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第四章 諦めない者たち 妖魔の国編

第七十九話 フェルス高地での特訓・装備封印編

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「ここが狩場だよ」
「久しぶりにきたー!」
「……まさにファンタジーだな」

 俺たちはファルス皇国の妖兵エリアから出てすぐの高地へと着いた。



 ゴブリンやオーク、スライムや凶悪そうな鳥など不思議な生物が遠目に見るとわんさかいる。

「まずはそこのスライム封印してみなよ。
といっても攻撃しないと封印できないけど。
ダメージ与与えて封印値を高めて。
封印値はその穴を見てごらん。数値があるでしょ。
複数穴に空きがあるから、戦闘に入る前にどこに入れるかを決めておいてね」

 俺は頷くと、所持している剣の穴の部分を押して封印場所を指定する。
 
 そのうえでスライムと対峙した。
 スライムは俺が読んでいた小説などで様々な形で書いてあった。
 
 だがここは妖魔の世界。
 どんな妖術を使ってくるのか。
 スライムは弱いというが、警戒しなければ。

 またすぐ死にかけたらメルザに再開するどころではない。

 こいつ、まさかスライムの魔王種か!?
 奴はどう動くんだ。ずっとプルプルしているだけだ。
 まさかすでに攻撃を仕掛けてきたのか!? 
 
 身体が思うように動かない。
 あのプルプルしている動きはなんなんだ。妖術発動中か!? 

 そもそもが慎重な俺は、アナライズも使えないので少し後ずさりした。決してビビっているわけではない。慎重なだけだ。

「……何してるのさ。スライムに敵として認識すらされてないよ」
「スライム相手に警戒しすぎ!」
「……あのー、なんか以前よりうまく身体が動かないんだけど」
「そりゃそうだよ。君は胴体を真っ二つにされた時に、殆どの身体能力を一度失ったんだから。
そうじゃなければもっと強い相手でいいんだけどね」

 そういう大事な事は早く伝えてほしいな……と言っても助けてもらって言えたぎりじゃないか。

 俺は再度剣を構えて勢いよく……勢いがでていないが奴に切りかかる。
 スライムはぽよんとなっているだけ。
 あれ? やっぱ弱いな俺……師匠との厳しい特訓を考えると悲しくなったが、悲しんでいる場合じゃない。

 今まで装備に頼っていた部分もある。
 
 一から鍛え直す気概でいこう。

 といってもスライムには攻撃があたる。どうにか百になった。

「はい、目を閉じて穴にスライムを吸い込むイメージを持ってみて」

 言われた通り掃除機のようなイメージでスライムを剣の穴に吸い込んで見る。吸引! 

「えっ、なんでそんな吸い込み方になるの?」

 リルからすると正しくはない吸い込み方のようだ。

 目をあけるとスライムがいない。
 俺の剣の穴の部分を見ると、穴に透明な膜ができており
そこに先ほどのスライムがプルプルしている。

 成功はしたようだ。これが妖魔封印……幻魔術とは全く違うな。

「吸い込み方は変だけどまぁいいや。その剣で妖術操作を。パーツ事にイメージが
違うしその封印した奴をイメージしないと何も起こらないよ。剣なら剣、腰なら
腰みたいにイメージしないと使えないよ」

 俺は剣の封印されてるスライムを今一度見て、イメージしてみる。

 あれ/? 消化液……ばしゃっと目の前に何かでる。
「ほら、できた。スライムの技。消化液」
「……えっち」

 目の前のサラの服が少し溶けてしまった。悪気は、悪気はないんだ! 

「そんな風に各獲物の特徴を技として具現化できる。
それに例えばオークなら力が、マージなら知識が
デビルホースとかなら素早さがあがったりする。下がる場合もあるけど」

 つまりそれぞれの持ち味で上限するのか。イメージしやすい。

「今の君はまだまだ妖魔として未熟で弱いけど」
「はっきり言うよな、リルは……実際そうなんだが」
「自分を受け入れることは大事だよ。受け入れた上で、ここであと二匹自分の力でスライム以外を捕まえてみてね。
僕はサラと上妖の一向けを封印しにいってくるから。
戻ったら妖術の練習に移るよ」
「なぁ……いや後でいいか。わかった。やってみよう」

 俺は聞こうとしたことをやめた。
 今はこの力のことに集中しよう。
 リルとサラは「またあとで」と手を振って去っていく。

 俺は今一度封印されたスライムを見てみる。これって中で生きてたりするのか? 

 この上に別のモンスターを封印すると上書きされるっていってたけど。
 そういえばこれ、なんかアクリル板みたいだな。
ぽろっととれたりして。

 コロン。

 あれ、取れましたよ? 取り外し可能なのか? でも上書きがどうのっていってたよな。

 スライムはアクリル板状の中でプルプルしている。触り心地もアクリル板だ。

 アクリル板でいいだろこれ。

 もう一度剣にはめてみよう。思い切り剣を振っても下にはおちない。

 投げつけても何してもとれないな。
 だけど手で押すととれる……なんなんだ。

 スライムアクリル板を再び付けて消化液をだしてみたがやっぱり出る。
 取り外し可能なモンスターメダルみたいなものか。

 案外コレクションしたら面白いかもな。
 メルザやファナが喜びそうだ……ああ、考えないようにしていたのに。

 どうしてもメルザの笑顔が脳裏に浮かぶ。

 俺はぶんぶんと頭を振る。

 アクリル板を剣から取り外してプルプルしているスライムを触ると少し喜んでいる感じがする。

 あれ、なんかアクリル板から出てきたんだけど……スライムさん。

 取り出しも可能なのか。もしかしてこいつ、一緒に戦ってくれたりもするのか? 

 近くに獲物がいないか探してみよう。

 しばらくモンスターを探していると、大きいリスのような奴がいた。

 少しすばしっこそうだしちょうどいい。
 
 敏捷性……つまり素早さを確保しないと相手の攻撃を避けるのも
あてるのも難しい。

 ターン性の戦闘とか、どれほど楽なことか……相手が攻撃を避けるというより、攻撃をヒット
させる方が大変だ。

「よし、一緒に戦ってくれスライム。消化液だ!」

 俺は命令するノリで指を指してやってみたがスライムの行動はプルプルしている。だった。

 ひゅーんと冷たい風が俺を横切る。

 スライムはプルプルがとどまるところを知らないほどプルプルしている。

「……」

 そうこうしていると、でかいリスが襲ってきたので、とりあえず横薙ぎに攻撃する。

 俺の横薙ぎモーションが脳内より遅い! 

 するとスライムがやっと消化液を出してくれた。

 俺が攻撃した相手だけ攻撃してくれるようだ。しかもスライムで攻撃をヒットさせたら
ちゃんと腰に指定した穴の数値が五十七まで上がっている。

 俺はそのまま剣を振るい攻撃するが、横薙ぎが遅くて当たらない。

 あ、スライムがめちゃくちゃ狙われて攻撃されて消えた……しかもさっきの封印値五十七が二十五まで下がってる。



 おまえの仇は必ず俺がとる! 
 俺はブロードソードを構えてでかいリスに何度も切りつけた。
 でかいリスも種を飛ばしてきたり前歯で嚙みついてきたりする。
 俺もカウンターのタイミングで合わせたりするが
リス一匹で息があがる……やっと封印値百になり封印出来た。

 やはり腰にできたでかいリスは動いている。
そして取り外しが可能。

 俺はその場に座り込み、リルの言っていた内容との食い違いを整理することにした。

 封印値を百にすると指定した穴に封印できる。
 
 封印したモンスターの技をそのモンスターをイメージして使える。
 封印したモンスターを付け替え可能。

 取り外したアクリル板モンスターをその場に再出現可能。

 モンスターが与えたダメージでも封印値があがる。

 モンスターが倒されると稼いだ封印値がなくなりモンスターも消滅する。


 ここまでは理化した。
 
 しかしこれはリルとの認識違いが多すぎて確認しないといけないな。

 そう考えていると、近くに再びスライムがいたので倒して剣に封印した。

 取り外しが可能なら、いいお土産になる。
出来る限り集めてみよう。

 そう考えて俺はモンスターを次々にアクリル板にしていった。
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