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第三章 知令由学園 後編

間話 タルタロスの使者

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 ベルローゼたちが出発後しばらくの事。

「フェルドナージュ様、使者アルケーが到着しております」
「通せ」

 こちらが使者を送りまだ日があまり経っておらぬ。よい返事は期待できぬな。

「フェルドナージュ皇。お目通り頂き感謝する。相変わらずお美しいですな」
「戯れはよい。して……タルタロスの返事はどうじゃ」
「ただ一言、興味はない。余は忙しい。それだけです」
「タルタロスは動かぬままか。兄を警戒しての事であろうな」
「恐らくはそうでしょうな。皇の兄君は危険すぎる。地底そのものを滅ぼす程に。
今では四皇のバランスを保つのは困難。ベルータスの奴めが勝手に動いたのが
よくない傾向を生んだからだ」
「仕方あるまい。奴めは残虐を好む。隙あらばどの領地も奪いに来よう。
その奴が見つからぬ以上、兄も動くやもしれぬ。十分注意せよ」
「タルタロス様に限っては我ら家臣の心配など無用。それこそ冥府に落とされる。
皇もわかっておいででは?」
「それもそうじゃな。要件はわかった。いくつか品を持たせる。
ベルータスの一件はこちらで肩を付ける故、それまでは協力を願いたいものじゃ」
「協力は難しいが、興味がないと仰せだ。何ら手出しはせぬという事で協力という形を
取らせていただきたい」
「ああ。恐らくそういった意味であろうな。あやつが力を貸すなどあり得ぬか。
ご苦労だった。下がるがよい」
「ではこれにて。失礼する」

 やはりタルタロスは動かぬか。あやつが興味を引くような事などそうそうあるはずもない。
 いや、あの面白い男なら或いは興味を引くかもしれぬ。
 それどころか連れ去られてしまう可能性すらある。会わせるわけにはいかぬな。

 それよりも、我が兄フェルドナーガ。いささか警戒せねばならぬ。
 しばし温泉にも入っておらぬな。アルカーンへ直接指示も出さねばならぬ。
 参るとするか。

「カドモス、ピュトン。ルーンの町へ向かうぞ」

 二匹の巨大蛇を連れてペシュメルガ城を後にする。
 カドモスとピュトンの後に続く六匹の蛇。それぞれが意思を持ち
フェルドナージュの後に続く。

 泉の前に着くと、その中に入っているように見えるが、水にはつかる事なく
ルーンの町へと消えていった。

 ルーンの町に着くと、フェルドナージュはアルカーンの元へ赴いた。

「アルカーンよ。入るぞ」
「これはフェルドナージュ様! このような場所にお越し下さるとは。
ニーメ、少し控えておれ」
「そのままでよい。その少年も随分とりりしくなったものよのう。
技術も大きく向上したと聞く。どうじゃ? アーティファクト生成は可能か?」
「はい。技術だけではなく、才能も持っております。通常のアーティファクトで
あれば、年月をかければ生成可能でしょう」
「フェルドナージュ様! 僕頑張りますから何でも依頼してくださいね」

 こちらにアルカーンを寄越して正解だった。この場所には才覚あるものが集まっている。
 アネスタもこちらに向かう了承を求めに参った。他国に負けぬよい町を築いてもらうと
しよう。

「アルカーンよ。引き続き指導をし、この町を多いに発展させてみよ。
メルザとルインにしっかり協力するのだぞ。それと封印穴に関しての報告、見させて
もらった。この発想はルインであろう?」
「はい。あの男、やはりとんでもない事を考えつきます。試作品を先にフェルドナージュ様へ
献上するよう言われております。こちらを」

 フェルドナージュが見たそれは、腰に巻くベルト。スライド式に通しバックルに
蛇の紋様がある。そのベルトに無数の封印穴がある。数は全部で十。

「……一つで十穴とは。この紋様はカドモスに似ておるのう。気に入ったぞ」
「有難きお言葉。しかしこれほどの素材を使用したものを、譲ってもよいのでしょうか?」
「構わぬ。メルザとルインには感謝しておる。あの二人にはしっかりとしたものを
作ってやるとよい。時計作りもよいが、程ほどにするのだぞ」
「……はっ、一つこちらは私からの捧げものです。お気に召すかどうか」
「これは、お主が今夢中になって作っている物の一つか。指にはめる時計……美しい。
真に面白い発想が尽きぬ男だ。受け取っておこう。ご苦労だった、アルカーンよ」

 そう言い残し、フェルドナージュは温泉へ向かっていった。
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