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第四章 戦いの果てに見出すもの

間話 過去編 連続話 シーザー・ベルディス ライラロとの出会い~その五

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「おいライラロ。そこの獣人二人連れて裏口から出ろ。俺が注意を引く」
「いやって言ったでしょ。もう離れないんだから!」
「勘違いするんじゃねえ。俺も後で合流するからよ。北側の門で落ち合うぞ」
「……絶対来るのよ。来なかったら許さないんだからね」
「ああ。こんな場所さっさとおさらばして甘い菓子でも頬張りたい気分だぜ。石を投げたのを確認したら
動きだせ。いいな」

 ……フーはいいとしても軍隊が俺たちを見逃すたぁ思えねぇ。奴隷落ちしてたこいつらがどうなるかも
わからねぇ。せっかく助けたのに取っ捕まったんじゃ寝ざめが悪くてしょうがねぇ。

 物陰から石を軽く投げて合図すると、さっそうと踊り出る。

「おいフー! 聞こえるか! 俺ぁシーザーだ。話を聞け!」
「……あなたたちはここで待機。私をご指名のようだ。獣人……それもしゃべるウェアウルフ族ですか。
はて、シーザーを名乗っているが……どういうことだ」
「しかし隊長。危険では……どうみても獣人です。すぐ始末すべきです」
「つまり無抵抗や無害のものでも容赦なく殺せと? そのようなこと、断じて我が部隊では
許さないと伝えたはずです」
「しかしですね……隊長の命令はあまりにも」
「ではあなたには我が部隊を退任して頂いて結構。副隊長のあなたがそのような態度では、部隊の
規律が乱れます。本日限りで解任します」
「くっ……本日限りだと……」

 隊員にそう告げたフーは、ウェアウルフへ向かい歩き出す。
 屈強そうなウェアウルフ。戦えばかなり手強いだろう……と思っていたが、すぐに緊張は解けた。

「おいフー。俺ぁシーザーだ。証拠にてめぇとの在学中に、アホ王子とやらかした事件の数々を聞かせてやろうか」
「っ! なぜそれを……ウェアウルフは喰らった人間の姿を模倣して人を襲うと聞いていたが、本人の
意思までは飲み込めない。本当にシーザーだとでも言うんですか?」
「ああ。妙な事件に巻き込まれた。この体はウェアウルフだが、ベルディスの悪夢とかいう神の禍いにやられた」
「……にわかには信じられないが、シーザーの特徴には一致する。詳しく聞かせてくれないか」

 シーザーはこれまでの出来事を話した。

「つまり他にも獣人がいるのですね……あまり言いたくはないのだが、先ほども一人、部下を
解雇したばかり。簡単に亜人や獣人を殺そうとする。今のあなたでは殺されてもおかしくない。そうそうに
この大陸を逃げなさい」
「そのつもりだ。おめぇが見えたがそのまま出ていくのは危険と判断して、裏口から三人逃がした。
予想は当たっていたようだ」
「その方たちは今どこに?」
「北門に向かわせた。エデンから他大陸へは遠い。きつい旅になるぜ、まったく」
「あなたならきっと逃げのびれるでしょう。トリノポートへ行けば獣人や亜人が多い。
無事逃げれるように私もサポートを……」
「必要ねぇよ。おめぇは軍人。俺ぁ奴隷商の護衛。昔も言ったはずだぜ。余計な気遣いは無用だ、フー。
おめぇと俺が語らうのは戦っている時だけ。そのときが最高に楽しくおめぇと会話できる時だってな。
まぁ俺の方が強くなってるかもしれねぇがな。ガッハッハ」
「ふふふ。ウェアウルフになっても、あなたは変わっていないのですね。人助けをして獣に落ちる。
実にあなたらしい。本当に在学中あなたと友になれてよかった。私も決めました。
軍をやめ、一介の武人としてあなたと戦うために修行をすると。十年……そう十年後に落ち合いませんか? 場所はデイスペル。もちろん、勝負をするという事で、です」
「そんな先の話、覚えてるかわからねえがいいだろう。アホ王子は連れてくるなよ? あいつの固さは反則だぜ」
「彼は彼で忙しいようですから、私たちだけの秘密にしましょう……む、何かおかしい。
ばかな!? 私の部下が勝手に火を?」
「ちっ。そこまで獣人、亜人を嫌うかよ。おいフー! おめぇは部下をまとめあげろ! さすがにおめぇの
部下は殺したくねぇ。もうこの都には俺以外三人しか残ってねぇはずだ。火なんかつけても……」
「その三人が狙いかもしれない! 急ぎなさい! 私は部下を止めてくる!」

 急いで動き出す二人。北門に向かったシーザーは、木の上にいるライラロたちを見つける。

「うぉおおおおおお! こっちだクソ人間が! せっかく生かしたやつらを殺そうとするんじゃねえ!」
「獣人如きが。どうせもうこの軍隊にはいられん。始末してやる」

 スラリと剣を引き抜き構える兵士。だが背を向けたのが悪かった。

「水竜の息! あんたばかね!」
「燃斗」
「氷斗!」
「ぐはっ……なんだと……こんなガキが幻術……」
「オラァ! 命はとらねぇ、気絶してろ!」

 もんどりと崩れ落ちる兵士。危なかった。だが次が来るとも限らねぇ。都内は既に火の海。
 フーなら大丈夫だろうが、大した食料も持ってねぇままだ。
 兵士が意識のないことを確認して木を背もたれにして置いておく。武器はちゃっかりもらっておいた。

「ベルディスーーー! 受け止めてーーー!」
「なっ!? ライラロてめぇ、どんな降り方してきやがる。はしたねぇ」
「何いってるのよ。待たせるあんたが悪いんじゃない。さぁこんな場所、さっさと出ましょ」
「あの、僕たち……」
「一緒にいっていいのですか?」
「はぁ。おめぇらもまとめて来い。亜人、獣人に住みやすいっつー場所まで行くぞ。おめぇら名前は?」
「……わかりません」
「僕もわからないです」
「……んじゃスラっとしたそこの木みてぇな女がシャージャ。
そこの石みてぇな髪色のおめぇさんはハジャルでどうだ」
「ええ。命を助けて頂いたあなたがつけてくれるなら。私はシャージャです。よろしくお願いします」
「僕、女の子だけどハジャルってちょっと男の子っぽいです」
「何よあんた。ベルディスがつけちゃった名前に文句でもあるの?」
「いいえないです。よろしくお願いします。あの、ご主人様。食べ物沢山持ってきちゃいました」
「おぅ、でかしたぞハジャル。さぁ兵士に見つかる前にとっととずらかるぞ」

 こうして彼らは無事エデンを脱出して旅に出る。
 ライラロは固い決意を胸に、ベルディスと共に歩みだす。
 未来永劫彼を夫にするために。
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