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第六章 強くなる

第百二十八話 ベレッタ潜入

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「成程、これは確かに危険な場所だな」

 俺はベレッタ付近に着いた。高さ八メートル程の城塞。
 中は一切見えない。しかも城門らしい城門も見当たらない。

 特徴としてはその城壁の色だろう。
 
 赤い。残虐のベルータスの趣味だろうな。

 さてここから侵入するために、アイドスキュエネイの効果により
俺の姿は一時的に消える。

「バネジャンプ」

 蛇佩楯の跳躍とバネジャンプの併合により、とんでもない高さまで飛ぶ。
 
 落ちれば足の骨はただでは済まないが、城壁の上に無事乗ることができた。

 消える効果の時間は短い。俺は城壁から急ぎ辺りを見回して、隠れる場所を探す。

 すぐさま移動して、隠れられる隙間に入った。ここまでは順当。
 しかし見渡す限りあまり兵士らしき妖魔も見当たらないな。
 兵士たちがいそうな場所を抜ければベレッタの者として紛れる
事ができるような恰好をフェドラートさんに手配してもらってある。

 再度消える効果を使用出来るようになり、城塞の中に踏み入った。

 運よく樽などが散乱しているところに出る。
 
 そこで再度身を潜めた。しばらくして兵士らしきやつらがやってくる。
 少し情報収集できるか。
「耳を澄ます」
 
 俺は妖魔ラビットの技を使用した。周囲の音が良く聞こえる便利な技だ。

「おい、そっちの見張りはいい。ビノータス様がもっと拷問部屋の
監視を増やせと言っている。お前はあっちへまわれ」
「へい、わかりやした。しかし拷問部屋なんて到底出れない場所でやしょう?」
「あそこに放り込んだ妖魔は強力だ。ビノータス様は臆病だからな。
ベルータス様もなぜあんな臆病者に任せてるんだか」
「ちげぇねぇ。がっはっは」
「おい、笑ってないでさっさと行けよ。俺はやっと非番なんだ。
一杯飲みに行ってくる。お前はしっかり働けよ」
「ずるいぜ。俺も伴食亭に行きてぇです」
「適当に仕事終わらせて後で来い。じゃあな」

 そう言うと二人とも別々に移動し始めた。

 俺はゆっくり樽のまま移動して、伴食亭とやらに行く奴の後をつけた。

 ようやく妖魔が往来するエリアに来たので、物陰で樽を打ち捨てて
奴のあとをゆっくり追う。

 伴食亭とやらについた。ここは酒飲み場だな。

「マスター、ミルク」
「なんだい、そのミルクってのは」

 俺は定番のネタをかましてマスターとコミュニケーションを図る。通じないか。

「すまない冗談だ。弱めの酒をこいつで頼む」

 俺は金貨一枚を出してマスターに渡すと、マスターに上客と
思われたのか、機嫌よく酒をだされた。

「アポールノーシュだ。程よい甘味のある酒だ。あんた
あまり見ない顔だが、商人か何かか?」
「ああ、そうだ。しがない商人をしている。ちょっときな臭い話を
聞いたもんでな」
「そうよ、もう戦争が始まる。ベルータス様も出陣されたそうだ。
よりによってあのビノータス様が守ってるんだぜ。
今ここを攻められたら終わるだろうよ。全く」
「そうなのか。それは知らなかったな。ビノータス様って
どんな感じだったか忘れたんだが」
「何言ってる。ビノータス様はこの国でも最高の無能と知られる
あの無駄三昧のビノータスだ。今も捕えてるフェルス皇国の奴に
無駄に増兵させてるっていうしな。怖がりなんだよ。
ベルータス様も親族だからってあんなのに任せなくてもな」
「ああ、全くだな。その捕えられてるまぬけな奴って何て言ったっけ」
「リルカーンとサラカーンとか言う奴らだな。
フェルス皇国の使者としてきてたがへまをしたんだろう。
工作しようとしていた所を捕えられた。
おかげで人質ありきでフェルス皇国のやつらも迂闊には手がだせんだろう。
この戦争は勝ち戦になりそうだ」
「……そうか。ふう、うまいな。もう一杯同じのを。マスターとの話は楽しくてついつい酒が進むぜ」
「おう、毎度。いやー俺も気前のいい旦那が来てくれて嬉しいぜ。
最近はしみったれた奴が多くてな」

マスターは景気よく二杯分出してくれた。

「一杯サービスだ。飲んでってくれ」
「ああ、ありがとよマスター。ところで一杯引っかけたら
そのまぬけなフェルス皇国の奴らの顔でも見に行ってみたいんだが
どこだかわかるか?」
「旦那、あそこに行くのかい? 酔狂だな。だから酒飲んでるのか。
アゾット拷問部屋だったはずだ。場所はほれ、この店を出て
北に行くと見える処刑台が目印だ。そこの左隣だな」
「ただ見に行くだけだ。俺もビノータス様に無駄を押し付けられたくはないからな」
「ちげぇねぇ。はっはっは!」

 俺とマスターは笑いあうと、酒を飲み干し礼を言って出て行った。

 酒場のマスターとは仲良くなれ。これは現世でも鉄板だ。
 いい情報がたっぷり聞けた。そして俺の背中は汗でびっしょりだ。

 リルとサラがいるのは拷問部屋だ。覚悟していかないと。
 
幻薬はそれなりにある。
 待っていろ二人とも。必ず助ける! 
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