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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百九十二話 妖神魔同士の手探り

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「ほう。確かに感覚が鋭い。赤白星の鎌!」

 先生がいつもの黒星の鎌の構えを取ったので、注意深く見ていた。
 だが見ていただけなのに、動き一つ一つが細かくわかる。人の持つ視覚という感覚以外にも
ソードアイとしての注力があった俺だが、そこから数段上にいった。
 動きを先読みできる感覚。しかしその威力があまりにも大きいと判断した俺は、神殿の横壁に
飛び、張り付いた。このくらい動けば壁に辿り着き、衝撃も弱くぴったりくっつける……つまり
第六感が引き延ばされた感覚だった。

「先生、危ないです。死にます」
「ふん。避けられる気がした。これも神魔とやらの影響か。先読みの度合いを調整せねばな」
「先生、行きますよ! 赤星の……? 技が湧き出る感覚……」

 頭の中に今までは出来そうにない事のイメージが溢れた。特に苦手だった遠距離攻撃のイメージが
強く湧き出る。

「赤海星の海流渦レッドシートルネード! 赤海星の乱れ赤海岩レッドシーロック

 海水を巻き上げる赤いトルネードを創造し、そこへ無数の岩をまぜ弾き飛ばさせる。
 軌道が見える……確実に先生へ向かうコースを選んだが……。
 盾を使わずあえて全部体捌きで回避している! 盾でも防げるはずなのに、変化した感覚を
楽しんでいるようだ。

 俺たちの戦いを見ていたのか、神の遣い九人……いや九者が何かの楽器を取り出し、はやしたてる。
 美しい旋律が俺の聴覚を刺激して、沸き立たせる。

「おい貴様ら……いや、止めても無駄か」
「先生、次は剣でいきましょう」
「ほう。俺に剣で挑むつもりか。いいだろう。打ち合いでこい」
「はい! 技無しで! そうしないと多分死ぬ! 剣戒!」

 コラーダを手に取り先生と向き合う。カットラスはひとまずお預けだ。一剣に集中しよう。
 壁の端にいる俺は、先生との距離がかなりある。先生はフォーサイトを手に、軽く振り回しているが
剣の音がやばい。一回振るっただけでヒュンという音ではなくブォンという音が鳴り響く。
 どこぞのビームサーベルかよ。俺も真似してコラーダを振ってみたが、こっちは無音な上に斬撃が飛ぶ。

「おい、まだ開始の合図は出してないぞ」
「すみません。一閃が強くなり過ぎてて斬撃がどうしても……」
「力の制御が甘いな。風圧を抑えろ。その分威力を高めて振れ」
「こうかな……斬撃を飛ばす時はこうか?」

 先生よりは軽い音だ。コラーダがやたらと扱いやすく感じる。こいつの扱いにも相当なれた。
 消さずに出しておくことも出来る。

「……来い!」
「行きます!」

 先生の間合いへわずかに右へそれつつ前進する。上段から振り下ろしつつ弾かれる位置を特定。
 上に跳ね上げられる予測を立てて、自分事上へ一回転して飛ぶ。
 神殿の天井に足を突き、肩口へ斜めにコラーダを振るう。
 フェイントは全て無効。斬りかかる方向とは逆……ではなく後方へ避けられる。
 そのまま踏み込み超至近距離にて剣での押し合いとなった。

「ぐぎぎぎ……」
「ふん。やるようになったな。剣のみでこれか。貴様の戦いは多様が売りだ。これなら……」

 ……って言った割りに一気に押し戻される。
 さらに力を加えられ、後ろに吹き飛ばされるが、着地は片手で容易だった。触った感覚が柔らかいもの
でも触れるようだった。五つの感覚制御だけでも人間の脳には負担がでかい。その領域からさらに二段階上へ
あげたものをさらにさらに引き上げる。そりゃ、訳が分からなくもなるな。
 使用している自分自身訳が分からずにいる。これも人が想像する範囲を超えた先だ。
 俺よりはるかに賢い人たちは、こんな中で戦っているのか。白い悪魔に乗っているやつとかな! 

「中距離で攻撃してみろ。あのデザートイーグルとかいうのは使わないのか?」
「あんなの先生に使用しても、盾で吸われて終わりでしょう?」
「そこを工夫するのがいつものやり方だろう?」
「っていきなり言われてもなぁ。技のイメージは一気に増えたけど、そうそう手の内はあかせませんて!」
「ならば俺も一つ試してみようか。妖赤白……この色は先ほどの桜だったな。妖桜花の散際」
「うおおおーー! 綺麗だけどやばい!」
「ほう。この技は風術の類があるといいな。イメージはあの砂漠でくらった竜巻か……」
「お願いします今は混ぜないでください!」

 無数の桜の花びらが鋭い斬撃となり襲ってくる。新しくイメージすることを先手でやってきた! 
 こんなのに暴風が加わったらひとたまりもない。先生もろとも切り裂くぞ。

「盾……範囲が狭い! 赤海星の名古屋球場……いや違った! やってる場合か! 赤海星のドーム!」

 色々間違えたが、ドーム状の赤海を盾に、花びらの斬撃を防いだ。
 あらゆる角度から降り注ぐ桜の花を模した斬撃は、動きの予測がし辛い。
 なにせあちらも神魔としての攻撃。先生は恐ろしいほど強くなった気がする。

「おい、なんだその技は。見てくれがどうにかならんのか。名古屋とか書かれているぞ」
「え? イメージに失敗した?」

 俺はどうやら自分を包むドームの天井部分に名古屋球場と書かれた看板をつけたらしい。
 何という無駄な使い方。
 
「これはですね。その……ここからビームがですね」
「何を言っている。次は……」
「いい加減にせぬか! 一旦解放せぬと身が持たぬぞ!」
「ちっ。いいところなのに邪魔を……」
「はぁ。確かにまだ覚えたてですから、解きますか。なんでしたっけ、解く方法」
「アペレ……いや、これは多分別の方法で切り替えらえれるな。見てろ。神魔解放!」

 すーっと先生の感覚が戻っていく。がくっと膝をつく先生。相当に消耗したようだが、それで済む位か。

「よし、俺も……神魔解放! ……あ……れ」

 俺だけその場にどさりとぶっ倒れた。
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