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第四章 戦いの果てに見出すもの

間話 過去編 連続話 シーザー・ベルディス ライラロとの出会い~その四

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 豊穣の鐘が鳴り響くと、オオカミのような人のようなぶれた存在が豊穣の鐘の上に立ち、ライラロや
奴隷たちを見渡した後、シーザーと倒れたウェアウルフを見る。

「よく戦った。ベルディスよ。生存者はこやつか。残りは邪魔だ。消えよ」

 フッ……とウェアウルフが消え、シーザーだけが残る。

「シーザー! 生きているのね。よかった。でも酷い傷……このままじゃ。なおして、なおしてよ!」
「ぐっ……俺ぁもうたす……からねぇだろ……」
「望みを言え。貴様の欲を見せよ。何を望む」
「……こいつ……らの、足を……治せ」
「何言ってるのよ! あんた、死んじゃうじゃない。いやよ。いやよそんなの。いや! 私の足なんtね
どうでもいい。この子たちだって私たちを殺そうとしたじゃない!」
「なん……で」
「おなか、おなか空いたよぉ」
「こ……んな事するやつに、生かされるなんざ……まっぴら……ごめんだ……ぜ」
「……人の子よ。なぜ貴様と先ほどのやつだけに自我があったか。それは他者のために動くものだった
からだ。先ほどの奴は奴隷商人。奴隷解放を条件に使役したようだ。其方は何の条件も無く、誰かのために動いた。
そして、願いによっては一生獣落ちのまま生活を強いられ、誰一人生かしてはおかぬ予定だった。
だが貴様は己の命すら顧みず、誰かのために生を使用した。真の人間が持つ美しさを見せた。
それを称え、お主らの傷を癒し、其方を元の姿に……」
「お……い。勝手に……決める……な。俺ぁ……この、体の……ままでいい。
どうせ……姿を変えられ……んなら、こいつ……をいつでも……人の姿に……なれるように
……しろ」
「そこまで望むか。ある意味強欲。それも他者のためにか……気に入ったぞ。シーザーとやら。
お主は今日からベルディスの称号、その悪夢を一心に受け生きるがよい。
ウェアウルフとしての身体能力、人としての優しさ。その二つを併せ持つ英雄として我が力の一旦を
其方に授けよう。我が名はシンジン。時折供物を我に捧げよ。……其方の願い、全てをかなえてやった。
有難く思え。ではな」
「……好き放題言いやがって。しかしなんて奴だ。本当に神だったとは。確実に致命傷だったぞありゃあよ」
「足が治ってる……なん……で。なんで、なんで! なんで私のことばっかり! 
なんでよ! あんな奴隷たち
放っておいて好きにすればいいじゃない! 私なんて放っておいて、さっさと人間に戻って、自由に
生きればいいじゃない! なんで、なんで……なんで。もう一生、その姿のままじゃないのよ!」
「俺ぁこの姿、案外気に入ってんだよ。脆弱な人間の体に嫌気がさしてたところだ。
おまけに眠らなくてもいいから隙もねぇし、かっこいいだろ?」
「嘘よ。本当は、人間に戻りたかったんでしょ。自分が助からないとわかって……それで。
うぅ……私……私決めたわ。あなたのお嫁さんになる。シーザー……ううん。ベルディス。私はあなたの
傍から離れない。ずっと一緒よ」
「はん、ガキがいっちょ前に何言ってやがる。俺ぁこの体で強さを求める。武器も作りてぇし
できる戦い方も増やしてぇ。おいそこの奴らももう足は治ったろ。自由に動ける。
まずは腹ごしらえをしねぇとな。ついて来い」
「いいんですか? 僕らはあなたを……」
「ごはん食べれるの? ごめんなさい。痛かったですよね」
「おめぇらの攻撃なんざ大してきいちゃいねぇ。俺ぁ誰にも負けてねぇからな」
「本当にお人好しね。そこの獣人のあなた、なかなかいい女だけどあんまりベルディスに
近寄らないでよね」
「ひっ……はい……」

 やれやれ、どうにか生き延びたが、この先どうしたもんかねぇ。
 ひとまず食料は確保できそうだ。ついでに供え物とやらもしてやるか。

 豪勢な民家に適当に入り、食料を確保する。相当腹が減っていたのか
 奴隷たちはおいしそうに食べた。ここには大量の食料があったが腐敗しているものも
 多かった。 干し肉類などが多かったのでそれらを供物として豊穣の鐘に捧げた。

 その最中……騎兵らしき軍隊がやって来た。

「おっと。こりゃやべぇな。異変に気付いたのか軍隊のお出ましだぜ……少し様子を伺う。
おめぇらは隠れてろ」
「いやよ。私も行く! 放っておくとすぐどこか行くんだもの」
「いかねえからおとなしくしてろ! ……ん? あいつは……」

 物陰から指揮を執っている奴をみた。見慣れた正義感ツラ。
 そこで指揮しているのはフー・トウヤだった。
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