界について詳しくないからよくわからないんだけど、結婚てなんだ?
前世でも結婚なんてしたことないんだ」
「え? 結婚? 僕もよくわからないよ。僕だってしたことないし……」
「しきたりとか、いろいろあるだろ? イビンの家族とかはどうだったんだ?」
首を横に振るイビン。ちょっと聞いたらまずかったかな。
「ルインはルインのやりたいようにやればいいんじゃないかなぁ。
あれだけ勢いのある奥さんたちをまとめあげるのって大変だろうけど、頑張ってね」
「まぁ今更だよな。成り行きでどんどん封印してった俺も俺か。いやいやベルディアとかは成り行きってか
自分からだったような……いや待て待て、そもそもレウスさんとも結婚するんだぞ、おれ」
「え? そうだったの? だからヘンテコな形の花嫁衣裳もあったんだね」
「なんかすげーー嫌な予感しかしないんだよ」
「でもさ、僕は少し羨ましいな。ルインの本物の家族になれるんでしょ?」
「何言ってんだ。結婚なんかしなくても、お前らみんな家族みたいなもんだろ。
少なくとも俺はそう思ってるぞ」
「ありがと。でもいいんだ。僕は僕に出来る事を越えられないって。ベルディスさんの特訓を受けて
そう感じたんだよ」
「シーザー師匠、そういえば来てるんだよな。ということはライラロさんも……」
「うん、来てるよ。巻き込まれてるね」
「やっぱりか! はぁ……」
ライラロさんの事だ。チャンスを狙っていたに違いない。これはもうあとには引けないし逃げられない。
何せここは海底四層。逃げる場所などありはしない。
俺の結婚をだしにして、うまく引っ張って来たのだろう。或いは知らされずに着替えさせられてる
かもしれない。
式は今すぐってわけじゃないよな。お酒とか、あるのかな。今日は師匠と酒を飲もう……。
イビンに尋ねると、着付けや用意に随分と時間がかかるらしい。
ほどほどであればお酒も飲んでいいらしい。しかも神酒。
既にシーザー師匠は別の場所で飲んでいるらしい。
着替え終わった俺もその場所へと向かった。
無数のテーブルが並ぶ上に色んな色をした飲み物が注がれて置いてある。
「おう、色男。いい恰好じゃねえか。がははっ」
「師匠こそ、よくお似合いですよ。といってもどんな格好でも強そうに見えますね」
「ふふ、おめぇ随分と強くなりやがって。俺と肩を並べるくらいにはなったか?」
「どうでしょう。ただの妖魔形態じゃまだまだでしょうね」
「……例の剣、手に入れたか」
「はい、例によって厄介そのものです」
「見せてみろ」
「封剣!」
にゅーっと出てくる先端が紅色の細い剣。
「ほう。そのまま構えてみな」
タキシードの姿のままティソーナを身構える俺。どうなんだろう、
これじゃ完全にタキシード戦士だよ。
「形態はレイピアに近いが、使い物になんのか?」
「どうでしょう。本人に聞いてみてください」
「失礼でごじゃろ! 世界に二本とない名剣でごじゃろ!」
「うお、喋りやがった。こいつが本当にティソーナか? コラーダと合わせて二本で一本なんだろ?
同時にだしてみたか?」
「いや、まだなんです。とりあえず急いで戻らないといけなくて。お披露目も出来ず……こいつ寝てたし」
「面白そうな剣じゃねえか。こいつぁ恐らく力の殆どを引き出せてねぇな。
まぁしばらくは色々ぶった切って鍛える事だ」
「はぁ……やっぱりそうなりますか」
「麿はまた寝るでごじゃろ。騒がしいのは苦手でごじゃろ」
「あぁ悪かったよ。また今度な」
すーっと手のひらにしまう。自分の手にぶっ刺してるようで嫌なんだけどな。
「ところで師匠。結婚て何ですか?」
「ぶーっ、げほっげほっ。おめぇ急に変な事聞くんじゃねぇ。俺が知るかよ!」
「おめぇの女たちはまだ話がわかるからいいがよ。ライラロに追われてみろ。結婚なんてできねぇぞ」
「それは確かにそうですね……」
はぁ……と二人ででかいため息をつく。
「まぁともかくよ。弟子が結婚して成長するってのは嬉しいこった。今度は先輩として、イビンを
ちょっともんでやりな。あいつ、頑張ってるんだぜ」
「使い方や意味が少し違う気がしますが……わかりました。どのみち武闘会があるんですよ」
「何? おれぁ聞いてねーぞ? ベルローゼのやつぁいるのか?」
「残念ながら先生は用事があって。しかし恐らく、神の遣いとは戦えるかも」
「そいつぁ楽しみだ。さっさと結婚式、終わらせちまえ!」
師匠と酒を酌み交わし、そのまましばらく談笑していた。
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