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第二章 神と人

第三百十一話 自らを振り返る

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 ブレディーがメルザに抱き着いてる間に、自分の体を確かめてみる。
 この海底に来てからというもの、目まぐるしい変化に自分自身がついていけていない。
 フォーサイトから受け継いだ、星のさらなる力。
 妖真化の会得。
 神魔化による第七感の獲得。
 獣落ちによる謎の獣化。
 そして……ほっとくと燃える謎の戦車形態な俺。

 人外にもほどがあるな。人と思っていたころが懐かしい。
 
「この力、組み合わせてどうにかなればいいんだけどな……」
「ヒヒン! そんな簡単に使いこなせる程甘くはないと思うよ。ヒヒン!」
「ああ。セーレ先輩よ。出来れば指導願いたいものだねぇ。どうやって使えばいいんだ? 
このベリアルとかいうやつの使い方。ついでに獣っぽくなってたの、ありゃなんなんだ」
「獣落ちでしょきっと。神格化失敗のなれの果てだよね。君神格化できないでしょ?」
「へ? 神魔解放……いや、出来るぞ」
「ヒヒン? あれぇ? なんでできるの。なんで? ねぇなんで? なんでなんで?」
「知らないしうるさいぞ。もう少し落ち着いてだな……」
「ツイン。変」
「ブレディーまで……いやいや、ブレディーはこういうのいつも通りだな」

 獣落ちとやらのせいで獣になって、本来そうなると神魔化はできないってことか? 
 しかし出来てる。怖くて重ね掛けはしたくないが……さっきの獣の形態になれるのか? 
 
「んんーーー、なんか獣の時は痛みが酷くてどんな感じだったか」
「可愛かった」
「可愛い感じなのかそうか……おいおい、それは違うだろ、獣だぞ?」
「可愛かった」
「だめだ、メルザが起きたら聞いてみよう。それにしても起きずによく眠ってる。
我が主ながら可愛い寝顔だな……」
「ツイン、エッチ」
「なんでそーなるんだ!?」
「メルちゃん、顔、いやらしく見てた」
「見てねーし! 可愛い顔って見てただけだし!」

 どっと疲れたが、ブレディーらしさが戻っていてほっとしている……場合ではなかった。
 色々確かめなければいけないことがある。

「なぁブレディー。試練って最初の試練以外後どんなことがあるんだ? この門に着くまで虫がいるとこや
毒っぽい所があったんだけど」
「ここ、審判の門。ここ、抜けると、人格によって、試練内容、決まる」
「つまり、この門の先は本人次第によって試練の数が変わる?」
「そう。最大で三七五六四の試練」
「皆殺しっておい。そんな数の試練ああったら殺す前に死んでるだろ……」
「試練、考えるの、楽しかった」
「あ、ああ……一番少なくていくつなんだ?」
「? 多分、一」
「一か。つまりそれがブレディーを招来して戦う試練ってことか」
「そう。ブレディー、行きたくない。抵抗、してみる」
「メルザやセーレも入れる……のかな」
「きっと、平気。ブネ、通したから」

 今のメルザを守りながら、相当強いであろうブレディーをどうにかする……か。
 難儀だな。せめてみんながいれば……いや、ない力を頼ろうとしてもしょうがない。
 俺一人でどうにかしないといけないとは思ったが、この試練中問題が起こりすぎた。
 そもそもこんな事態そのものが試練って気がしてならない。

「んん……」
「メルザ! 気が付いたか?」
「あれ……ルイン。なんか少し、気持ちわりーんだ……俺様、変な夢みてたんだ
なぁ、本当にルインだよな。無事……でよかったよ……」
「メルザ、ごめんよ。俺のせいでお前の腕……」
「あれ、やっぱり夢じゃなかったんだな。ブネ様がくれたのか、これ。ちょっと変だけど感覚はあるぞ。
右腕じゃなくて左腕だから、慣れるかなー……」

 何も言わずメルザの左手をぎゅっとつかんだ。そして、少しでも気持ちが落ち着くようこういった。

「なぁメルザ。指輪って左の薬指にはめればいいんだよな」
「あ……そっか。そー考えればいいのか。ルイン」
「ああ。戻ったら指輪、作ってもらおうぜ」
「ブレディー、ファナ、サラ、ベルちゃん、メルちゃん。全部で、五個。ねんのため、十個?」
「婚約指輪コレクションでもするつもりか!? なんだ十個って」
「へへへ、最初の一つは俺様だから……な」
「メルザ? いや、眠っただけか。さっきよりずっと表情がいい。門を抜けてすぐ戦闘ってわけじゃないよな?」
「うん。先に、進む?」
「ああ。メルザもとりあえずは平気そうだ。さっさとこの場所からおさらばして、みんなでルーンの町へ
戻ろう!」
「ヒヒン!」

 セーレのいななきを聞きながら、巨大な門へ手を触れて押してみる。
 門に閃光が走り、ぎしぎしとゆっくり扉は開かれた。まぶしくて先は見えないが、俺はきにせず
門の先へ入っていった。
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