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第三章 知令由学園 後編

第二百八話 ベルディアの格闘跳撃コース

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 俺とベルディアは再びジオの元を訪れるべく、武芸コースの
本の建物へと来ている。

「あいつ何処っしょ。ここ広いから探すの辛」
「そういや武器事に場所が別れてるけど、剣のエリアには行きたくないよな俺達」
 
 先日騒ぎを起こしたばかりなので出来る限りあの場へは行きたくない。
 とはいえ見渡す限りジオはいないな。
 ……俺達が悩んでいると急に上空へターゲットが反応した! 
 こんな場所で狙い撃ちだと!? 

「よっと! よう、待ってたよ。 びっくりしたかい?」
「な……どっから湧いた? 天井には何もないだろ!?」
「うん? あそこからだけど」

 何も見えない遥か遠くを指さすジオ。
 あんな遠くからジャンプして俺を上空から一瞬で奇襲出来るのかよ。
 冗談じゃない、こんなやばいやつに教わる予定なのか俺は。

「別に狙ったわけじゃないけど、よく気付いたねぇ。何かの能力なのかな?」
「そんなところだ。そっちもそうだろ?」
「いや、僕のはただの身体能力だねぇ。それより早くやろうか。時間がもったいないし、君ら
も忙しいんんだろう?」
「……ああ。まずはベルディアの方を見てもらっていいか?」

 俺はジオの動きをよく観察したいので後回しにしてもらった。

「私が先でいいの? それじゃ早くやるっしょ」
「そうだねぇ。それじゃベルディアちゃんの方から。
ベルディアちゃん。僕を思い切り蹴り飛ばしてもらえるかい?」
「……変態っしょ」
「え? 何で? 何もしてないのに変態っていわれた……」

 落ち込みやすい性格だなおい! とりあえず言い方が悪いから変態って言われても
仕方がない。

「僕の右腕めがけて蹴りを放ってみて。高さはこっちで調節するから次々と。はい!」
「……わかったっしょ。変態先生」

 ベルディアの言葉に動揺しながらも蹴りの講習を開始する。
 流れるようにジオの腕の高さに合わせて容赦なく打ち込んでいく……がこれは。

「シッ! シッ! はぁ! 噓っしょ!? ハアアっ! えいっ!」
「うーん。殺意があっていいけどねぇ。軸足がもろい。それから角度も甘いねぇ。もっと股を開いて」
「変態っしょ! どこみてるっしょ!」
「だから違うのに……うう。女の子の指導は難しいねぇ」
「いや言い方が悪いんだと思うぞ。足を開けでいいんじゃ」
「足? 足は開いてるけどねぇ? 正確に物事を言うのは大事だ」
「あー、うん。それもそうだ。女の子の指導は確かに難しいと俺も思う事にしたわ」
「えーい、これでどうっしょ! うそ……私の全力っしょ、今の。まじ怖きも」
「ぐふぅ。きもいと言われた……」

 あ、蹴りじゃなく精神的ダメージで倒れた。
 けどすぐに立ち上がった。平気なようだ。

「君の蹴りはけん制にはなるけど、威力としてはゴブリンを吹き飛ばす程度だね。殺傷力にかける。
これは脚力の強化だけじゃなく、蹴り技に術を混ぜて発動する練習がいるね。
才能はあると思うから、僕が指導してあげるよ」
「本当っしょ? 蹴りであんたを蹴り殺せるようになる?」
「……教える人を殺さないで欲しいねぇ。まぁ僕を殺すのは難しいかな。格闘術では特にね」
「……どういう意味だ?」
「僕はほとんど打撃が効かないんだよねぇ。そういう体質で」

 スライムかなにかで出来てるのかジオは。
 強さの底が見えない。久しぶりに見るやばい奴だな。

「次は格闘の方を見てみよう。そっちは得意だろう? 僕の顔面目掛けてパン……」

 喋り終わる前に一発いいのが顔面に入った。これはヒドイ。

「打撃が効かないならいいっしょ。あースッキリした。どんどんいくっしょ」
「とほほ。元気だねぇベルディアちゃんは。その思い切りのよさは僕好みだけど」
「無理無理あんたは生理的に対象外っしょ本当無理」

 あ、無言で膝から崩れ落ちた。そういう意味で言ったんじゃないと思うけど、どんまい! 

「今日一日で三回も崩れ落ちるとは……やるねぇ。
この瞬剣のジオともあろうものが……」
「さっさと教えるっしょ。格闘の秘訣! シュッシュッ」

 元気なベルディアとは裏腹にしょげくれてるジオ。
 ここからが本番だろ? 平気か? 

「では改めて、顔面に狙いを定めて打って来て」
「行くっしょ! シュッ ……シュッ! エイ!」

 当たらないな。簡単に躱してる。ベルディアの格闘術は
それなりなんだが。

「足も使っていいよ。そうしないと相手にならないからねぇ」
「怒ったし。絶対あてるっしょ。シッ!」

 ワンツーから回し蹴り。回転蹴りに連打。手数も勢いも
踏み込みもあるがかすりもしない。
 ただ躱してるだけじゃない。ジオはほとんど動いていない。 
 フー・トウヤの動きでもぶっ壊れてておかしかったのに、こいつの動きはあの時のフー以上だ。
 格闘最強はフーと聞いていたんだがな。

「よし一旦ストップ」
「シッ! ……ちっ」
「ストップ言ってから攻撃しないの。ほい!」

 尻をぽーんと叩かれる。これは……言われるぞ。

「エッチ」
「なんで!? うう、追加攻撃されたのは僕なのに……」

 落ち込むジオは無視して話を進めよう。

「ベルディアの動きは悪く無かったと思う。ジオ、あんた
何者なんだ。 動きがおかしすぎる」
「んー? そうだねぇ。かなりの才能を持ってると思うよ、ベルディアちゃんは。
ただ、レベル的にはまだまだ。
君のお父さん、バルドスでも僕には全く歯が立たないからねぇ」

 それを聞いてベルディアが身構える。俺もだ。
なんでベルディアの父親の名前まで知ってるんだこいつは。

「俺達、バルドスなんて名前言ってないよな。なんで知ってる」
「少し調べさせてもらっただけだけどねぇ。僕は情報通だからさ。
ただ突然過ぎて少し信用を欠いたかな?」
「……ああ。敵とも限らないからな。
今は絶対に敵対したくはないけど」
「安心してくれていい。僕は敵対するつもりないから」
「僕は……ね。まぁいい。俺の暗器術も見てくれないか?」
「ああ。その前にお茶飲もう」

 そういうとジオはとてつもない跳躍を見せてどこかへ行った。
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