341 / 1,085
三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて
第二百九十五話 ブレアリアと二人
しおりを挟む
「もう、どこにいってたのよ! ちょっとルイン、こっちにきなさい」
「は、はい。その、すみませんでしたー!」
「うう、戻ってきたのはいいけど、あれで飛び出して戻ってくるの、恥ずかしいぞ……」
「懐かしい。昔ベルーファルクに妃になれと言われた事があってな。くっくっく、あやつ本気の
目をしておった」
「僕の曽祖父はどうしようもないほど助平だったと聞いているけど、まさか神の遣いにまで手をだそうと
していたのかい?」
「英雄色を好まずか。どこの世界の英雄ってのもそんなもんなのかねぇ」
「あら、ルインだってそうじゃないの。私たち全員妃にするんだし」
「はい?」
「そーなのか? 俺様のほかにももう同じことしようとしてたのか! こいつめ! えい!」
「してないって! サラ、また既成事実を!」
腕を組んでフンっと横を向くサラ。そりゃメルザ連れ出して飛び出してったら怒るのも無理はない。
今やメルザはみなにとって掛け替えのない明るい存在。太陽みたいなものだ。
「貴様らはいいな。人そのものの美しさだけを磨いてきたのだろう。イネービュ様もきっとお喜びになる。
さて、長話は大概にせぬといかんな。メルザよ。ルーンの町とやらの案内、そなたが行えるな?」
「うん。多分俺様がいれば行けると思うぞ。ルインが心配だけど、へーきか?」
「一度開いてしまえば来れるだろう。さぁ早くゆくぞ……うん? しばし待て。おい! なぜ
お前たちまでくる」
「マミムメモマミムメモヤ、ユ、ヨしなって言ったんだけど聞かないヤツがいて」
「……時間はとらせねぇよ。すぐ済む」
「エプタ、勝手な事を……」
「本来は人の子に力をかすなんざごめんだね。だがこいつにはどうも悪い者に憑かれやすい気を感じる。
約束だからな……これでいい。後はお前が守れよ」
「あの時のお前か……エプタっていうんだな」
「俺たちの名前くらい覚えろ」
「ああ悪かったよ。一人ずつ記憶しておく」
全員の名前を知り、記憶にとどめた。覚えにくいけど、舞踏会とかで一緒に踊るんだよな……。
「それじゃ今度こそ行こう。必ずティソーナを手に合流する。
町の方も心配だから気を付けて……っていってもブネが一緒なら敵がいたとしても殲滅か」
「僕らもいるから安心して行ってきてよ。ベルローゼは?」
「俺はここでこいつを待つ。この情景を深く記憶して技に磨きをかけたい」
「? よくわからないけど、頑張ってね。食事だけ持ってこれそうだったら持ってくるから」
「……ああ。すまんな」
先生は桜の木の下に座ると黙想し始めた。か、かっこいい。なんて様になるんだ。
「それじゃブレディー。俺たちも行こう」
「手、繋いで。メルザ、やってた。あれ」
「ん? ああ。なんか妹が出来たみたいだな」
「えへへ。妹。ブレディー、嬉しい」
俺はブレディーと手を繋ぎ、再度神殿へ入った。今度はブレディーも普通には入れている。
メルザよりはだいぶ小さいから、非常に歩き辛いのだが……本人が喜んでいるからいいとしよう。
ブレディーについては知らない事が多い。これを機に色々聞いてみようかな。
そう考えながら神殿を見やる。正面にはヘリオトロープの紋様の壁がある。
砕け散ったように見えたその部分はもう元に戻っていた。
「ブレディー、ここからどうすればいい?」
「慌てない。ゆっくり、ね? ツインと二人、機会、多くない」
「そうだな。なんかすごい流れで三夜の町から連れてきちゃったんだよな、ブレディーを。
俺の中で生き続けることになってしまったこと、すまないと思っている」
「ううん。ブレディー、ツイン、一緒。ずっと。嬉しい。とっても」
「そうか。飽きさせない自信はあるさ。何せこれでも波乱万丈に生きてるからな。
俺としては平和に誰にも迷惑かけず生きていたいだけだったんだけどな」
「神、人へ、常に試練を設ける。安息に生きる。難しい。極稀」
「言いたいことはわかる。多くの人間が悩みを持ち、苦しみ、考えて生きているんだよな。
世界は様々な災いに満ちているが、人の出来ることは楽しい、嬉しいを多く見つけて、それに従い生きていく
事なんだろう。俺には多くの嬉しいが出来た。だからブレディーにも、俺の嬉しいや楽しいを
沢山貰ってもらいたいんだ」
「ツイン、暖かい。悲しみと、優しさ、一杯」
「さぁ、その嬉しいと楽しいを守るためにも、ティソーナを取りにいこう!」
「うん。ブレディー、頑張る」
再びブレディーの手を取り、歩き出す。
ティソーナ、必ず手に入れてみせる!
「は、はい。その、すみませんでしたー!」
「うう、戻ってきたのはいいけど、あれで飛び出して戻ってくるの、恥ずかしいぞ……」
「懐かしい。昔ベルーファルクに妃になれと言われた事があってな。くっくっく、あやつ本気の
目をしておった」
「僕の曽祖父はどうしようもないほど助平だったと聞いているけど、まさか神の遣いにまで手をだそうと
していたのかい?」
「英雄色を好まずか。どこの世界の英雄ってのもそんなもんなのかねぇ」
「あら、ルインだってそうじゃないの。私たち全員妃にするんだし」
「はい?」
「そーなのか? 俺様のほかにももう同じことしようとしてたのか! こいつめ! えい!」
「してないって! サラ、また既成事実を!」
腕を組んでフンっと横を向くサラ。そりゃメルザ連れ出して飛び出してったら怒るのも無理はない。
今やメルザはみなにとって掛け替えのない明るい存在。太陽みたいなものだ。
「貴様らはいいな。人そのものの美しさだけを磨いてきたのだろう。イネービュ様もきっとお喜びになる。
さて、長話は大概にせぬといかんな。メルザよ。ルーンの町とやらの案内、そなたが行えるな?」
「うん。多分俺様がいれば行けると思うぞ。ルインが心配だけど、へーきか?」
「一度開いてしまえば来れるだろう。さぁ早くゆくぞ……うん? しばし待て。おい! なぜ
お前たちまでくる」
「マミムメモマミムメモヤ、ユ、ヨしなって言ったんだけど聞かないヤツがいて」
「……時間はとらせねぇよ。すぐ済む」
「エプタ、勝手な事を……」
「本来は人の子に力をかすなんざごめんだね。だがこいつにはどうも悪い者に憑かれやすい気を感じる。
約束だからな……これでいい。後はお前が守れよ」
「あの時のお前か……エプタっていうんだな」
「俺たちの名前くらい覚えろ」
「ああ悪かったよ。一人ずつ記憶しておく」
全員の名前を知り、記憶にとどめた。覚えにくいけど、舞踏会とかで一緒に踊るんだよな……。
「それじゃ今度こそ行こう。必ずティソーナを手に合流する。
町の方も心配だから気を付けて……っていってもブネが一緒なら敵がいたとしても殲滅か」
「僕らもいるから安心して行ってきてよ。ベルローゼは?」
「俺はここでこいつを待つ。この情景を深く記憶して技に磨きをかけたい」
「? よくわからないけど、頑張ってね。食事だけ持ってこれそうだったら持ってくるから」
「……ああ。すまんな」
先生は桜の木の下に座ると黙想し始めた。か、かっこいい。なんて様になるんだ。
「それじゃブレディー。俺たちも行こう」
「手、繋いで。メルザ、やってた。あれ」
「ん? ああ。なんか妹が出来たみたいだな」
「えへへ。妹。ブレディー、嬉しい」
俺はブレディーと手を繋ぎ、再度神殿へ入った。今度はブレディーも普通には入れている。
メルザよりはだいぶ小さいから、非常に歩き辛いのだが……本人が喜んでいるからいいとしよう。
ブレディーについては知らない事が多い。これを機に色々聞いてみようかな。
そう考えながら神殿を見やる。正面にはヘリオトロープの紋様の壁がある。
砕け散ったように見えたその部分はもう元に戻っていた。
「ブレディー、ここからどうすればいい?」
「慌てない。ゆっくり、ね? ツインと二人、機会、多くない」
「そうだな。なんかすごい流れで三夜の町から連れてきちゃったんだよな、ブレディーを。
俺の中で生き続けることになってしまったこと、すまないと思っている」
「ううん。ブレディー、ツイン、一緒。ずっと。嬉しい。とっても」
「そうか。飽きさせない自信はあるさ。何せこれでも波乱万丈に生きてるからな。
俺としては平和に誰にも迷惑かけず生きていたいだけだったんだけどな」
「神、人へ、常に試練を設ける。安息に生きる。難しい。極稀」
「言いたいことはわかる。多くの人間が悩みを持ち、苦しみ、考えて生きているんだよな。
世界は様々な災いに満ちているが、人の出来ることは楽しい、嬉しいを多く見つけて、それに従い生きていく
事なんだろう。俺には多くの嬉しいが出来た。だからブレディーにも、俺の嬉しいや楽しいを
沢山貰ってもらいたいんだ」
「ツイン、暖かい。悲しみと、優しさ、一杯」
「さぁ、その嬉しいと楽しいを守るためにも、ティソーナを取りにいこう!」
「うん。ブレディー、頑張る」
再びブレディーの手を取り、歩き出す。
ティソーナ、必ず手に入れてみせる!
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
進化転生 転生したら召喚獣ウルフィでした ~召喚獣が召喚の力を執行する~
紫電のチュウニー
ファンタジー
【サブ連載、土曜日二本更新中】
シロと二人、パン屋を営みながらゆったりと過ごしていた白井 杏珠。
シロのふわふわを感じながら寝ていたら、謎の進化する白い生物
ウルフィに転生してしまう。
その世界でルビニーラという召喚術士に突如契約され、従魔となる。
彼は召喚獣なのに奇妙な召喚術を使える異能者だった。
ウルフィを手にした彼女の夢は、召喚士としての頂点である紫電の召喚士。
成長と冒険の旅が始まろうとしていた。
オリジナル世界観で描くローファンタジーなストーリー
をお楽しみ頂ければ幸いです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる