上 下
166 / 1,085
第二部 主と働く道 第一章 地上の妖魔

第百四十三話 メルザのお買い物と衣替え

しおりを挟む
 メルザが俺の前に来る。どうしたんだろう? フェルドナージュ様は帰ったのか? 

「ルイン、ここにいたのか。ちょっと俺様に……その付き合ってもらいてぇ場所があるんだ」
「構わないが、フェルドナージュ様はいいのか?」
「もう帰ったぞ。それでその……フェル様に町のいい店の話を聞いてよ。行ってみたくて」
「あのフェルドナージュ様がお店を? それは気になるな」

 それを聞いたファナとサラが反応する。

「私も行くわ。女子の直感がびびっときたわね」
「なら私も。抜け駆けは許さないわよ」
「え? え? その、ルインと……」
『さぁ行きましょう!』

 そう話をしているとミリルがやってきた。

「あら、皆さんこちらでしたのね。お久しぶりですわ」
「ミリルじゃないか。お父さんの説得は済んだのかい?」
「ええ、本日よりわたくしも、幻妖団メルの一員ですわ! 皆さん
よろしくお願いしますね」
「おお! ミリルの部屋も用意しないとな! けどこれから買い物に行くんだ。ミリルも行くか?」
「いえ、私は荷物を置きに行って参ります。長旅で疲れたので
温泉をお借りしても?」
「ああ、いつでも入ってくれて構わないよ。
そういえばリルとレウスさんが見当たらないけど
どこにいるんだ?」
「畑でカカシと喋りながら農業してたぞ。
すごく楽しそうにしてたな」

 おしゃべり好きの妖魔と骨とカカシが農作業か……完全に畑で
ハロウィンパーリーじゃないか。

「じゃあメルザと俺とパモとファナとサラで行くか」

 俺たちは領域からフェルス皇国側へ出る。
 見慣れた妖兵エリアではなく、妖民エリアへと向かう。
 町の西側だがこっちに来るのは初めてだ。
 城には属さない民がいるエリア
 落ち着いている雰囲気だな。

「おお、黒星ベルローゼ様のお弟子さんだ!
なんという威風堂々した佇まいだ! ベルローゼ様の波動を感じる!」
「羨ましい。あのベルローゼ様に手ほどきをうけるなんて」

 まずい。ベルローゼさんの影響ですっかり有名だ……。

 俺はちょっとサラの後ろに隠れる。この中で一番背が高いのがサラだ。
 といっても俺より高くはないんだが。

「あら、街中でそんなにくっつきたかったのね」
「ちょっとルイン。何してるのかしら?」
「え? 何かしてるのか? 俺様も混ぜてくれよ!」
「隠れてるんだよ! 街中で目立たないように! 
ただでさえ美少女三人と可愛いマスコット連れてるんだから
目立つのに!」

 さっさと先を急ごう。俺は三人を押すようにして
前へ進んだ。
 パモは肩の上に乗せてある。

「おー、ここだ。ちゃんと着いた」
「ちゃんと着かない予定だったのね、メルザ……」
「あら、私のいきつけのお店じゃない。初めてルインに会った時も
新しい洋服買ったばかりだったのよね。懐かしいわ」

 そういえばあの人形の家で会った時そんな話をリルにしてたな。
 ムーラって呼ばれてた人形の家も懐かしい。
 
モラコ族のムーラさんと違ってだいぶ怖いスプラッターハウスだった
のを思い出し、身震いする。


 衣類装飾品の店サラリアか。結構大きい店だ。

 店内に入るとずらりと衣類が置いてある。
 仲には軽鎧や装飾品なども売られている。
 金属系の刺繡などが入った物も多く、質の高さが伺える。

 当然女性陣の目はキラキラしている。

 ふと俺の目に一着の胴着が目に留まった。

 これ、夢幻闘舞じゃない? 下の方に縫い合わせた後がある。
 確か俺の装備は売ったと聞いたけど、ここにだったのか。
 それに一度ぶった切られた装備など、呪いアイテムだろう……俺は装備を見て大きくため息をついた。

「なぁなぁ、ルイン。これ似合う……かな?」

 そういうとメルザは紅色の玉が無数にある白いワンピースを
着ていた。とっても愛らしくていい! 

「ああ、よく似合うと思うぞ。メルザの髪色にぴったりだ」
「そうか!? じゃあこれ買う!」
「俺が買ってやるから他の見てきなよ。メルザはあんまり物欲が
無いから、たまには買ってやらないとな」
「いいのか? 嬉しい! それじゃ装飾品見てくる!」

 「にはは」と笑いながらバタバタと違う所を見に行くメルザ。
 こういう所は本当に可愛い女の子なんだよな。

「あら、ルインが買ってくれるって本当?」
「やった! 初めての贈り物ね。いっぱい選びましょ!」
「え、あの、ちょっと……」

 俺が何か言う前にささっと選びに行くファナとサラ。
 懐は温かいがちょっと心配。男はこういう時こそ笑顔で
やり過ごす
べきと前世で習った。

 結局メルザは紅玉ワンピースと杖に装着するグリップのようなもの
と紅ラインの入った靴下。

 ファナは装飾の入った白色のブラウスと短いスカートとイヤリング。

 サラは背中側がだいぶ開いた黄緑色の服と短いスカートとネックレス。

 パモは水かけおりのネックレスがぼろぼろだったので
新しくパルーム族
のイラストがかかれたネックレスを買ってやる。


 それよりなんで皆さん丈がそんなに短いスカート類なんですか? 

「お会計金貨五十二枚です」

 高っ! とは言えないので払う。
 
 妖民エリアのものなのでアーティファクトではないが、どれも一級品なのだろう。

 全員満面の笑みでした。お金で買えない価値があるものを手に入れたぞ! 

 帰り道にこれはブドウでは!? と思われるスタッフィーと言う果物に出会う。
 食べてみると正にブドウのそれ。
 また料理の幅が広がると思い、パモに詰めれるだけ詰めて買って帰った。

「買い物、付き合ってくれてありがとな! おまけに買ってもらっちゃった。へへっ」
「だいぶ高かったけど、本当によかったの……? でもこれで
サービスできるかな」
「あら、あなたの足じゃサービスにはならないんじゃないの?」
「なんですって?」
「なによ!」
「ちょ、ここで言い争うなって。帰ってもまだまだやることあるし
メルザはフェドラートさんの講義があるんだろ?」
「そうだった! やべー、急いでかえらねーと!」

 バタバタと走るメルザを皆で追い、俺たちは帰路に着くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

【R18完結】愛された執事

石塚環
BL
伝統に縛られていた青年執事が、初めて愛され自分の道を歩き出す短編小説。 西川朔哉(にしかわさくや)は、執事の家に生まれた。西川家には、当主に抱かれるという伝統があった。しかし儀式当日に、朔哉は当主の緒方暁宏(おがたあきひろ)に拒まれる。 この館で、普通の執事として一生を過ごす。 そう思っていたある日。館に暁宏の友人である佐伯秀一郎(さえきしゅういちろう)が訪れた。秀一郎は朔哉に、夜中に部屋に来るよう伝える。 秀一郎は知っていた。 西川家のもうひとつの仕事……夜、館に宿泊する男たちに躯でもてなしていることを。朔哉は亡き父、雪弥の言葉を守り、秀一郎に抱かれることを決意する。 「わたくしの躯には、主の癖が刻み込まれておりません。通じ合うことを教えるように抱いても、ひと夜の相手だと乱暴に抱いても、どちらでも良いのです。わたくしは、男がどれだけ優しいかも荒々しいかも知りません。思うままに、わたくしの躯を扱いください」 『愛されることを恐れないで』がテーマの小説です。 ※作品説明のセリフは、掲載のセリフを省略、若干変更しています。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

邪悪な魔術師の成れの果て

きりか
BL
邪悪な魔術師を倒し、歓喜に打ち震える人々のなか、サシャの足元には戦地に似つかわしくない赤子が…。その赤子は、倒したハズの魔術師と同じ瞳。邪悪な魔術師(攻)と、育ての親となったサシャ(受)のお話。 すみません!エチシーンが苦手で逃げてしまいました。 それでもよかったら、お暇つぶしに読んでくださいませ。

【R18】超女尊男卑社会〜性欲逆転した未来で俺だけ前世の記憶を取り戻す〜

広東封建
ファンタジー
男子高校生の比留川 游助(ひるかわ ゆうすけ)は、ある日の学校帰りに交通事故に遭って童貞のまま死亡してしまう。 そして21XX年、游助は再び人間として生まれ変わるが、未来の男達は数が極端に減り性欲も失っていた。対する女達は性欲が異常に高まり、女達が支配する超・女尊男卑社会となっていた。 性欲の減退した男達はもれなく女の性奴隷として扱われ、幼い頃から性の調教を受けさせられる。 そんな社会に生まれ落ちた游助は、精通の日を境に前世の記憶を取り戻す。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます!

遥 かずら
ファンタジー
 ガチャスキルを持つアック・イスティは、倉庫番として生活をしていた。  しかし突如クビにされたうえ、町に訪れていたSランクパーティーたちによって、無理やり荷物持ちにされダンジョンへと連れて行かれてしまう。  勇者たちはガチャに必要な魔石を手に入れるため、ダンジョン最奥のワイバーンを倒し、ドロップした魔石でアックにガチャを引かせる。  しかしゴミアイテムばかりを出してしまったアックは、役立たずと罵倒され、勇者たちによって状態異常魔法をかけられた。  さらにはワイバーンを蘇生させ、アックを置き去りにしてしまう。  窮地に追い込まれたアックだったが、覚醒し、新たなガチャスキル【レア確定】を手に入れる。  ガチャで約束されたレアアイテム、武器、仲間を手に入れ、アックは富と力を得たことで好き勝手に生きて行くのだった。 【本編完結】【後日譚公開中】 ※ドリコムメディア大賞中間通過作品※

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

処理中です...