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第三章 舞踏会と武闘会

第三百二十一話 獣たちの楽園

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「グルウーーーーー!」
「ガオーーーーー!」
「……ガウ」
「ガルルルルーー」
「キュイーーーーー!」
「なななな、なにこれーーー! どどど、どうしよう。ルーンの安息所に獣がいっぱい!? 
た、食べないで! 僕は美味しくないよ! ……ってあれ? 可愛い獣だった」
「あらイビン。せっかく驚かせようと思ってたのに、褒められちゃったらその気も削がれるわね」
「どど、どうして突然獣の姿に? あれ、マーナちゃんやニーメ君は普通の姿だね。
変わったのはリル君とサラちゃんと、ベルディアちゃんにファナちゃんにカノンちゃん、それに
……王様も?」
「ふふふ、なかなか素晴らしい毛並みだろう? なぜか突然変わるんだ」
「驚いた……僕、何しにきたんだっけ? うーん、そうだ。みんな! えーと……」
「ガルウウウウウウウウウウウウウ!」
「うわぁーーー! 外から本物の獣が入ってきたよおおお! 怖いよぉ、食べられるよぉーーー!」

 中に入って来たのは、ウェアウルフ以上にたくましい、角の生えた魔獣のようなそれだった。
 目は赤く光り今にも襲ってきそうなそれは、じっとイビンを見ている。

「魔獣!? でもなぜかしら、とっても惹かれるわ」
「りりしい。僕よりりりしい……」
「食べられてもいいかもっしょ。でもこれ絶対」
「ルイン……よね。どう見ても」
「ああ。間違いない。我らの主だろう」
「へ? ルイン?」 戻って来たの? 本物?」
「よう! ちょっと悪ふざけが過ぎたかな。にしても、何でみんな獣の姿になってるんだ? 
俺の影響受けてるってこと?」
「みんなただいま! 俺様言いつけ通りちょっと待ってから来たぞ! なぁなぁ、腹減ったよー」
「ああ。獣化戻すから待ってな……ふぅ。この形態、気分の高鳴りが半端じゃないんだよな。野生って
こんな気分なのかな」
「お帰り。僕らも結構危なかったんだ。君、最初に獣化した時、襲わなかったかい? そこら中をさ」
「そーいえばそうだったかもしれん。こっちは平気だったか?」
「ドルドロスが止めてくれたのよ。でもあいつ、落ち込んでるのよね」
「生きてはいるんだな? それなら、後で安心させてやろう」
「ところでブレディーは一緒じゃないのかい? 三人で戻って来ると思っていたんだが……」

 俺は経緯を話し、みなにも協力を仰ぐことにした。
 それにまずやるべきこと、それは……。

「なぁ! 早く飯にしよーぜ! まずはそれからだ!」

 がくっと膝から崩れ落ちる俺。そ、そうだよな。まずは飯だ! 

「稲の事もブレディーに聞かないといけないしな……さて、食べ物は……」
『私が作るわ!』
「私料理出来ないっしょ……勉強しなくちゃ」
『ふん。私たちの圧勝ね』
「なぁなぁファナ、サラ。俺様肉が食いてぇ!」
「ああ、久しぶりのメルザ。癒されるわぁ……」
「本当主ちゃんてば可愛いんだから。たまらないわね」
「へ? ちょっと、抱っこはやめてくれよぉー」
「ふぅ。確かに腹減ったな。何も食べてない……パモ、桜の木はどうだ?」
「パーミュ! ぱぱ、ぱみゅ!」
「かかしのとこに植えてくれたのか。ありがとな」
「ぱ、ぱみゅ!」
「それ以外にもエリア事に植えた? さすがだぜ、パモ!」
「ぱーみゅ!」

 レウスさんやドーグルもこちらへ戻って来た。ちょうどいい。顔合わせするか。

「おいジェネスト、セーレ。出てきて挨拶をしてくれ。セーレは言葉、通じないか?」
「ヒヒン! どうだろうね。君が理解出来るなら、封印されてる者同士ならできるかもね。できるといいね」
「……人間に興味はありませんね。下等種族でしょう?」
「いや、全員ただの人じゃなくて、ほぼ魔族じゃないか? ファナはよくわからないけど」
「あれはモリアーエルフ? まさかあなたが封印したのですか? 面白い。いいでしょう」

 すーっと現れるジェネスト。仮面をつけた長い髪の女性がふわりと舞い現れる。

「……ちょっとルイン。どういうことよ。ブレディーの代わりにこの美女を仲間にしたってわけ?」
「おかしいっしょ。次から次へと」
「増える一方じゃないのよ!」
「いや、これはその、知らないうちにだな」
「知らない間に増えるってどうなってんのよ! しかも何この人。凄い強いわ……厄介ね」
「ええ。これはまずいわね。この人、私らより断然強いわ」
「驚いたね。只者じゃないよ。彼女」
「ちょっと落ち着こうか……彼女は幻魔人形ってやつらしい。ブレディーが創造したんだとか」
「人形? 人形のように弄ぶつもりね!」
「おいおい待て待て、話を勝手に変な方向に進めるなー」
「おかしいわよ。だって人形ならこんなにいい体形にしなくてもいいじゃない。これはブレディーの策略よ」
「そうっしょ。ブレディーちゃん、どこっしょ。あの子可愛いから撫でまわしたいっしょ」

 とりあえず落ち着かない一行を落ち着かせるためでかい声で言い訳をしまくった。
 やっと納得してくれたが、対抗意識が凄い。

「へーえ。彼女たちもまぁまぁな戦力ですね。あなたは誰かを利用するのが得意なようですね」
「ジェネストもブレディーと少し似て、トゲがあるな。まぁ俺は気にしないが。
こいつらを利用する気なんてさらさらないよ。みんな大事な仲間さ。お前も含めてな」
「私が、ディーン様に似てる……? そのような甘言に惑わされたりはしない……でもいいでしょう。
ブレディー様を戻すためなら、協力は惜しみません」
「いや、甘言なんて使っていないんだが……よろしく頼むよ……おっ、うまそうな匂いが……」
「主ちゃんが戻った時ように、食材は用意しといたの。いっぱい食べてね」
「さて、今後の予定とか色々話さない事が多いんだが……ライラロさんやミリル、師匠たちは……」
「イビンが呼びに行ったから、もう少ししたらみんな来るんじゃないかな。ずっとずっと、待ってたからね」
「そうか……おいメルザ大丈夫か。急いで食べなくても料理は逃げないぞ」

 喉に詰まらせていたので、水を持ってきて背中をさすってやる。
 本当に食べるのが好きなんだよな。後でメロンパイも焼いてやろう。


 食事を終え、しばらくして多くの人が集まった。
 俺たちは全員に心配かけた事を詫び、今までの事、これからの事を話した。
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