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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百四十二話 ウガヤ洞窟最深部 三体のサイクロプス戦

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 相手は巨大な三体のサイクロプス。こいつらの戦闘力はモンスターの中でもかなり高い。
 何せ巨体にも関わらず瞬発力に優れ、腕力、知力、体力、精神力まで兼ね備えた屈強な戦士だ。

 それが三体も並ぶとなると壮観。しかも以前ここで戦った単独個体よりでかい。
 間違いなく以前戦ったサイクロプスより強い。
 アナライズしても前回と同様の結果では目の力の無駄遣いだ。
 なるべく温存したい……ここはメンバーを割り振って戦おう。
 確か術があまり効果がないんだったな。

「パモは幻術がいまいち効果が薄いので封印しておく。俺とイーファ、リルとメルザと
ドーグル、ファナとサラとベルディア。倒したらいずれかの援護を。
リルは素早いから斧、ファナたちは前線で攻撃を与えやすいこん棒を相手にしてくれ。
俺が剣を引き受ける」
『ああ!』
「ふん、誰が一番活躍するか勝負よ!」
「望むところだわ! 一番活躍したやつがキスの権利よ!」
「いいっしょ、メンツ的に楽勝だし」
『はぁ? 上等よ!』

 ……おっかないよー、アネさん助けて。

「君と主が組む方がいいんじゃないか? 僕は遠距離攻撃も出来るよ」
「これからの闘いを想定してだ。メルザは妖魔陣営と行動を共にして戦う。
リル、お願いだ。メルザをしっかり守ってやってくれ」
「勿論だよ。任せておいて」

 お互い頷き会い、気合を入れる。メルザも覚悟を決め、闘志を燃やしている。
 憎き相手だろう……無理もない。冷静ではあるから大丈夫だろう。

「変幻ルーニー! どうだ、いけるかイーファ?」
「私が先制し、その後一体化しよう。攻撃を試してみないと一、体化した後
フォローに回れないかもしれぬ」
「わかった! メルザの招来が済んだら作戦開始だ」
「攻撃をガードできそーな奴呼ぶからよ! 
主として権限を混合行使。
邪、土蛇の斗。改元せし二つの重なる理。
邪流出乃ジャルディナ土巳出乃ドミルディナを我が元に」

 そうか、邪剣ならいいけん制になるし攻撃はあたるかもしれない。
 土蛇は初めてだな。どんなフォローが出来るんだ? 


「ではゆくぞ! 炎雷の終焉」
「ぐぉおおおおおおおお!」

 正面を扇状に焼き払う炎と雷の合成術か? 少し違う気がするが秘術だろう。
 三匹のサイクロプスそれぞれにあたるが、そこまで効いている風には見えない。

「あまり効果がない。術に相当な耐性がある! 気をつけよ! では一体化する」
「その間一匹引き付ける! 頼むぜルーニーも。赤海星の水鉄砲!」

 剣持ちを攻撃して引き付ける……というかイーファに全員向かってきてるな。
 スカート戦士ルイン……ではなく丈が短めのローブをきてもらったので
ローブを着ている戦士ルインと化した。

「邪術釣り糸」
「念動力・岩」
「いけー! 邪剣! 土巳出乃は防御壁つくれー!」

 こん棒持ちの動きが一時的に止まる。妖術はそれなりに効くのか? 
 二本の邪剣と大きな岩が斧持ちを攻撃する。それと同時に土色の蛇が大量に発生。
 地を這いずりながら要所要所に土の壁が出来上がる。土斗関連は本当に便利だ。
 戦場全体をサポートするつもりか。無理しやがって……。

「イーファ、メルザたち後衛からなるべく距離を離したい。あいつらの裏側まで突き抜ける! 
妖雪造形の術、コウテイ、アデリー!」
「ウェーイ!」
「ウェィ」
「アデリーは戦場をかく乱してくれ! コウテイ、頼むぞ!」

 コウテイに乗り、アデリーを従えて戦場の中央を駆け抜ける。

「ぐぉおおおおおおおお!」

 剣サイクロプスがこちらへ向かって剣を振り回す。しかし華麗に避けてみせるコウテイ。
 アデリーがくるくると回りを滑り、サイクロプスを挑発する。アッカンベー付きで可愛いが
見とれている場合ではない。

「っ! 妖楼!」
「ごめんっしょ。何か攻撃対象がふらつく!」
「問題ない、気をとられるなベルディア! 思い切りの良さはいいが、連携してくれ!」
「仕方ないっしょ! 水浴びせ蹴り!」

 足先だけ人魚になり、尾を蹴り上げるように上へやると、水撃が上空に上り上げ
蹴りを入れる形となった。初めて見る類の技だ。表に出しちゃいけない技なのかもしれないな。

「剣戒! コラーダの一閃! ルーニー改!」
「ホロロローー!」
「ぐぉおおおおおおおお!」

 ルーニーと攻撃が重なるようにコラーダを振るい、
深々と剣持ちに傷を負わせた。
 封印値は57! もう少しだ。

「ルインよ、私の力を見せよう。あまり術が効かない相手なので
可愛い青銀スライムによる力の方ではあるが」

 イーファは姿を槍状に変えた。おいおい、まさか……。

「イーファの槍。投擲して使え。変化してルインの居場所まで戻る」
「かなりの形状に変えられるのか?」
「修行が必要だろう。今は槍のような単純な形状が精々だ」

 イーファの槍と化したその武器を手に持ち、様子を伺う。
 そのまま投げるよりは隙を作ろう。そうだ、これも試さないと。

「ター君、頼むぜ!」
「……」

 ターフスキアーのター君を出す。まだ攻撃していないので動かない。
 ター君はほぼ物理攻撃が効かないから比較的出しやすい。

「赤海星の水鉄砲!」
「……」

 攻撃するや否や、氷塊のツララで攻撃し始めた。
 これは助かる! 

「ウェーイ!」
「コウテイ、乗せてくれ! 隙を作る。ルーニー!」
「ホロロロー」

 上空からルーニーに合図して攻撃させる。
 振り回す剣はことごとく土蛇に阻まれている。術使用量が普通の術使いと比べて
桁違いだ。無尽蔵なのか? メルザは。

「いけえーーー! イーファランスロー!」
「ぐぉおおおおおおおお!」

 イーファランスとター君の氷塊のツララ、ルーニーの斬撃を受け
一匹の剣サイクロプスが封印される。

「フォローに回る! リル!」
「必要ないよ。サラをお願い」

 リルの方を見ると、斧持ちは完全に攻めあぐねていた。
 土蛇の数が尋常ではない上、呪術と妖術の通りがよく、すでにズタボロ。
 リルが封印にかかる。

「呪印、烈天の鳳凰」

 リルの呪印術の中でも高い威力の術。斧サイクロプスは、シュルシュルとリルの腰に封印された。

「やっぱり義手がおかしい! いう事きかねぇ!」
「メルザ、一旦外せ! 後は休んでていい!」
「けどよ、俺様が……」
「後はみんなに任せろ。俺がいないときも同じように無茶したら絶対ダメだ。
ここにいる全員を信じろ。お前が主なんだ」
「っ! わかった、ちゃんと休む。みんな頼んだぜ!」
「ベルディア! イーファと戦ってくれ! 一番仲いいだろ?」
「イーちゃん? 槍になってるっしょ。槍は兄貴の専門なんだけど」
「ベルディー。格闘爪なら多分変われる。いくぞ」

 イーファはエルフ型に戻ると素早い動きでベルディアの元へ。
 格闘爪へと姿を変え、ベルディアが足元へ連続攻撃を放つ。
 ファナとイーファ。どちらが変身最強になるかな。
 いやファナの場合はモンスター特化型か。武器にもなれるようだが、いずれは
タッグを組ませたい。

「イーちゃんとの連携っしょ。くらえ! アシュタリフクロー!」
「ぐぉおおおおおおおお!」

 近接で左右にステップしながら次々と拳を放っていく。フィニッシュに
相手の股を潜り抜け突き抜けながら内モモに甚大なダメージを負い、サイクロプスは膝をついた。
 格闘センスは俺より高い。修練の賜物だろう。

「サラ、苦戦してるな。大丈夫か? ああ……お前ファナと
足の引っ張りあいしてるのか……」
『こいつが悪いのよ!』

 はぁ。人選ミスったわ……三人の実力ならもう終わってる頃なのに。
 ファナはアルノーから戻り、トランス状態を解除した。あの状態を維持するのは大変だろう。

「サラ、そいつ封印しないと勿体ないだろ? いくぞ!」
「うん!」

 サラと上手く連携できるかわからないが、とにかくぶっつけ本番。やってみよう! 
 サラと手を取り合いこん棒サイクロプスと対峙する。

「赤星の……『運命の赤い糸!』

 縛邪術激糸と赤星の小星が重なり、鋭い赤糸がサイクロプスを切断し、サラへと封印された。
 俺に封印されないのはよかったが、何だよその名前は! 赤と糸しか合ってないじゃないか! 
 せっかく格好よく赤激の星糸とでも呼ぼうとしていたのに。 

「やったわー! 結ばれたわ!」
「おいばかやめろ。ライラロさんを思い出す……」
「何が運命の赤い糸よ!」
「意味がわからないっしょ。結ばれる相手はサイクロプスね」

 おーっとベルディアさんが鋭いキラーパス! これは受け取れない! 

「ふん、何もしてないくせに偉そうに。私が一番の活躍ね」
『はぁ?』

 燃える女子三人はおいておき、リルとメルザの方へ。

「大丈夫か、メルザ。お前その義手……」
「すごい暴れるんだ。もともと幻術で動かしてたからよ。制御できなくて」
「ニーメには調整してもらったんだよな。困ったな、しばらくは外して
置いた方がいい」
「……うん、だから起き上がるの手伝ってくれよ」
「疲れたろ。おぶっていくから」

 激戦を終えた俺たち。サイクロプス三体をそこまで苦にせず倒せた。
 当然俺一人では無理だ。本当にいい仲間に恵まれたよ。
 

 部屋を見ると宝箱が三つ。紫電級は無いが、赤雷が一つと通常箱が二つ。
 合計三つの通常宝箱と、一つの赤雷が手に入った。

 戻って鑑定したら、しっかり休んで明日に備えよう。
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