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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百四十六話 いくぜみんな!

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 イーファが真なる夜のエリアへ向かっている頃、ルインたちは幻魔神殿へ向かっていた。
 三夜の町の幻魔神殿は何度か訪れている。地下のガーランドのアジトへも赴いたことがあり
場所は把握している。

 幻魔神殿にはほとほとろくな思い入れがない。
 特にデイスペルの幻魔神殿は最悪だった。一体どんな神を祀っているのか、もう少し
この世界の神について古代樹の図書館で調べたかった。ベルータスの一件や
キゾナ大陸の一件が収まらないとどうにもならない上、この惨状。

「平和とは程遠い世界。そう思わないか、バウザーさん」

 目の前に見知った顔。ローブを着て髭を蓄え、もはや見慣れた佇まいだ。

「そう思う。助けに来てくれたことには感謝したい。お主は味方か? 」
「どうだろうな? これはライデンの差し金じゃないのか?」
「わからぬ。だがライデン殿はこの町を守ろうとしていた」
「どういうことだ! あんたらは俺たちの敵じゃないのか?」
「違う! 私やライデン殿はこの国を思って行動している! ええい、今は話は後だ! 
助けに来たのなら手助けしてくれ!」
「わかったよ、その代わり背中は預けないぜ! 変幻ルーニー!」
「ホロロロー」
「思う存分暴れてくれ、ルーニー! この辺の敵対者を一掃する! 
全開で行くぞ! トウマ! ター君! グリーンドラゴンのグリドラ! ホークフレイムのホー君! デスマンティスのデスティ!」

 
 ここに来るまでに馴染んでいるアクリル板の中でも強い個体。
 一面を覆いつくすモンスター軍。呆気にとられるバウザー。
 あんたが敵でも味方でも関係ない。
 妖魔の特殊能力を超え、今俺の軍団は動き出す。

「いくぜみんなあああああああ! 常闇のカイナ、殲滅させるぞ! 赤星の津波!」

 ばさーっと小さい波が打ち寄せる……が広範囲の極小攻撃に、モンスター全軍が動き出した! 
 例え攻撃が弱くても、全員が動き出す事に意味がある。
 ターゲットの反応は十六! 

「サラ、ベルディア。まだ出ないでくれ。建物の中にもいるはずだ! 奇襲したい」

 二人は出てこないので恐らく伝わっている。ここは俺たちで……あら? 
 すでに大半の常闇のカイナを血祭に上げてる我がモンスター軍団。
 無理もない。ドラゴン二匹にキゾナ大陸で散々苦戦を強いられた
魔獣に、物理攻撃がまるで効かない強力な氷術や火術を使うター君。

 こんな奴ら同時に攻められたら俺は撤退する。撤退させないけど……な! 

「アイアンクラッシャー」
「ぐあーー!」
「風臥斗! すまない、呆気にとられた」
「ここはいい。中に敵がいるならそっちに回ってくれ!」
「だめだ、中にいる奴はわしの手に余る!」
「情けない事言うな。あんたここの神殿長なんだろ?」
「わしはライデン殿の部下。ここに派遣されて幻魔神殿の神殿長兼
ガーランドの管理をしているだけだ! 本来はガーランドの運営を任されておる」

 どっちでもいいけどここにいると邪魔なんだよな。
 範囲攻撃が多いから巻き込んでしまう。

「……町民は俺らが助ける。あんたは避難してくれ。その代わり……」
「ぐっ……何を……」
「悪い。後で話を聞かせてくれ。アデリー! こいつをイビンの元へ。縛っておけとジェスチャー出来るか?」
「ウェィ!」

 手をシュルシュルとロープのような雪に変えてバウザーを巻いてみせるアデリー。
 なんて優秀なんだ。

「それじゃ、任せたよ。アデリー!」
「ウェィ」

 気絶させたバウザーをアデリーに託した。その間に俺のモンスター軍団は神殿付近の常闇のカイナを
全滅させていた……少々やり過ぎた感はある。
 トウマだけでも十分だったか。

「全員一度戻す。お疲れ様! コウテイも一度戻すぞ」
「ウェーイ!」

 手を振ってすーっと消えるコウテイ。

「変幻ルーニー」

 ルーニーも一度戻して辺りを警戒する。ターゲットに反応はない。だが闘技場の事もある。
 こういった時こそ一番油断ならないのを覚えている。

「下か! バネジャンプ!」
「ちっ なぜ気付きやがった!」
「勘だよ! 二度も三度も不意打ちで殺されてたまるか! 赤海星の水鉄砲」
「ちっ 何だこの技は? てめぇ妖魔か?」
「なんだと? 誰だお前は!」

 驚いた。妖魔かどうか問われたのは地上で初。何者だこいつは。

「おいおい、これから死ぬ奴に名乗ってどうするんだ?」
「そりゃこっちのセリフだね。舐めるなよ」
「くだらねぇ。実力差もわからねーのか? それにもうじき毒で死ぬぜ」
「はぁ? 攻撃なんて受けてな……ちっ かすってるのか」

 わずかに切り傷がある。

「そいつは呪い毒っていってなぁ。すげー痛みを伴いながら死ぬ。
いい声聞かせてくれよ」
「ぐ、ぐああーーーーー! せめて名前位聞かせて死なせろ!」
「くっくっく。いいだろ。俺の名はラプス。流毒のラプスといやぁそこそこ名前が知れてるんだぜ」
「ぐおおーーーー! まさかあのラプス様とは! それでどうやってここに?」
「フェルス皇国から行ける道からに決まってんだろ。十年ルートは一日もいれねぇからな。
ベルータス様もとんでもねぇこと考えるぜ。地上を裏から支配していきアーティファクトを集めまくって
から地底に戻るから、何人か裏で操れとはよ」
「うげぇーーー、まさかあのベルータス様が! 今どこに?」
「知るかよそんなの……おい、てめぇなぜくたばらない?」
「ぬがぁーー、もう死にそうだ……最後に教えてくれ、あんたの他に……ああいいや」
「がはっ……そんなばかな……」

 コラーダで真っ二つになるラプス。

「なんで……死な……」
「知るかよ。呪いが効かない理由は俺が聞きたいくらいだわ。
ていうか演技に自信がついたよサンキュー」

 まさかここにベルータスの部下が潜んでいるとは。しかもこいつは以前に
リルから聞いたベルータス七柱、流毒のラプス。こいつも生きてやがったのか。
 急いで知らせたいが……まだ油断ならない。いつさっきみたいに襲われるかわからない。
 こいつに奇襲されたのが俺でよかった。
 気を引き締め、まずは現状を把握するため幻魔神殿の中へ向かおう。
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