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第二部 主と働く道 第一章 地上の妖魔

第百四十九話 見苦しい言い訳

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 俺達がカルト兄弟を縛り上げ、辺りを見回すと
どこからか隠れていた人々が出てくる。
 
 皆どこかすごい不安そうにしている上、瘦せこけて目も当てられない。
 ずっと怯えながら隠れながら生活していたのかもしれない。

「あのー、俺達こいつらの仲間じゃなければ危害を加える輩じゃないので、安心してください」
「ほ、本当か? 確かにあっちにいるのはシュウさんだ。あんたら
シュウさんの仲間か?」
「ええ。この町の現状を聞いて道すがら落ち着いて休めないから
ちょっと血祭……じゃなかった懲らしめてやろうかと」

 危うくブラッディカーニバル宣言するところだった。反省。

「ここの町長がガルカに変わって以来ずっと虐げられて暮らしてきたんだ。シーファン老師がお元気だった頃が一番平和だったよ」
「こいつらの町長の所まで案内してもらいたいんだけど」
「ああ、こっちだ! これでやっと解放されるんだな、俺達」
「どうでしょうね。結局の所安心して暮らすためには
自分たちで工夫して、悪漢を追い払うしかないですよ」
「……あんたの言う通りだ。俺たちは他人を頼りすぎてこうなった。
シーファン老師がいるから安心だと。
これからは皆で訓練して強い町を作ろうと思う」
「それがいいでしょう。折角武術の達人がいるんです。
一人一人が町を守る気持ちで特訓するといいんじゃないでしょうか」

 そう話しながら一軒の豪邸の前に出る。この町に似つかわしくない。
 ここからはセオリー通りに行くか。

 俺はドアをけ破って中に剣を構えながら押し入る。

「な、なんだ貴様は! 扉を蹴り飛ばして入ってくるとは無礼な!」

 俺はミドーに合図を送り、入口付近に来させる。

「息子達! なんてことだ。バーバリアンのジョブカードを手に入れるのに幾らかかったと思っている!? まだまだ足りんというのに!」
「あー、下種か。ちょうどサラも来たし頼む」
「はーい、邪術釣り糸!」
「なんだ、身体が自由に動かん! 放せ! わしは町長だぞ!」
「町長ってのはどうやったら決まるんだい?」
「国の議会に派遣されたんだ! 貴様らただじゃおかんぞ!」
「じゃあライデンさんに伝えればいいか」
「なんだと? 貴様英雄ライデンの知り合いだとでもいうのか?」
「俺たちは傭兵ガーランドの一団な者でね。
別にここには傭兵として来たわけじゃなかったが、ちょうどいいか」
「ぐっ……その。金を払う。だから見逃してくれ!」

 おいおい、お約束過ぎるだろ。金?
 
 そんなもので主や仲間を散々舐めまわすような目で見られたり
 値踏みされたりしたのが許せると本気で思ってるのか? ばかばかしい。前世では金が
全てみたいな世界だが、それでも
許されない仕打ちだね。
吐き気がする。

「ふざけるなよ。お前らは金で命乞いした人達を平気で
なぶり殺しにしたり酷い仕打ちをしただろうが」
「それは額が足りないからだ! きちんとした金を用意すればちゃんと助けた! お前らにもきちんとした額を用意する! だから、な?」
「いい加減にしろ。それ以上喋れば殺す」
「ひっ……」

 俺は怒りに震えた。こんなクズ、生かしておけば災いになるだろう。
 だがここでこいつを殺すのは俺の役目じゃない。
 散々苦しめられた住人にこいつの所業を決めてもらおう。

「サラ、ありがとう。ミドーはこいつも一緒に縛ってくれるか。
死なない程度にきつめでいい」
「シュルー」

 外に出ると全員戻って来ていたようだ。隠れていた住人も沢山いる。

「こいつらの仲間は他には?」
「とりあえず町から出て行ったみたいよ。
隠れてて元気な動ける奴に、ベッツェンのライデンへ連絡するように伝えておいたわ」
「そうか、助かるよライラロさん。だいぶイラつかされたから
少しスッキリした」
「そこの屋敷を見る限り、居たのはクズでしょ、どうせ。
どこにでもいるものね。そういう奴」
「ああ。俺も以前嫌と言う程見たから。
カッツェルの皆さん。こいつらの処遇はお任せします。
どうしますか?」
「どうするって……二度とこの町に来れないように出来ませんか?」
「そうね。殺せばもう来ないわよ」
「殺す……それはちょっと」
「あら、じゃあどうしたいのかしら? 生きてればまたここに
来るかもしれないわよ」
「だ、だったら俺たちが強くなるまで来れないようにしてほしい! もう二度とあんな状態にならないよう
強くなるんだ! 町を皆で守ろう!」
「そうだな! 皆でこの町を守るんだ!」

 この町は元々活気があったんだろうな。
 きっと立ち直れるだろう。彼らなら大丈夫だ。

「なら私の時間凍結の空間に放り込んで、港町に着いたら
島流しなり突き出すなりすればよかろう。どうせ峠なら
その蛇は出せまい」
「それいい考えですね。そうしましょう」

 一旦引き返さなければいけないのかと考えていたが
それならばこいつらをロッドの港町まで連れていけるな。

 しばらくしてシーファン老師がやってくる。

「有難うベルディスの弟子よ。これでこの町は救われた。
わしも余生をここで過ごし、今一度町人を鍛えようと思う」
「そうですね。兵士を集い見回りなんかもするといいと思います。
 
 皆でお金を出し合い、役割を決めて頑張ってください」

「シュウさん。俺達を鍛えてくれませんか!」

 一人の青年が声をかけると多くの人がシュウさんに集まってくる。

「だが俺は……ルインさんに恩返しをしたいんだ」
「それならシュウさん。俺達が旅から戻ったら合流しましょう。
それまではここで町人を鍛えてやってほしい」
「しかし……いやわかりました。そうしてみましょう。
場所はこの前教わった、ジャンカの森の最も東の泉ですね。
そこへ二人の領域へ行きたいと願いながら飛び込め……ですか。
不思議な話だ」
「ええ、いつでも大歓迎です。それじゃ町の解放を祝してパーッとやりますか」
『おー--!』
 全員が一斉に声を挙げ、皆大いに騒ぎ夜を明かした。
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