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第四章 戦いの果てに見出すもの
第二百三十七話 ペンギンを作ろう!
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ルーンの町彫刻場。入って直ぐは展示室になっており、現在作品は時計しかない。
そう……ここにはまだニーメとアルカーン製作の時計しか飾られていないのだ。この世界には
幾度か絵画やツボ、木彫りの物などは見たのだが、さして芸術文化は進んでいない。
妖魔の国の方が美しさを重んじる文化があるように思える。
いい絵描きさんや彫刻にはまってくれる者がいたら嬉しいんだけどな。
彫刻場の奥が一応工房になっている。全員を奥へ案内すると、ブルザさんがいた。
「やぁブルザさん。こちらへいらしてたんですね」
「おう、ルイン君。最初は半信半疑だったが、来てみたらとんでもない所だった。
言われた通りにガンツとモギにも話しておいたぞ」
「ガンツさんはいいけどモギさんは入れるのかな。メルザの許可をもらわないと……」
「もう来ていたぞ? まずかったか?」
「え? いえそういうわけでは。おかしいな。メルザの許可が無くても入れるのか?
後で試してみよう」
「とにかく、ガンツと二人でこの町を盛り上げるよ。ここの彫刻室? というところに
以前話していたような道具をおいておいた。好きに使ってくれて構わん」
「ありがとうございます。お金は……」
「いらんいらん。ここはなんでもキゾナ大陸に一瞬で行けるそうじゃないか。
あっちで商売すればすぐ儲けなど出てしまうと、話し合っていた所だよ」
「そうでしたか。ただ、全員にお話ししたとおり……」
「今は危険だから待ってくれってことだったな。俺たちも仕入れなどを少し控えて
先に町の把握や畑作業なんかを手伝っているところだ。落ち着いたらまた教えてくれ」
「ええ。ではまた」
去っていくブルザさんを見送って部屋の道具を確かめる。十分揃っているな。
ブルザさんを見送っていると、入れ違いにサラ、イビン、ニンファ、イーファ、それにマァヤが入って来た。婆さんが来るのは想定してなかったな。
サラはとても上機嫌だ。……これは予測がつく。
「やったわ! 私はこっちでいいって。主ちゃんに凄い表情されたけど!」
「ちっ。余計な奴が増えたわね。足引っ張るんじゃないわよ」
「はぁこんな奴いてもいなくても変わらんっしょ」
「なんですって?」
「ほらほら三人とも。そろそろ始めるよ」
「婆さん、それに王様もだけど二人とも妖術適性とかあるのかい? イビンは勉強がてらしっかり見た方がいいな」
「わしは教える方じゃよ。魔術じゃが。もちろん妖魔の術に興味はあるがね」
「娘が見学したいので連れてきた。それから私とニンファ……モリアーエルフの特性についてを
後で話そう。今は術を見るのが待ち遠しい」
「僕は術の才能が無いって言われたからなぁ。何か強くなる方法がないかなって思って」
「適性を調べた事はありませんの。妖術なんて見たことがないから楽しみですわ!」
かなりの人数になったが、姉さんの妖術……これは秘術なのか? その素晴らしさをみんなで見る
事とする。
「アネさん、お願いします!」
「任せて。妖雪造形の術・銀企鵝!」
「ウェーイー」
「ウェーイー」
雪で出来た愛らしいペンギンが二体造形された。素晴らしい……まさに芸術そのものだ。
「この造形術は妖術でも特殊でね。アルカーンやフェルドナージュ様など一部の妖魔にしか
使用出来ないんだ。似たような魔術なんかはあるみたいだけどね」
「似た魔術だとネクロマンサーなどが使用する魂魄を用いる術かのう」
「魂魄!? ゾゾーッ」
「幻術だと似ているのは招来術かな。僕やベルディアには到底使えないけどね」
「サラはどうだ? 出来そうか? 邪術も使えるしいけたりするか?」
「難しいわね。うまくイメージ出来ないの、この雪っていうものを。氷も試したんだけど
もっと難しいわ」
「ふん、情けないわね」
「氷なら出せたっしょ。これでいける?」
「それは氷斗だな。俺も試してみるか……」
目をつぶって目の前にいる銀企鵝をイメージする。雪は降ってくる雪をイメージすればいいのか?
それとも積もった雪から形成するイメージか?
両方イメージしてみるか……
片手を挙げてウェーイーしてるあのかわいいやつを……いや水族館のペンギンか?
でも水族館て色々いたよなぁ……ええと、集中しないと。
「ルイン君! 一旦止めてね! みんな凍えてしまうよ」
……目を開けると雪が吹雪いていた。やっちまった! でも雪に携わる術使えた!
そして目の前にいたのは横長のペンギン……ではなくゴマフアザラシだ。これ……なんでこうなった。
「か、かわゆい……」
「ファウー」
「……すごいね。ルイン君、これは何ていう生物なんだい? どうやってイメージを?」
「いや、水族館をイメージしてその中からペンギンをイメージしようとしたんだけど……これゴマフアザラシ
ってやつですね」
「そうなんだ。よし……妖雪造形の術・ゴマフアザラシ」
「ファウー」
あっという間に同じの物を作ってみせた。すげぇ!
「ふう。出来たけど凄く疲れる……割りにこの子は地上の偵察に向いていないね。
海洋生物かな?」
「流氷上を移動する生物ですね。その辺はペンギンに近いのかな」
「そうか。この子は海上で役立ってもらえるね。それじゃもう一度やってみよう」
「こ、今度は雪を降らさないでね。この恰好じゃ寒いわ」
「お、お願いね。後で服屋にいきましょ」
「妖魔の服屋さんですの? 楽しみですの!」
話が盛り上がる前に集中しよう……ペンギン……ペンギン……どうせなら可愛いのとたくましいのが
いいなぁ。きりっとたくましく巨大な皇帝ペンギンと、死んだ魚のような目をしている
愛くるしいアデリーペンギン……可愛かったなぁ。
「……凄い。こんな短時間で正確に銀企鵝を作りあげる造形術を成功させるなんて」
「ウェーイ!」
「ウェィ」
おお! 喋り方がアネさんのと違ってウェーイになっちゃってるけど! 気にしないでおこう!
大声のウェーイ! が皇帝ペンギンで間違いない。でかい! そして強そう。
小声のウェイがアデリーペンギン。むっちゃ可愛い。死んだ魚のような目をしているのは変わらずだ。
「出来たんですか。やったー! アザラシと合わせて三匹造っただけでもうヘトヘト。妖力どれだけ
使うんですか、これ……名前つけとこ。アザラシはゴマキチ、皇帝ペンギンはコウテイ、アデリーペンギンはアデリーでいいか。」
「そのまえに雪をあれだけ勢いよく吹雪かせていたしね。おめでとう。とても愛らしいね。
指示の出し方は後で教えるよ……おや?」
「見て、ルイン。私変身出来たみたい!」
ファナがペンギン……の女の子のような形に変化していた。これはこれで可愛い!
「凄いなファナ。新たな変身術か? そういや前世にも変わった色のペンギンがいるって
聞いたことがあったな」
藍色のペンギン。ファナっぽくていいかもな。
「ずるいわよ。何その愛玩動物っぽいの……反則だわ!」
「くっ……可愛いっしょ。私も何か覚えないと!」
こうしてしばらく皆で術の勉強をした。
どちらかというと婆さんが教える水魔術の方が適性のある者も多く、いくつか術を
覚えている者もいた。
へとへとになった俺は少し休憩しつつ、イーファの話を聞く。
「ルイン、お疲れ様。先ほど話していた事の続きだが、モリアーエルフは
知っての通りミスリルをまとうエルフ。この身に流れる力は術を通しやすく
発動しやすい。また、エルフは元来術に長ける。モリアーエルフはエルフの中で最も
術適性が高い種族であり、数も極僅かしかいないのだ」
「王様とニンファはその極僅かなエルフの王族……っていうわけか」
「そうだ。使用できる術を見せるのは時間がかかるから今後として、新たな力を見て欲しい。
いくぞ」
「えっ?」
イーファはぐにゃりと体を変化させ、青銀色のスライムへ変化。
そこから……俺の身体にまとわりつき、青銀色の防具となった!
「あの、イーファ。これは……」
「どうだ、すごいだろう。ミスリルの鎧としてルインの防具となれるのだ」
「それは嬉しいんだけど、その……」
「なんだ? 何か不満があるのか?」
「俺、スカートなんだけど。ズボンに履き替えてくれない?」
「何を言う。似合っているぞ」
……どうやらスカート戦士ルインとして、新たな道を歩まされるようです。
そう……ここにはまだニーメとアルカーン製作の時計しか飾られていないのだ。この世界には
幾度か絵画やツボ、木彫りの物などは見たのだが、さして芸術文化は進んでいない。
妖魔の国の方が美しさを重んじる文化があるように思える。
いい絵描きさんや彫刻にはまってくれる者がいたら嬉しいんだけどな。
彫刻場の奥が一応工房になっている。全員を奥へ案内すると、ブルザさんがいた。
「やぁブルザさん。こちらへいらしてたんですね」
「おう、ルイン君。最初は半信半疑だったが、来てみたらとんでもない所だった。
言われた通りにガンツとモギにも話しておいたぞ」
「ガンツさんはいいけどモギさんは入れるのかな。メルザの許可をもらわないと……」
「もう来ていたぞ? まずかったか?」
「え? いえそういうわけでは。おかしいな。メルザの許可が無くても入れるのか?
後で試してみよう」
「とにかく、ガンツと二人でこの町を盛り上げるよ。ここの彫刻室? というところに
以前話していたような道具をおいておいた。好きに使ってくれて構わん」
「ありがとうございます。お金は……」
「いらんいらん。ここはなんでもキゾナ大陸に一瞬で行けるそうじゃないか。
あっちで商売すればすぐ儲けなど出てしまうと、話し合っていた所だよ」
「そうでしたか。ただ、全員にお話ししたとおり……」
「今は危険だから待ってくれってことだったな。俺たちも仕入れなどを少し控えて
先に町の把握や畑作業なんかを手伝っているところだ。落ち着いたらまた教えてくれ」
「ええ。ではまた」
去っていくブルザさんを見送って部屋の道具を確かめる。十分揃っているな。
ブルザさんを見送っていると、入れ違いにサラ、イビン、ニンファ、イーファ、それにマァヤが入って来た。婆さんが来るのは想定してなかったな。
サラはとても上機嫌だ。……これは予測がつく。
「やったわ! 私はこっちでいいって。主ちゃんに凄い表情されたけど!」
「ちっ。余計な奴が増えたわね。足引っ張るんじゃないわよ」
「はぁこんな奴いてもいなくても変わらんっしょ」
「なんですって?」
「ほらほら三人とも。そろそろ始めるよ」
「婆さん、それに王様もだけど二人とも妖術適性とかあるのかい? イビンは勉強がてらしっかり見た方がいいな」
「わしは教える方じゃよ。魔術じゃが。もちろん妖魔の術に興味はあるがね」
「娘が見学したいので連れてきた。それから私とニンファ……モリアーエルフの特性についてを
後で話そう。今は術を見るのが待ち遠しい」
「僕は術の才能が無いって言われたからなぁ。何か強くなる方法がないかなって思って」
「適性を調べた事はありませんの。妖術なんて見たことがないから楽しみですわ!」
かなりの人数になったが、姉さんの妖術……これは秘術なのか? その素晴らしさをみんなで見る
事とする。
「アネさん、お願いします!」
「任せて。妖雪造形の術・銀企鵝!」
「ウェーイー」
「ウェーイー」
雪で出来た愛らしいペンギンが二体造形された。素晴らしい……まさに芸術そのものだ。
「この造形術は妖術でも特殊でね。アルカーンやフェルドナージュ様など一部の妖魔にしか
使用出来ないんだ。似たような魔術なんかはあるみたいだけどね」
「似た魔術だとネクロマンサーなどが使用する魂魄を用いる術かのう」
「魂魄!? ゾゾーッ」
「幻術だと似ているのは招来術かな。僕やベルディアには到底使えないけどね」
「サラはどうだ? 出来そうか? 邪術も使えるしいけたりするか?」
「難しいわね。うまくイメージ出来ないの、この雪っていうものを。氷も試したんだけど
もっと難しいわ」
「ふん、情けないわね」
「氷なら出せたっしょ。これでいける?」
「それは氷斗だな。俺も試してみるか……」
目をつぶって目の前にいる銀企鵝をイメージする。雪は降ってくる雪をイメージすればいいのか?
それとも積もった雪から形成するイメージか?
両方イメージしてみるか……
片手を挙げてウェーイーしてるあのかわいいやつを……いや水族館のペンギンか?
でも水族館て色々いたよなぁ……ええと、集中しないと。
「ルイン君! 一旦止めてね! みんな凍えてしまうよ」
……目を開けると雪が吹雪いていた。やっちまった! でも雪に携わる術使えた!
そして目の前にいたのは横長のペンギン……ではなくゴマフアザラシだ。これ……なんでこうなった。
「か、かわゆい……」
「ファウー」
「……すごいね。ルイン君、これは何ていう生物なんだい? どうやってイメージを?」
「いや、水族館をイメージしてその中からペンギンをイメージしようとしたんだけど……これゴマフアザラシ
ってやつですね」
「そうなんだ。よし……妖雪造形の術・ゴマフアザラシ」
「ファウー」
あっという間に同じの物を作ってみせた。すげぇ!
「ふう。出来たけど凄く疲れる……割りにこの子は地上の偵察に向いていないね。
海洋生物かな?」
「流氷上を移動する生物ですね。その辺はペンギンに近いのかな」
「そうか。この子は海上で役立ってもらえるね。それじゃもう一度やってみよう」
「こ、今度は雪を降らさないでね。この恰好じゃ寒いわ」
「お、お願いね。後で服屋にいきましょ」
「妖魔の服屋さんですの? 楽しみですの!」
話が盛り上がる前に集中しよう……ペンギン……ペンギン……どうせなら可愛いのとたくましいのが
いいなぁ。きりっとたくましく巨大な皇帝ペンギンと、死んだ魚のような目をしている
愛くるしいアデリーペンギン……可愛かったなぁ。
「……凄い。こんな短時間で正確に銀企鵝を作りあげる造形術を成功させるなんて」
「ウェーイ!」
「ウェィ」
おお! 喋り方がアネさんのと違ってウェーイになっちゃってるけど! 気にしないでおこう!
大声のウェーイ! が皇帝ペンギンで間違いない。でかい! そして強そう。
小声のウェイがアデリーペンギン。むっちゃ可愛い。死んだ魚のような目をしているのは変わらずだ。
「出来たんですか。やったー! アザラシと合わせて三匹造っただけでもうヘトヘト。妖力どれだけ
使うんですか、これ……名前つけとこ。アザラシはゴマキチ、皇帝ペンギンはコウテイ、アデリーペンギンはアデリーでいいか。」
「そのまえに雪をあれだけ勢いよく吹雪かせていたしね。おめでとう。とても愛らしいね。
指示の出し方は後で教えるよ……おや?」
「見て、ルイン。私変身出来たみたい!」
ファナがペンギン……の女の子のような形に変化していた。これはこれで可愛い!
「凄いなファナ。新たな変身術か? そういや前世にも変わった色のペンギンがいるって
聞いたことがあったな」
藍色のペンギン。ファナっぽくていいかもな。
「ずるいわよ。何その愛玩動物っぽいの……反則だわ!」
「くっ……可愛いっしょ。私も何か覚えないと!」
こうしてしばらく皆で術の勉強をした。
どちらかというと婆さんが教える水魔術の方が適性のある者も多く、いくつか術を
覚えている者もいた。
へとへとになった俺は少し休憩しつつ、イーファの話を聞く。
「ルイン、お疲れ様。先ほど話していた事の続きだが、モリアーエルフは
知っての通りミスリルをまとうエルフ。この身に流れる力は術を通しやすく
発動しやすい。また、エルフは元来術に長ける。モリアーエルフはエルフの中で最も
術適性が高い種族であり、数も極僅かしかいないのだ」
「王様とニンファはその極僅かなエルフの王族……っていうわけか」
「そうだ。使用できる術を見せるのは時間がかかるから今後として、新たな力を見て欲しい。
いくぞ」
「えっ?」
イーファはぐにゃりと体を変化させ、青銀色のスライムへ変化。
そこから……俺の身体にまとわりつき、青銀色の防具となった!
「あの、イーファ。これは……」
「どうだ、すごいだろう。ミスリルの鎧としてルインの防具となれるのだ」
「それは嬉しいんだけど、その……」
「なんだ? 何か不満があるのか?」
「俺、スカートなんだけど。ズボンに履き替えてくれない?」
「何を言う。似合っているぞ」
……どうやらスカート戦士ルインとして、新たな道を歩まされるようです。
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