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第二部 主と働く道 第一章 地上の妖魔

第百五十八話 ソードアイ

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 スラリとプログレスウェポン、カットラスを引き抜いた俺は
両者に対峙する。

 身体の状態はまだあまり良くないが、目だけはっきりと見える。あれ、二人を見てたら何か枠で二人が囲まれる……。

 ターゲットしてるみたいだ。

「ごめん二人ともちょっとそのままで」
「わかった!」

 俺は視野からギリギリ外れる状態で二人をみようとする。

 すると……視点が二人を追った!うお、気持ち悪い。勝手に
視野が追う。
 
 その場で口を押える。慣れるまで時間がかかりそうだ。

「大丈夫かい? まだ身体がきついかい?」
「いや、大丈夫だ。視野の動きに慣れてない。
それよりこのジョブになった途端、視野が広がり敵対者を
追尾できるみたいなんだ」
「……それは反則だよ。いいなー」
「まずは目の動きに慣れるよう特訓しましょう。吐きながらでも」

 うおーいフェドラートさんが教師モードだ。目が怖い。

 再度二人に対峙してもらい、何度か吐きながらようやく
なれてきた。

「そろそろ大丈夫です。二人とも」
「じゃあ行くね。混沌の影!」

 リルがそう叫ぶと地面に無数の影が出来る。
「シャドウムーブ」
 リルの姿が影に消える……が枠……ターゲットがリルを
捉えたままだ。
「妖封動の術」

 急に身体が硬直する。これがフェドラートさんの十八番か! 本当にぴくりとも動かない。
 
 俺は自分の身体をよく見る。
 
 あれ、全身に何か絡めとられてる糸みたいなのが見える。フンってやるとぶちって切れないかな? ふん! 

 ぶちっと音を立てて切れた。あれ? こんなの前は
見えなかったけど。

「なんですって?一体どうやって」

 驚いているフェドラートさんを見ていると、地面にいる
リルが動いたのが視界に入る。
 
 いや入ってはいないんだがターゲットが動いている。

 俺は急ぎバックステップして距離を取った。さらに追ってくるので左右展開する。

 影から疲れた表情のリルが出てきた。

「ぜぇ、ぜぇ……なんで動きがわかるのさ。シャドウムーブしてるのに奇襲出来ないんだけど……」
「さっき話してただろ。枠みたいなやつ……ターゲットが見えるんだって」
「……つまり今後一切奇襲がきかないって事かい?反則だよ、僕もそのジョブになりたい」
「私の妖封動はそうそう破れる術じゃないんですけどね、驚きました」

 ぶっちゃけ一番驚いているのは俺自身だ。剣士としての腕より相手と対峙した時の動きがわかるのは
かなり有難い。
 戦い易さが上がれば剣の腕も有難い。

「二人とも、次は直接攻撃や間接攻撃をお願いしていい?」
「わかった。今度こそあてるよ!」
「参ります」 

 再び距離をあけて構える。

 まずリルがレヤックで突っ込んでくる。以前程の強さは感じられないが、それでも上級妖魔。

 戦い慣れてるね。俺は蛇籠手を蛇に変えてリルを襲わせる。
 リルはシャドウムーブで回避。対象を失った蛇は籠手に戻る。流石だ。

「妖豪炎の術」
 フェドラートさんが俺に炎を飛ばしてくる。初めて見る術だ。当たれば相当なダメージだろう。

 炎が飛来すると同時にリルがそれに合わせてシャドウムーブから出て直接攻撃をしてくる。

 俺はリルを盾でいなし、跳躍して炎をカットラスで斬る。
 普段なら考えないが、斬れるような気がした。

 そのままリルに追撃されないよう、デュラハン後輩の
アイアンクラッシャーをリルに放つ。

 リルは再度シャドウムーブで回避して俺の背後に回る。

 格闘の基本はとにかく相手に食らいつく事だ。
 リル、凄いな。ベルータスに捕まってなければ俺なんて足元にも及ばないだろう。

「妖不動の術」

 俺は空中でぴたりと動けなくなった。何だこれ? フェドラートさんの術か! 

 再度絡まった糸を外そうとしたが外れない!本気モードだとこんな縛る力か! 

 俺がジタバタしているのを見て、リルがフライトして見にくる。

「あーやっと動けなくなったね。えいっ」

 リルのパンチが溝落ちに入り、担がれてゆっくり降ろしてもらう。

「全く。フェルス皇国の上級妖魔二人をこんな驚かせるなんて。しかも君攻撃してきてないしね」
「本当です。あんなに強く不動の術を使用したのは久しぶりですよ」
「もう……ちょっと」

『駄目!』

 俺は二人に担がれて宿へと連行された。
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