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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百九十五話 ブレアリアと二人

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「もう、どこにいってたのよ! ちょっとルイン、こっちにきなさい」
「は、はい。その、すみませんでしたー!」
「うう、戻ってきたのはいいけど、あれで飛び出して戻ってくるの、恥ずかしいぞ……」
「懐かしい。昔ベルーファルクに妃になれと言われた事があってな。くっくっく、あやつ本気の
目をしておった」
「僕の曽祖父はどうしようもないほど助平だったと聞いているけど、まさか神の遣いにまで手をだそうと
していたのかい?」
「英雄色を好まずか。どこの世界の英雄ってのもそんなもんなのかねぇ」
「あら、ルインだってそうじゃないの。私たち全員妃にするんだし」
「はい?」
「そーなのか? 俺様のほかにももう同じことしようとしてたのか! こいつめ! えい!」
「してないって! サラ、また既成事実を!」

 腕を組んでフンっと横を向くサラ。そりゃメルザ連れ出して飛び出してったら怒るのも無理はない。
 今やメルザはみなにとって掛け替えのない明るい存在。太陽みたいなものだ。

「貴様らはいいな。人そのものの美しさだけを磨いてきたのだろう。イネービュ様もきっとお喜びになる。
さて、長話は大概にせぬといかんな。メルザよ。ルーンの町とやらの案内、そなたが行えるな?」
「うん。多分俺様がいれば行けると思うぞ。ルインが心配だけど、へーきか?」
「一度開いてしまえば来れるだろう。さぁ早くゆくぞ……うん? しばし待て。おい! なぜ
お前たちまでくる」
「マミムメモマミムメモヤ、ユ、ヨしなって言ったんだけど聞かないヤツがいて」
「……時間はとらせねぇよ。すぐ済む」
「エプタ、勝手な事を……」
「本来は人の子に力をかすなんざごめんだね。だがこいつにはどうも悪い者に憑かれやすい気を感じる。
約束だからな……これでいい。後はお前が守れよ」
「あの時のお前か……エプタっていうんだな」
「俺たちの名前くらい覚えろ」
「ああ悪かったよ。一人ずつ記憶しておく」

 全員の名前を知り、記憶にとどめた。覚えにくいけど、舞踏会とかで一緒に踊るんだよな……。

「それじゃ今度こそ行こう。必ずティソーナを手に合流する。
町の方も心配だから気を付けて……っていってもブネが一緒なら敵がいたとしても殲滅か」
「僕らもいるから安心して行ってきてよ。ベルローゼは?」
「俺はここでこいつを待つ。この情景を深く記憶して技に磨きをかけたい」
「? よくわからないけど、頑張ってね。食事だけ持ってこれそうだったら持ってくるから」
「……ああ。すまんな」

 先生は桜の木の下に座ると黙想し始めた。か、かっこいい。なんて様になるんだ。

「それじゃブレディー。俺たちも行こう」
「手、繋いで。メルザ、やってた。あれ」
「ん? ああ。なんか妹が出来たみたいだな」
「えへへ。妹。ブレディー、嬉しい」

 俺はブレディーと手を繋ぎ、再度神殿へ入った。今度はブレディーも普通には入れている。
 メルザよりはだいぶ小さいから、非常に歩き辛いのだが……本人が喜んでいるからいいとしよう。
 ブレディーについては知らない事が多い。これを機に色々聞いてみようかな。

 そう考えながら神殿を見やる。正面にはヘリオトロープの紋様の壁がある。
 砕け散ったように見えたその部分はもう元に戻っていた。

「ブレディー、ここからどうすればいい?」
「慌てない。ゆっくり、ね? ツインと二人、機会、多くない」
「そうだな。なんかすごい流れで三夜の町から連れてきちゃったんだよな、ブレディーを。
俺の中で生き続けることになってしまったこと、すまないと思っている」
「ううん。ブレディー、ツイン、一緒。ずっと。嬉しい。とっても」
「そうか。飽きさせない自信はあるさ。何せこれでも波乱万丈に生きてるからな。
俺としては平和に誰にも迷惑かけず生きていたいだけだったんだけどな」
「神、人へ、常に試練を設ける。安息に生きる。難しい。極稀」
「言いたいことはわかる。多くの人間が悩みを持ち、苦しみ、考えて生きているんだよな。
世界は様々な災いに満ちているが、人の出来ることは楽しい、嬉しいを多く見つけて、それに従い生きていく
事なんだろう。俺には多くの嬉しいが出来た。だからブレディーにも、俺の嬉しいや楽しいを
沢山貰ってもらいたいんだ」
「ツイン、暖かい。悲しみと、優しさ、一杯」
「さぁ、その嬉しいと楽しいを守るためにも、ティソーナを取りにいこう!」
「うん。ブレディー、頑張る」

 再びブレディーの手を取り、歩き出す。
 ティソーナ、必ず手に入れてみせる! 
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