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第二章 知令由学園 前編

間話 盛り上がる宴 打ち解けてみせますわ

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 ミリルは宴の最中、大きく決意した。

 今度は女子会に混ざるのだ! と。
 彼女は悩んでいた。お嬢様育ちのミリルにとって、どうしてもサラやファナ、メルザ達の会話に
入って生きづらい自分に。

 本当はみんなと一緒の位置で笑いあいたい。けれど上品に過ごす事を教えられて育ったミリルは
今一歩踏み出せないでいた。そこへ更に加わったのがベルディア。

 ベルディアも育ちはいいのだが、喋り方にそんな感じは見受けられない。
 意を決してベルディアへ語り掛けるミリル。

「あのー、ベルディアさん。わたくし、少々悩んでる事がありまして」
「あんた誰っしょ。いたっけ? ここに」
「最初からいましたわ! まさかわたくしって……」
「存在感なさすぎっしょ。空気」
「ああ。実は少し前から気づいていましたの。ベルディアさん、私の存在感を
出すにはどうすれば……」
「ちょっとこっち来るっしょ。 ねールインちょっと来てここ。早く」
「ん? なんだ? 作ったお菓子ならもうベルローゼさんが食べ切ったぞ。
クレームアンジュのミッシェジャム添えが思った以上に好評で。簡単に作れるんだけどな」
「ほらこっちっしょ、ここ」

 ポインッ

「ちょ、何すんだベルディア! どれだけ俺の冤罪をまきちらすんだお前ら!」
「ちょっとルイン、いいかしら。 どう考えても私だけ触らないのはおかしいわ」

 ポインッ

「やめろ、ファナまで。飲みすぎだ!」
「なんと、童も混ざってよいか?」
『なりません!』
「なんじゃ、つまらんのう」

 は、これはわたくしもリアクションを取れというベルディアさんの合図! 

「い、いやですわダーリンったら! もう!」
『えっ?』

 あら、皆さんがわたくしを見ている!? これでよかったんですのね。

 両手を顔に当てていやいや顔をするミリル。

「ミリルってこういうキャラだったのか……ライラロししょーみたいだな! けどルインは
やらねーぞ! 俺様のだ!」
「ずるいわメルザ。みんなのものよ!」
「そうそう、僕の物でもあるからね。ルインは」
「お前らみんな一度温泉にでも入ってこーい! あ、フェルドナージュ様は
まだお飲みになられていても構いませんよ」
「フェル様にだけ優しいな! フェル様の事が好きなのか?」
「恐れ多いことを言うんじゃないよメルザ。 皇帝だぞ」
「そうだった。けど俺様はフェル様大好きだけどな!」
「ふふふ。童も其方らの事が大好きじゃ。ずっとよい関係を期待しておる」
「ふっ。 フェルドナージュ様にそこまで気に入られるとは、うらやましい限りだ」
「全くです。彼もメルザさんもいつか、とてつもない強さを持つ存在に
なるのかもしれませんね。強者が認めるのもまた強者……ですから」
「むずかしーなー、フェド先生の話はよ。そーいえば図書館は行かなくていーのか?」
「ああ、俺はイーファを連れてガルドラ山脈へ行くのが先だ。コラーダだけでも
先に入手しておきたい。
皆は好きに行動してくれて構わないが、十日後に
領域の拡張がある。その時には集まって欲しいんだ」
「十日は自由に行動していいのね。ベルディスぅ、何処行く?」
「俺ぁベルローゼと約束がある。そこのひよっこを鍛えるってのもあるがな」
「光栄です。まさかベルディス様に鍛えてもらえるなど、夢のようです」
「俺はそっちのすばしっこい女の方だ。センスがある」
「兄貴より、強くなるっしょ。絶対」
「僕はアルカーン先生と一緒に学園に行ってるね。先生も入学出来るかな」
「ああ。問題なかろう。ここが繋がったのは有難い。いつでも時計について調べに行ける」
「わらはかかしと行動を共にしよう。農業に興味があるからな」
「私はリルさんと三夜の町に行ってみたいの。亜人が沢山住んでるっていうし
安心出来そうだから」
「俺様はルインについていこうかな」

 皆さん思い思いに行動を決めてますわ。今度こそわたくしも!

「わたくしもルインさんについていきますわ!」
「じゃあ私も行くわね。あんたも行くんでしょ」
「当然よ、抜け駆けはさせないわ」
「じゃあ道中は僕とカノンとサラとファナ、それにメルザにミリルだね。
といっても僕らは封印に入っていくからなぁ」
「俺も行くぞ? 今度こそ連れてってくれよな? なぁ?」
「ああ。多分レウスさんがいるとすごい助かる。よろしくな」

 こうして俺たちは各々、自由行動に出る事となった。
 次に全員揃うのは十日後。
 領域にて再び。
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