上 下
285 / 1,085
第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百五十一話 幻魔神殿の中には

しおりを挟む
 ルインは幻魔神殿前の戦いを終え、装備を再確認してから建物の中をのぞきこむ。
 建物の中は既に暗く見えづらい。しかし何者かの気配はある。
 音を立てず進入して近くに身を潜める。目もだいぶ慣れてきた……ジョブコンバートの
儀式中だろうか? 
 だが儀式の間にいる者は横たわっているように見える。
 ……何かを唱える声が聞こえてくる。
「金の幻、銀の幻 祈りを持って死するかのものの真髄を呼び覚まさん。
持つべき力をカードの形に」

 すると横たわっているものがフッと消え、一枚のカードに変わった! 
 まさか……ジョブカードを死者か生者どちらかから作ったというのか? 
 セリフからして前者か……幻魔神殿、ここはやはり闇が深く危険な場所だ。
 バウザーもこのことを知っているのだろうか。

「誰だ!」
「ちっ 気付かれたか。お前こそ誰だよ」
「おやぁ、まさかこんなところで君と出会えるなんてね。実に久しぶりだ」
「? 俺はお前なんて知らないけどな」
「クックック。よりによって幻魔神殿で再会するとは。運命を感じるねぇ、充実青年」
「なっ!? お前はキャットマイルド? ばかな……いや、お前を引き取ったのは
ライデン。こうして解き放たれていてもおかしくないか」
「いいや。正確には大臣ジムロだけどね。まぁいい、おかげで復讐が出来そうだよ。君たちに
やられてから随分と苦渋を舐めさせられた。もうあの時のような失敗はしない」
「強がりはよせよ。あの時よりはるかに強いぜ」
「じゃあ小手調べといこうか。狐空列拳!」

 無数の拳気が俺に迫る。シールドで攻撃を回避しながら様子を伺う。
 こいつの狙いが見えるまで迂闊な動きは出来ない。ベルディアもサラもまだ出さない。

「逃げてるだけかい? 狐武連鎖脚!」

 今度は回転しながら蹴気を四方に放っていく。だが……どれも回避は余裕だ。

「……へぇ。本当に強くなったんだね」
「お前、部下を潜ませて狙ってるだろ。十三人いるな」
「なっ!? 何を言ってる……いや、それも能力だ、そうだろ?」
「早く出せよ、また暗鬼とやらになるんだろ?」
「……いいよ、見せてやる。ただの超暗鬼じゃない。ようやくその域にまで達した
絶暗鬼の力をね」
「……早くやれよ。その間に部下は全滅させる」
「クックック。何を……」
「サラ、ベルディア! 変幻ルーニー!」
『やっと出番ね』
「ホロロロー」
「右後方七人、左後方四人、左前方二人。後方はサラ、ベルディア。前方ルーニー! いけ!」

 一斉に動き出す全員。更に追加でター君、ホー君、デスティを出す。

先に仕掛けたのはサラだった。
「バーストウイング!」

 広範囲に羽が広がり、それらが突き刺さった箇所が盛大に爆発する。さすが守護者の技。
 威力も範囲も申し分ない。

「練気散弾!」
 
 雷をまとった気弾が次々と飛び交い、身を潜めていた常闇のカイナが倒れていく。
 ルーニーも二人のカイナを仕留めていた。

「なっ、なんだと!? 一体どこから湧いた? なんだこいつらは……くそ、こうな……」
「剣戒! 油断しすぎだよバカ。その暗鬼の新しいやつを待つとでも思ったのか?」

 キャットマイルドの胴体を切り離した。だが……俺のモンスターたちはキャットマイルドに攻撃を
開始しようとする。出しておいて正解だった。急いで後退する。

「ルイン、やったっしょ?」
「なんで警戒してるの? あいつ死んだよね?」
「いいや、猿芝居……いや狐か。化かし合いはやめろ。もう終わってるんだろ、さっき言ってた
絶暗鬼化とやらは」
「……クックック、あーっはっはっは! いい、いいね君。玩具として最高だよ! 楽しもうじゃないか」
「まずい! サラ、ベルディア! いや全部戻れ! 強制だ! 変幻ルーニー!」

 出していたモンスター含む全てが封印へと戻る。

「狐竜衝覇!」

 キャットマイルドが地面を強く打ち付けると、幻魔神殿の床が全て崩れ落ちていく。
 バカげた力だ。この強さ、師匠並みの腕力ってことか。

「滑空! 飛翔撃!」
「クッ、空中で滑空しやがった! くそがっ」
「っ! 妖楼!」

 飛翔撃で一撃浴びせた。防御力自体は暗鬼化前とさほど変わっていないように思える。
 下は……アンデッドの巣靴になってる! くそ、数が多い。
 試してみるか……「妖氷造形の術、氷結の大地!」

 広大とは言えない範囲に氷を敷き詰めて着地した。そのまま奴に氷塊のツララで攻撃する。

「チッ、氷術まで使えるようになったのかい。侮れないね。だが、これは躱せない。流星槌!」
「グッ……てめぇそれは俺の元暗器じゃないか!」
「拝借したに決まってるだろう。便利で助かるね、これは……ほらほら、どんどんいくよ」
「アイアンクラッシャー! 便利さじゃ負けねぇ!」
 流星槌をアイアンクラッシャーで相殺していく。
 くそ、決めてにかける。コラーダで一閃したいところだが、足場が悪い。
 かといってサラを出せば狙われるのは目に見えてる。
 もっと戦いやすい場所に……建物ごと切り裂くか? いや、そこまでの力を使うのは得策じゃない。
 こいつだけとは限らないんだ。
 んじゃここは一旦、離脱としますかね。

「バネジャンプ」
「なっ!? なんだその跳躍力は。何なんだお前は!」
「お前に言われたかないね。それじゃ、またな」

 バネジャンプを使用し、蛇佩楯と合わせて飛んでもない高さまで飛翔して、入口まで戻り
外に出る。当然すぐ追ってくるだろう。
 そして俺は……以前封印したトードギラというモンスターの擬態を使用して身を潜めた。

「どこにいった? まだ遠くには逃げてないはずだ。冗談じゃない、絶暗鬼化までさせられて
逃がしたらブレンダーの奴に笑われるだけじゃすまない! くそ!」
「擬態奇襲! もう終わりだよ。お前の本体は影だろ」
「ぐあーーーー! な、なぜ……」
「建物の地下じゃ影、わからないからな。外に引っ張り出さないと倒せないんだろ、どうせ」
「こんな……ところで……」
「もうお前の出番は終わってるんだよ。とっくにな」

 ようやくこいつとのケリがついた。俺はいつのまにかキャットマイルドを苦なく一人で倒せる程に
成長したらしい。コラーダの力にほぼ頼らずにだ。
 幻魔神殿はひとまずいいとして、イーファたちが気がかりだ。ブレンダーとかいう奴はそっちにいるのか? 
 急いで合流しよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】ファンタジー陵辱エロゲ世界にTS転生してしまった狐娘の冒険譚

みやび
ファンタジー
エロゲの世界に転生してしまった狐娘ちゃんが犯されたり犯されたりする話。

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...