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第三章 知令由学園 後編

第二百三話 武芸を学ぶ?  

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「さて、行くか。準備は万端だ」

 宴から二日経ち、念入りに準備した俺は古代樹の図書館へ抜ける
泉の前まで来ていた。

「まずは武芸を習うんだったね。それなら北東の青い本だ」
「わたくしも槍術を教わりたかったのでちょうどいですわね」
「あんた、私に負けてからちゃんと修行したっしょ? 今度戦お」
「ええ。もう負けませんわよ! それでは参りましょう」

 俺たちは泉に潜り、再び知令由学園へ赴いた。
 相変わらずここは静かなものだ。まずはベルドの言う通りを北東の青い本を目指す事にする。

 いつみても不思議な外観だが大きさは十分。中に入ると
区画分けがされており、大勢の生徒らしき人がいる。
 図書館方面とは違うすごい賑わいだ。

「ここは人が一番多いからね。術は適正がないと使用できないし
適正を得るにもお金がかかる。得られない場合がほとんどだけどね」
「武芸は誰でも伸ばせるっしょ。努力が必要」
「そうですわね。戦う力がないと大切なものは守れませんものね……」
「そのためにもやれる事を今は増やそう」

 俺たちは頷き会い、受付へ向かう。

「学園性ですね。どの講義を受けられますか?」
「試験を受かってから初めてなんだ。説明してもらえるか?」
「かしこまりましたー。試験で受けた時の武器に合わせて実力が図られております。
使用した武器以外の所へ行けば初級とみなされます。
試験を受けた時の判定がよければ上級以上から開始されますよ。
各々お好きな場所へ向かってください。受講料はそちらで!」

 お金のとこだけ協調された。相変わらずだな。

「俺はひとまず剣かな」
「僕は槍だね。今のところはだけど。僕は何度か受講してるから勝手がわかる」
「私は格闘一筋のハズだったけど、剣にするっしょ。ベル師匠まじ怖死」
「わたくしは槍ですわね。ベルドさんと向かいますわ」
「それじゃ俺とベルディア、ベルドとミリルが一緒に動こう」

 俺はベルディアを引き連れて剣の印が書かれたエリアに向かった。
 ここが多分一番広い。扱いやすいから剣を受講する人が多いのだろう。
 俺の装備が明らかにおかしいからか、見られているのがわかる。
 クスクスと笑われている奴が何人かいるようだ。

「あいつら何っしょ! むかつくんだけどまじ殺っていい?」
「だめだって。いきなり問題起こしてどうする」
「あんた強いのに笑われるとむかつくっしょ。私負けたし」
「別に笑いたい奴には笑わせておけばいいだろう。他人を笑うってのは暇人で未熟
な証拠だ。自我を保つために他人を見下し馬鹿にしようとするので必死なのさ。
あっちの奴ら見てみな。俺らには見向きもしないし興味もないから」

 全く、金を払って他人を冷やかしに来るとか、そいつらは向上心も無いし成長要素も無いな。
 真剣に打ち込んでる奴との差は歴然だろうに。

「言われてみればそうっしょ。もう気にしないごめん」
「気にするな。お前も十分強者だ。今後はそういう目も多く向けられるし構う必要はない。
敵対されたら血祭に。それでいいさ」

 俺たちはさっさと受付に行き話をする。少し訝しむような目で見られた。

「ルインさんですよね。試験官より特級の剣術士として受講するよう
指示されていますが……あなたで間違いないんですか?」
「俺はルインだが、疑うなら別に何級からでもいいよ。ベルディアは初級か?」
「そうみたいっしょ。面倒くさ」
「なら俺も初級でいい。どの程度かみたいしな」
「……わかりました。それでは両方合わせて銀貨二枚いただきます!」

 金だけ嬉しそうに貰う。全く。

「剣術初級からですと、基本の型から学べます。どうぞあちらに」

 言われた場所へ向かうと一人の剣士風の男が直立不動で立っていた。

「君とそっちの女の子ね。初めましてはいどうも。
講師のイボルです。それで君、その武器はふざけてるのかね?」
「いいや。俺の戦闘スタイルだけど」
「籠手にシールドをくくりつけてガードなんて上手くできないだろう。
盾はしっかり持って相手の攻撃を防ぐものだ。その盾で私の攻撃が防げるかやってみたまえ」
「は? 俺の盾は攻撃を回避する用だけど」
「いいから、やってみなさい!」
「ああ。攻撃してもいいのか?」
「構わんよ、私にあたるはずもないがね」

 正直いらっとした。まぁ初級選んだしな。型って装備の型かよ。
 いろんな型見せてくれるのかと思ったわ。つまらん。

「それじゃ開始!」

 スローモーションで突進してくるイボルとやら。
 なめてるのか? 手加減するにもほどがあるだろ。

 一瞬で目の前に近づき括り付けたといわれた盾で
 みぞおちにぶつけてやる。

「これであってますかね。盾の使い方」
「ぐはっ」

 ありゃー伸びちゃったよ。これで講師務まるのか? 

「あっはっは! 面白、いいきみっしょ」

 今度は生徒たちに睨みつけられる。はぁ、暇そうだなこいつら。見てる元気あるなら
素振りでもすりゃいいのに。

「……すみません、中級へ移って下さい。料金は先ほどので結構ですから」
「中級ね、いいんだそれで。わかったよ。次ベルディアやりなよ」
「わかったっしょ。まじうけ傑作」

 少しだけまともそうなのがいる剣術中級エリアにきた。
 だが……これは結果が見える。

「へぶぅっ」

 あーあ名前すらわからんまま講師がのされた。
 

「上級かい? 次は」
「いえ、その……お二人とも特級へ……」

 ざわざわという声だけが耳につく。しょうがないね、こういうの吹き飛ばすには
派手にやるしかないか。
 と思っていたら、誰かが話しかけてきた。

「君らだよね。イボルをやったのって。傑作だったなぁ。
あいつうざかったからすっきりしたよ」
「あんたが特級の講師かい?」
「いや、僕は神級の講師ジオだ。
あっちで待ってるから早く終わらせておいでよ。それじゃね」

 ……ようやくまともなのが出てきたか。
 他の生徒が話しかけてるが全部無視してるな。
 特級の講師は髭面の親父か。

「ベルディア、まだ絶級ってのも残ってるらしいから
そいつやるよ」
「いいの? やったっしょ。勝てるかな」
「お前なら多分特級はいけるだろう」
「おいおい、そう簡単に絶級に進めるわけないだろう。
こんなお嬢さんに特級講師が負けるわけにはいかないしな」
「お嬢さんかどうかは関係ないだろう? 実力を推し量るのに相手の外見は関係ないね」
「……言うな小僧。このお嬢さんの後はしっかりしごいてやろう」
「……もう十分しごかれてるんだよねぇ。習いたいのはそういうんじゃないんだ」

 そういうと俺は少し離れた場所でベルディアの動きを見る。
 もともと高いセンスと格闘術を持つ彼女。だが格闘だけにしておくには惜しい程
 思い切りがよく前に突き進み攻撃するスタイル。
 俺がもっとも好きな対戦相手だ。ガチバトルっていうのに相応しい。

「では参るぞ、開始!」
「シッ!」

 勢いよく突進するのは相変わらず……だが。
 すかさず右ステップからの斜め左跳躍。剣士相手には本来危険だが
 型にはまった剣士だからこそ、そうは動かないと思い油断する。
 構えも下段右構え。左上の対処は遅い。
 下段から切り上げたがベルディアの振り下ろした剣とぶつかる。
 下段の切り上げと上段の振り下ろし。どちらが有利かなんて言うまでもない。

「踏み台作ってくれてありがとっしょ! はい!」
 
 切り上げた剣の反動をばねにして相手の剣を地面にたたき落とした。勝負あったな。
 回転して背後に回り喉元に剣を置く。

「ば、ばかな……特級講師だぞ私は」
「んじゃ次行っていいかい?」
「おいおい、どうなってるんだ? 初級に入ったやつらだろ?」
「あっちの男はまだ剣を使ってないのになんで特級なんだ?」
「面白いわ。見物しましょ」

 ……あーあすっかり見世物だよ。本当暇なんだな……仕方ない

「おじさん、もう一回相手してくれないか? 俺と」
「いいだろう。君は初級からやり直してもらった方がいい。礼儀もなっていないようだ」
「礼儀は払うべき人に払えばそれでいいだろう?」
「口の減らない小僧だ! いいだろう! 来い!」
「それじゃ遠慮なく」

 俺はカットラスを引き抜く。悪いけどだいぶ痛いぞ。
 下段構えのままおじさんは俺を睨んでいる。開始の合図まだなんだけどな。

「あれ、開始は?」
「……開始! ……なっ」

 俺のカットラスの柄をおじさんのおなかにめり込ませた。
 どさりと倒れるおじさん。

「構えとか基本とか普通とか。そんなんじゃいつまでも強くはなれないんだよ。
死地に追いやられた宮本武蔵を見習うんだね。ああ、知らないか」

 俺はカットラスをしまうとベルディアに抱き着かれた。

「かっこよすぎっしょ。あんたまじ好き」
「よせって。また周りの奴らに冷やかされるぞ」
「気にしないっしょ。そう決めたし」

 絶級の講師とも戦うつもりだったが辞退された。流石にこのおじさんの上の域までいけば
わかるか。
 特級といってもこの国の学園の中での事だろう。世界は広い。これで特級なら闘技大会
本選すら残れないだろうな。
 
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