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第六章 強くなる

第百三十一話 移動要塞【絶空】

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 どのくらい気を失っていただろうか。
 
 俺は意識を戻すとまだ黒い影の中だった。

「ベルローゼさん。ここからでも聞こえますか?」
「……なんだ。起きたか」
「すみません。気を失っていたようです」
「少しそこで休むか」

 どうやらあまり時間は経過していないようだった。
 
 休むといった場所は俺が行きで見つけた穴だ。
 
 リルとサラの容態も確認しないと。

 穴に入り辺りを見回す……と、ベルローゼさんはひどい怪我をしていた! 

「ベルローゼさん! ひどい怪我じゃないですか!」
「取り急ぎ向かった。物資の届状況だけ確認して
誰にも会わず向かった。治療の暇などない」

 俺は急いで幻薬を使う。無茶しすぎだ。

「ベルローゼさんはなぜこちらに?」
「おまえを守れとフェルドナージュ様から仰せつかっていたからに
決まっている」
「無茶な……その傷でベルローゼさんが死んじゃったらどうするんですか」
「貴様も十分無茶をしていると思うが?」
「あー……はい、そうですね。言えた義理じゃありませんでした」

 そう言うとベルローゼさんの表情が少し柔らかくなった気がした。
ツンデレ! 

「そういえば貴様、あの城塞の中に入りよく無事だったな」
「残虐のベルータスが出陣したとのことで、中に残ってたのはえーと何だっけ? 
無駄骨? 無駄遣い? のなんちゃらっていう」
「無駄三昧のビノータスか。あの程度の小物しかいなかったのは幸いしたな。
しかしまずい。フェルドナージュ様が敗れるなどありえないが、人質がいる
と思われていると実にまずい状況だ」
「ええ。ベルータスは戦争をしかけるつもりですから急いで知らせないと。
リルとサラを外に出したいところですが、もう少し安全なところがいいですよね」
「ああ。今はやめておけ。それと先ほどの薬をもう一つ貰えるか。
急いで戻るのにもう少し回復したい」

 俺は幻薬をベルローゼさんに使用した。

 本調子ではなさそうだが、大分回復できたようだ。

 ベルローゼさんの星黒影の流れ星というチート技で
再び移動する。

 マッハ族並みの速さで移動する上、影での移動は反則すぎる。だが相当に消耗するようだ。



 しばらく進んだ時だった。

「追手だ。このままマッハ村に到着するわけにはいかん。一旦出るぞ」
「え? この速さで追手?」
「移動要塞、絶空だ。上を見ろ」

 俺が上空を見ると、バカでかい奇妙な物体が低空でこちらへ向かってきている。
 あんなのありかよ。

「戦うしかないか。貴様は運がないな」
「運の無さなら折り紙付きですよ。呪われてるくらいにはね!」

 そう言うと俺たちは赤土のエリアに展開する。

「俺が絶空を落とす。貴様は出てくる雑魚共を狩れ」
「簡単に言ってくれますね。しかもあれを単騎で落とせるものなんですか」
「黒星の双鎌」

 そう言うとベルローゼさんはアルキオレイブン戦で見せた鎌状の
ソレを二枚放出した。
 おいおい、それはいくらなんでも……と、かっこいい技に見とれてる
場合じゃなかった。

「ファナ、レウスさん。緊急事態だ。助けてくれ!」
「やっと出番ね。もっと早く頼ってよね」
「友達が沢山いそうだ。いやーあいつら久しぶりだな!」
「ああこれから一杯出てくるよ! なにせ無駄印のビター味とかいう奴もいるはずだ」
「……無駄三昧のビノータスだ。小物だが、今の貴様には少々持て余すかもしれん。気を付けろ」

 技を放ちながら突っ込みがくる。クールイケメンのつっこみ。ご馳走様でした! 

「ええ、一度戦いましたからね。あの矢は厄介です」
「そいつの相手、私にさせてみてくれない?」

 そう言うとファナは自分の胸を指す。大きいですよね。
すみません違いました。

 そうか、避来矢軽装胴! 矢が当たらないというレジェンダリー
ならではの反則防具か! 

「わかった。だがもし矢を受けるようならすぐ封印に一度戻すぞ」
「ええ、平気よ。アルノーで行くわ」

 そう言うとファナはアルノーに変身する。

「レウスさんは死神の使いを出しておいてください。
あいつらは囮になる」
「任せろ! 俺も囮になるか? それとも焼いてやろうか?」
「……焼くほうで援護をお願いします。数を減らすので」

 俺はカットラスを引き抜き絶空と向き合う。

 絶空がベルローゼさんの攻撃で動きを止め、煙を上げ始めた。
 とんでもないな、ベルローゼさんが味方でよかった。

 そろそろ敵さんのお出ましだな。一体何匹出てくるか。

 ほどなくして絶空から大量……三百はいるだろう大量の兵士が出てくる。

 本当無駄遣いが過ぎるな。追ってたの俺とベルローゼさんだけだろうに。

 それじゃ先制の挨拶と行きますかね。
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