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第三章 知令由学園 後編

第二百十六話 お兄ちゃん冥利に尽きる

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リル達が妖魔国で買い物をしている頃……

「アルカーン先生、ロッドの町での研究成果が出来ました!」
「おお、本当かニーメよ! 我が弟子にして最高の技術者たる貴様の懇親作が!」

 カチッカチッカチッカチッ……フルッフー! フルッフー! 

「おおおおおおおおお! なんという正確さだ。まさに芸術! 
このハトとやらの飛び出す角度! 気に入った、気に入ったぞ! 
こうしてはおれん。次の作品にうつる。これをルーンという鳥に見立てて作るぞ。
そうだな、三十……いや四十程作ろう。
しまった、材料が足りない。ふむ、下僕を作り買いに行かせるか……」
「あのー……」
「いや待て。まずはこの発想を書き留めておかねばならん。こんな時にリルは
何処へ行ったんだ? 全く我が弟ながら困ったものだ」
「あのー!」
「先生! 僕が買ってくるよ! 妖魔の町のフォモルコデックスに行けばいいんでしょ?」
「おお、ニーメよ行ってくれるか。今回の件でそのオーシンの槌は約束通り貴様にやろう」
「いいの!? やったー! 僕一生大事にするね!」
「あのーーーー! お二人とも! シュウです! お話をー!」
「ん? 何だ貴様は。何の用だ?」
「あ、先生。シュウさん試験に連れて行かないといけないんだった! 
僕すっかり忘れてたよー。えへへ。ごめんねシュウ兄ちゃん」
「う……いやいや全然いいんだよニーメ。シュウお兄ちゃんは急いでいないから。
その買い物も一緒にいこう! 重いだろう? 荷物」
「え? 本当に? ありがとうシュウ兄ちゃん!」

 ありがとうシュウ兄ちゃん……ありがとうシュウ兄ちゃん……ありがとうシュウ兄ちゃん……。

「うおー! 俺はシュウ兄ちゃん! おおらかで優しい男だー!」
「なんという奴だ……とにかく頼んだぞ。俺はしばらく作業に没頭する」

 ニーメはシュウと一緒にフォモルコデックスへ赴き、大量の時計材料を発注した。
 あまりにも量が多いので、残りは後日持ってきてくれるという。
 なおフォモルコデックスの店主フォモルは、既にルーンの町へ入る許可をもらっており、フェルス皇国の店は近々息子へ譲ってこの町へ引っ越す予定。

 大量の道具をアルカーンの部屋の中へ置き、ニーメとシュウは知令由学園へ向かった。

「ふう。重かったー。僕一人じゃ難しかったよ。さすがだね、シュウ兄ちゃんは」
「あんなに必要だとは思わなかった。役に立てて何よりだぞ。
ところで受付はここかな?」
「うん。試験はいくつかあるけど、シュウ兄ちゃんは何を受けるの?」
「俺は剣とある術以外使えないんだ。だから別の術も使いたいんだが、術試験だけでも受けれるのかい?」
「うん、受けれると思うよ! 僕も魔術と秘術っていうのが使えるみたいだよ!」
「それは凄いな。では早速受けよう」
「剣術はいいの?」
「ああ。俺の剣は忍者という技法だからあまり明かせない部分が多いんだ」
「忍者? 忍者ってなぁに?」
「ニーメ。それは今度こっそりと……な」
「うん、約束だよー!」
「あのー、そろそろいいでしょうか?」

 受付を無視して話し合う二人にいらいらする受付の人。

「これは失礼した。つい弟が可愛くて」
「あなたがその子のお兄さんだったんですか。こないだ来た人たちの誰かかと」
「僕お姉ちゃんしかいないけどなぁ……」
「本物のお兄さんに俺はなる!」
「……はぁ。それで試験の受講ですかぁ!?」
「え、ええ。術試験を受けたいんですが」
「ライラロさんの紹介状がこれです! 金貨もはい!」
「あら坊やありがとう。はい、それじゃ試験場所はあっち。
いってらっしゃいー」

 以前受けた術試験場所へ赴き、受付をする。

「術試験受講の方ですね。お名前は……シュウさんですね。
ではこちらへどうぞ。これに手を触れてくださいね……
えーと……魔、秘……これは珍しい、秘術持ちですよ! 
「まぁそうだろうね」
「そうだろうね!? そんな簡単に! 何なんです? 
連日秘術持ちばかり……どうしますか、魔術で
試験合格を狙うならパワーボールを……」
「いや、秘術でいいか?」
「ええ? まぁ、構いませんけど……天井を破壊したりしないでくださいよ?」
「一旦しか見せない。あまり見せてはいけないので」
「では、お願いします」
「忍カザグルマ」

 風術のような塊がくるくると回転しながら空中にいくつか静止して
的に飛んでいく。

「これがシン師匠に教わった特訓の成果だ」
「ご、合格です。凄い……」

 シュウは事前にニーメから聞いていたパワーボールというネタ術を避けて
ニーメと一緒に魔術を習う事にした。
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