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第六章 強くなる

第百十七話 モラコ族と歓談

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 俺たちは穴の奥に案内された。
 そこには大勢のモラコ族がいた。
 二十はいるだろうか。

 中でも子モラコは非常に愛嬌のある顔つきだ。
 ファナがきらきらした目で見ている。
 
 メルザは余程お腹が空いているのか、子供たちの持っている食べ物を羨ましそうに見ていた。

 ちゃんと食事にするからちょっと待ちなさい。

「こちらの方々は上から来た者たちだそうだ。
ピーグシャークを退治するのを手伝ってくれる。食事を分けてやりたい」
「本当か? 食事だけとったら逃げるんじゃないだろうな」

 厳しい眼差しでモラコ族の青年? がこちらを見ている。

 まぁ突然きたら疑われても仕方がない。けど食事ならこちらにもちゃんとある。

「いや、食事もこちらで持っている分はあるから。安全に休める場所が欲しいってのはあるけど」
「上の食べ物? 美味しい物なのー?」
「美味しいー?」
「おいし……?」
「ああ、きっと美味しいと思うぞ。パモ、この子らにアップルとスッパムを出してやってくれ」
「ぱみゅ!」

 パモは子供たちに次々と果物を出す。見たことがない果物に子供たちは
不思議そうにそれらを眺める。

「こうやって食べるのよ。見ててね!」

 そう言うとファナは子供たちに食べ方を教える。

 よっぽど気にいったんだな。とても愛らしい種族に思える。
 果物も大好評のようだ。

「ムーラさん。この場所には昔から住んでるんですか?」

 俺は警戒を解いてもらうためにも、丁寧な言葉遣いで聞く。

「いや、以前はベレッタに住んでいた。わしらは追い出されたんだ。
戦の邪魔だと言われてな。
我々の種族は元々土や泉が好きでな。ここでは食料を取るにも
苦労している。条件を出したのも食料事情があるからだ。
根本的な解決には
ならんが、だいぶ持ちこたえられる」
「そんなら俺様達の子分になって、領域にくればいいんじゃねーか?」と、突然メルザがスッパムをかじりながら言った。

 ほっぺにスッパムの皮がついてる。
 俺はメルザにすっと手をだしとってやる。ちょっとは気にしなさい! 

「領域とは、どこか安全に住める場所を知っているのか?」
「ああ、俺様とルインの領域だ。ルーンの領域ってんだ」
「だがメルザ。ここからだと一旦ファルス皇国まで行かないと
領域には入れないだろう?」
「あー、そうか。ここからそんなとこまではいけねーか」

 そこまで考えてなかったのか。まぁ迎え入れたいって気持ちは
メルザらしいが。

「この場所はフェルス皇国まで伸びる永遠の砂牢という場所だ。
わしらは土や砂を掘り進み、水の中をスイスイ泳ぐこともできる。
フェルスス皇国の湖へとつながる道があるが、その領域とやらに本当に行っていいのかね?」
「構わないぞ。な、ルイン!」
「ああ、我が主がそう言うなら、歓迎する。だが先ほども伝えたが
これからマッハの町に物資を届けるのと、ベレッタで仲間の情報を
集めたいんだ」
「ではそれを我々が助けるとしよう。ベレッタには詳しい。
わし以外の者はモータに任せてフェルス皇国付近まで
移動させよう。その前にピーグシャークを退治してもらう
必要はあるがな」

 モータというのは先ほど疑った青年のようだ。
 ちょっと反省した表情になっている。

「フェルス皇国妖兵エリア東南端に泉がある。もしそこに行けるなら、その泉に潜り
ルーンの領域へ行きたいと願えば俺達の領域に辿り着けるはずだ。
俺とメルザが認めさえすれば誰でもな。
もし着いたらニーメという男の子に事情を説明してくれ」
「俺様の方の領域の穴はもう使ってないから、そこは自由に使っていいぞ!」

 そう言うとモラコ族達は多いに喜んだ。

比較的狭い穴が好みのようだ。あそこなら泉と畑もあるし
いい環境だろう。
 
 作物作りを手伝ってもらって魚なんかも取ってもらえるか? 

「何から何まで有難い。無事ことがうまくいったら、ぬしらを主として認めよう」
「ああ、まずはピーグシャークとやらを倒すんだったな。
そいつはどこにいるんだ?」
「この穴から出て北にしばらくいくと、飲み水にしている水場がある。その一帯に生息する恐ろしい奴じゃ」」
「十分休憩もさせてもらったし、そろそろ行くか」
「ムグムグ、おう!」

 俺はにこっと微笑みながらフェルドナージュ様の真似をしてメルザお戒めた。食べ終わってから話なさい! 
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